2014_07
12
(Sat)22:24

祝辞

こんばんは。
あさ、です。

さて。
珍しく青慎目線でバイト終了後の二人を書いてみました。

皆様。
コメントや拍手、ありがとうございます。
本当にうれしく拝見しております。
感謝申し上げます。








《祝辞》



「・・・姉さん。」

まだ灯りの消えない、姉の寝室。
少し灯火を落として寝るのが常だった姉は。
王宮から帰ってこの方、ずっと。

泣いている。






「・・・姉さん。」

遠慮がちに部屋の扉を押す。
難なく開く不用心なところは以前と変わらない。

「・・・」

昼間とは違う、小さな背中。
くったりと寝入ったその身体は、もう僕よりも細い。
灯心を絞る前に、姉の顔を覗き込むと。

赤い目尻と、濡れた枕。

「_____。」

言い知れぬ怒りが湧く。




『青慎。』

姉はいつも、優しく強く。
僕を守り導いてくれた。

『違うから、この人はただの職場の上司!』

そんなはずないってことくらい、僕にも分かってた。
でも。
あの人・・・李翔さんは。
本当に姉さんを大事にしているように見えたから。
たとえどんな形に収まったとしても、姉さんが泣くことはないって思っていた。

なのに。

姉さんは今、泣いてる。
毎晩毎晩。
僕や父さんに悟られぬよう、ひっそりと。
あの人を想って、泣いてるんだ。

許せない。

胸が焼かれるような怒りが握らせた拳を。
ガンッと、塀に打ち付ける。

鍛錬なんてしたことのない、文官志望の軟弱な拳は。
あっという間に血塗れになる。
でも、構わない。

「くそっ・・・・くそっ!!」

がつん、がつん。

どうにもならない怒りを、拳に込めて。

「姉さんを・・・・泣かせるな・・・・っ!」

身体ごと壁に向かった僕を。

「_____ごめんね。」

聞いたことのある声が止めた。




「り、」
「ごめんね。青慎くん。」

月夜に映える、紅い瞳が僕を見下ろす。
自分勝手なこの人は、今更何をしに来たのだろう。

「・・・帰って下さい。これ以上姉を苦しめないで下さい。」

僕は精一杯の力を込めて、『李翔さん』を睨み付けて。

「姉は王宮とは何の関わりもありません。」

歯向かった。
脆弱な牙で。

しんと静まった庭先の夜気は、痛いほどだったけど。
姉さんが味わっている苦しみよりは随分と楽なはずだ。

「帰って下さい。」

狼陛下。

なんの力もない僕ができることは。
今、この人から姉を守ること。

今ここで、この人が姉を連れ去ったら。
姉は一生、泣いて暮らすことになる。

________後宮で。


「姉は、王宮とは関わりありません。」

再度立ち向かう、僕に。

「・・・・すまない。」

黒髪の狼が、膝をついたのと。

「______陛下っ!!」

姉が飛び出してきたのは、同時で。

「陛下、へいか・・・っ!!」

姉が流す涙が、先ほどまでのものとは違うことに気づいてしまった、僕には。
もう止める術などなかったんだ。


________ねえ、母さん。

母さんは、幸せだったんだよね。
命と引き換えに僕を産んで、幸せだったんだよね。

なら、きっと。

姉さんも。
自分で選んだ幸せに、後悔はしないだろうから。

僕は、送り出すしかないんだよね。

なんだか少し、悔しいけれど。



姉さん。

よかったね。

ほんとに、よかった。


______おめでとう。
心得   
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