2014_07
09
(Wed)11:26

瓦解2

こんにちは。
あさ、です。

今朝は早くからワールドカップ観戦に巻き込まれまして。
起こすな、だんなさん。
独りで観て?

さて。
どうなっちゃうのか私にもまだ見えないSS「瓦解」ですが。
少し続きを書きました。
短いですよ?
もし宜しければ。








《瓦解2》



_____へいか。

意識が眠りの底に囚われる時はいつも。

_____へいか、陛下。

あの懐かしい香りに手を伸ばす。


『夕鈴』

眠っている時だけは、私はあなたの妃。
目覚めたら、私の夫はあなたじゃない。

何処に逃げても追ってくる、黒い影は。
かつて後宮にいた唯一の妃を諦める気配はない。

何事にも何者にも執着を見せたことのない、冷酷非情の狼陛下が欲する、唯一。
この国の誰もが、それを手に入れたがる。

切り札として。


皆が探し求める『妃』は。
偽物、なのに。


もし私が本物だったら、例え偽りとはいえ、浩大と夫婦を演じることなどなかっただろう。

私は勝手に陛下の味方でいるだけ。

きっとこの状況すらも、陛下が敵を狩るための役に立っていると信じて。
日々を過ごす。

『臨時花嫁』にはもうなれないから。
『囮』として生きるしか、もう、ないから。



「・・・へい、か」

夢の中でだけは。
あなたに触れられる。

『夕鈴』

夢の中でだけは。
私はあなたの妃。









・・・来た。

吹きすさぶ風にも溶けることのない、濃い血の香りが届く。
待ち焦がれた、死を運ぶ匂い。

「やっと、来た。」

狼陛下が、俺を狩りに・・・いや。
お妃ちゃんを、迎えに来る。


夕暮れ前に届いた、李順さんからの手紙。
小さな紙片が告げたのは、陛下の正気が危うい事と。
俺の命が危ない事。

ありがとな、李順さん。
あんた、ケチで使いにくい奴だったけど。
こういう時は、ほんとに親切だ。

『覚悟』ってやつを。
俺にくれる。

まあ、もともと覚悟は出来てたんだけどな?


隠す気など毛頭なさそうな殺気を振りまいて、庭先で蹄の音が止まる。

・・・ああ、見える。

闇の中でも綺麗に光る、紅は。

血の色だ。


健やかな寝息を背後に聞いて。
俺はゆっくりと表に出た。


「――――。」

無言で跪き。
首を垂れる。

月もない闇夜に、狼の牙。

「良い覚悟だ。」

なんの感情も感じられない、陛下が心底怒った時にしか出さない、朗らかな声。

「っ!」

どんっ、と鈍い重みが来て。
冷たい土に、頬が着く。

「まずは、礼を言おうか。」

狼は、足下の隠密を静かに見下ろし、嗤って。

「_____『我が妃』を三年もの間守りくれ・・・ご苦労だった。」

「ぐっ!!」

研ぎ澄まされた刃が、浩大の脚を地面に縫い付けた。
«  HOME  »
  瓦解1

C.O.M.M.E.N.T

コメントの投稿

非公開コメント

トラックバック