2014_06
09
(Mon)11:30

道程2

こんにちは。
あさ、です。

李順さんを書くの、好きです。
趣味に走りまくってしまいました。
楽しい。




《道程2》


王宮を渡る風は、いつも不穏で。
ここにいることに慣れた自分を本来の姿に戻してくれるから、嫌いではない。

夕刻。
表向きの政務が落ち着き始める。
大臣共が下がり、残されるのは王と宿直の官吏や警備兵。
あとは女官程度になる。

これからが、私の時間。






「陛下。本日の政務はこれまでとなります。」

ざわり、と入り込んだ風が、少し痩せた黎翔の頬を嬲り。

「そうか。」

それを気にする風でもなく、王は静かに立ち上がった。

すらりとした立ち姿は、優雅と言えばそれまでだが。
狼陛下には、やや似つかわしくない。

「随分お痩せになりましたね。きちんと食事をなさって下さい。」
「私は子どもか?」

ふっ、と笑う黎翔に翳りはなく。
李順の眉間に皺が寄る。

「身体の不調は剣の腕にも影響いたします。血の巡りが悪くなり集中力を欠けば命を落とす・・・」
「・・・」
「王宮は・・・ここ、は。そういう場所でしょう?お忘れですか、陛下。」
「いいや。」
「でしたら、ご自分のお身体の事をもう少しお考え下さい。まだ倒れるわけにはいかないのですから。」
「・・・ああ、わかった。」

気に入りの兎を野に返してこの方、寝食を削り政務に没頭している黎翔。
その様は、李順からすれば半ば自棄気味に見え。
この辺りで立て直さねば、急坂を転がり落ちるように壊れてゆくのがみて取れた。
黎翔も、己の衰え具合を分かっているのだろう。
いつもならば「放っておけ」と一蹴する小言を素直に容れたのだから。



居室に戻る国王を見送ったのち、李順は執務室を整え始める。
いつも通りの手順で、無駄なく効率的に。
隅から隅までを手と目でなぞりながら、異変がないかを精査した。

「・・・この椅子。」

もはや其処に在って当然となっている、妃の椅子。
ここに彼女が座ることはもう無い。
彼女を解雇した翌日に処分しようとしたのを止めたのは、政務室の面々。

『この椅子があると、なぜか心が穏やかになるのです。』

この椅子に座っていらした方は。
狼陛下に怯える彼らの、心の拠り所だったのだろう。
『椅子を片付けないでくれ。』
そんなささやかな事で、政務が捗るなら。
特に片付ける必要などないのかもしれない。

そこに在るだけで、益を生むのなら。

そう。

片付ける必要など、ないのだ。



「・・・夕鈴殿。」

彼女を無事に実家に帰すつもりなど、端からなかった。
狼陛下の二面性を知られた時に、決めていた。

この娘は、返せない。

契約を終えれば、それ相応に始末を付けるつもりだったのに。
陛下は借金を理由に彼女を縛り付け。
彼女に心を縛られた。


あの夜。

「必ず無事に返せ。」

裏表なくそう命じられた陛下の意を汲み、護衛兼監視役の浩大を付けたのみで実家に帰した。

だが、バイト期間の長さゆえに彼女の存在は大きくなり過ぎていて。
氾は、妃を探し始め。
柳も、おそらく動いている。

突然消えた寵姫。
王都では冷酷非情の狼陛下が妃に飽きたのだと噂されているが。
王宮の闇は、そう容易く彼女を離しはしないだろう。

縁談除けの、臨時花嫁。
その本来の目的は・・・『囮』。

「夕鈴殿。」

何も知らずに雇われた彼女を。
ここまで引きずり込んだのは、自分なのかもしれない。

氾でも、柳でも。
彼らが妃を見つけ出し、どう扱うか。
出方を伺っている自分が酷く汚れているように感じ。

「申し訳ございませんが・・・・役に立って頂きます。」

薄暗く澱んだ心地よい風に自分が囚われてゆくのを。
李順は他人事のように見守った。
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C.O.M.M.E.N.T

格好いい(*゚Д゚艸)
かっこよくて床にゴロゴロしちゃう!
なんで李順さんて格好いいんだろう
ヽ(*´з`*)ノ
この道程2を暗記するまで読みます!
嗚呼、大好きだあ!

2014/06/09 (Mon) 12:10 | 羽梨 #- | URL | 編集 | 返信

Re

羽梨さまへ
床にゴロゴロ。
立てないんでしょう。足痛くて。
李順さんのターン。
だらだらと書けます。
楽しいのは私だけですが(笑)
書きながら、「考えすぎだよ!」と突っ込みます。
「そんなことはありません。貴女が脳天気なんです。」と叱られます。
なんでいつも叱られるんだろう。

2014/06/09 (Mon) 22:08 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

李順が怖いです(>_<)

こんばんは(^-^)夕花です。
コメント、ありがとうございますm(_ _)m
体調不良だったのですから、どうか、気にしないで下さい(^o^;
また新しい小説を読むことが出来て、嬉しいですから(≧∇≦)b
それにしても、李順が怖いですね(^-^;)
陛下が夕鈴を始末するなんて、有り得ません!
逆に妃として、迎えてほしいですね(^-^)
宰相は夕鈴をさらって、どうするのでしょうか?
陛下のために自分の養女として、後宮入りさせるのでしょうか?
ますますわからないことだらけです(>_<)
続きを楽しみにしております。
無理せずに書いて下さいね(^-^)

2014/06/09 (Mon) 23:45 | 夕花 #- | URL | 編集 | 返信

Re

コメントありがとうございます。
我が家の李順さんは考えすぎて胃を病むと思います。
側近さんって、胃が強くなきゃ勤まりませんね。
続き、のんびりお待ちくださいね(^^)/

2014/06/11 (Wed) 10:46 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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