2014_04
16
(Wed)21:08

勿忘草 1

こんばんは。
あさ、です。


このSSは、「桜舞う」にて書いていたものです。

まだ完結しておりませんが、「この世の春」で書き続けようかなと思います。



ご注意ください。


夕鈴がかなり痛い目に遭います。


捏造に次ぐ捏造。

何でも来い!な猛者な方のみ、お進み下さいませ。


どうぞ宜しくお願い致します。






【設定・臨時花嫁&捏造】



《勿忘草 1》





「・・・陛下。」


たすけて










『お妃様、陛下がお呼びにございます。』


そう言ったいつもの侍女。

彼女の声が、少し震えていたことに。

そう、気付くべきだった。


軽く身支度をして回廊に出て。

少し歩いた時にはもう、手遅れで。


「・・・あ・・・?」


身体が痺れ始めていた。


「お妃様、申し訳ございません、もうしわけ・・・・」


泣きながら詫びる侍女。

きっと、何かよほどの事情があったのだろう。

彼女を責める気には、なれず。


「だ、い、じょうぶ・・・」


夕鈴は、笑顔を浮かべて。

階から転がり落ちた。


「妃が逃げたぞっ!」


ひそかに呼び合う声が聞こえて。

思ったより多くの刺客がいたことに気付く。


「_____浩、大・・・」


呟くも、鞭のしなる音は、はるか遠く。


「お妃ちゃん、逃げろっ!!!」


切羽詰まった浩大の怒声が届く。



これは、本当に。


「殺され、ちゃう。」


回廊に置かれた香に混入した、痺れ薬。

幸い、それほど深くは嗅いでいない。


「に、げ・・・なきゃ!」


夕鈴は、低木に身を隠しつつ。


_____かくれんぼみたい。


この場にそぐわぬ感想を抱きながら、移動を始めた。





意識が遠のく。

視界が歪む。


『おい、夕鈴っ!どこだ?』


ああ、あれは・・・几鍔。

あんたなんかに、見つからないわよ。

私、かくれんぼは得意なんだから。


青慎、こっちにおいで?

姉さんと一緒に居れば大丈夫よ。


がさがさと周囲を探る音。

静かな足音。


_______見つかるもんですか。


私は、息を潜めて。

夢の世界に身を投じた。



かくれんぼ。

これは、ただの遊び。




「・・・見つけたぞ。」


ああ、見つかっちゃった。

じゃあ、今度は、


「わ、たし・・・が、お、に?」


朦朧としながら呟いた私。

その髪を掴み上げ、茂みから私を引きずり出した、鬼は。

笑っていて。



漆黒の髪。

赤い瞳。

薄い唇が。



「・・・見つけたぞ。」


笑う。



「・・・たすけ、て、陛下。」


「兄上は、来ない。」


冷たく言い放つ、晏流公。



「お前がいなくなれば、陛下のお目も覚めよう・・・『後宮の悪女』。」


小柄な身体に似合わぬ、強い力。


「後宮を血で穢すことは本意ではない。」


そう言って、妃の帯を解き。

幾重にも首に巻き付ける。


頭を巡らせた晏流公の目に留まったのは、桂花の樹。

今はもう花を散らした桂花の枝に、夕鈴は成す術もなく吊るされ。


「______夕鈴っ!!!」


黎翔の声が、どこか遠くから聞こえた気がした。






「どこだ、夕鈴っ!!」


浩大ですら手こずるほどの数を、なぎ倒しながら。


「返事をしろっ!!」


危険を承知で、叫ぶ。


今夜は、闇夜。

明るく照らされた回廊から離れれば離れるほど。

夜目の利かぬ夕鈴は、逃げる術を失う。



頼む。

動かないでくれ。


敵を切り払いながら、目を凝らすも。

紅い瞳に映るのは、黒い影ばかりで。


「どこだ!夕鈴っ!」


黎翔は、再び叫んだ。


ようやく敵の数が減り始め、動きが取れる。

回廊から飛び降りて、木立に突っ込む。


明りから外れた視界が一瞬暗くなるが、すぐに慣れて。

立ち並ぶ樹木の種類と香りから、ここが夕鈴と散策した紫苑宮の辺りだと悟った。


がさっ、と勝手知ったる庭園の木立を掻き分ける。

すぐに開けた視界。

今はもう花を散らした、桂花の樹。



『遠くに行っちゃダメですよ?』


そう、優しく言ってくれた、君が。

遥か頭上で。

ふわりふわりと、風に、ゆられ・・・て。


踊る。



「夕鈴ーーーーっ!!!」


叫ぶと同時に小刀を投げ打つ。

夕鈴を吊るす帯を断つべく、立て続けに放つ。


「くっ!!」


妃の帯は幾重にも色を重ねて織られる。

美しい色合いと煌びやかな絹糸。

それが、今は忌々しいものでしかない。


______間に合うか?!


黎翔は、夕鈴の両足を抱え上げ。

ぐったりと力の抜けた身体を持ち上げ。


「浩大っ!!早く来いっ!!!」


力の限り、叫んだ。






「お妃ちゃんっ!」


叫んだ浩大は、全速で駆け寄り。

たんっ、と軽やかな音を立てて、地を蹴り、宙を舞う。



「・・・っ!」


樹上から見下ろした夕鈴からは、完全に力が抜けていて。

茶色の髪が、さらさらと風になびく。


「切るぞ、陛下!」

「早くしろっ!!」


浩大が腰の後ろに佩いた小太刀のような剣を抜き、すぱっと横に払うと。


どさり、と夕鈴が落ちた。



「っ・・・ゆ、うりん・・・」


細い首に幾重にも巻き付いた、妃の帯。

手早く緩め、忌まわしいそれを捨てる。


「ゆーり、ん?」


黎翔は、震える手で。

呼吸を探し。

柔らかな胸に耳を当て、拍動を探る。


「陛下!何やってんだよ!遅いっ!」


黎翔の動きに焦れた浩大が、長身を押しのけ。


「お妃ちゃん、しっかりしろっ!!」


掌を重ねて、胸を圧迫し始めた。




これは、なんだ。



目の前の光景に現実感が伴わず。

黎翔は呆然自失する。



夕鈴の名を呼び、蘇生を試みる浩大。

ぴくりとも動かぬ、息絶えた夕鈴。



これは、一体・・・なんなんだ?



夕鈴が。

・・・死んだ?


全身の血が凍り。

一瞬後に、全ての知覚が否定した。





「・・・逝かす、ものか。」


黎翔は、ゆらりと立ち上がり。


夕鈴の色を失った頬に触れ。

顎を持ち上げ。

唇を塞ぐ。




逝かせぬ。



ただそれだけしか考えられず。

自分の命を吹き込むが如くに、吐息を移す。



どれほどそうしていただろう。


我知らず、涙が溢れて。

黎翔の涙が夕鈴の頬を濡らし。



「・・・うっ・・・げ、ほっ!」


「夕鈴っ!!」

「お妃ちゃん!」



ゆっくりと、夕鈴の目が開いた。







「もう大丈夫だ、夕鈴。」


「・・・ぐっ、げほっ、ごほっ!」


「無理にしゃべらなくていいから。ゆっくりと息をして・・・・そう、上手だ。」


夕鈴の上半身を支え、黎翔はゆっくりと華奢な背を撫でる。


「よかった・・・本当に、よかった・・・君を失うかと・・・」


震える声。


喉を抑えて息をしていた夕鈴は、その声の主をじっと見つめて。



「だれ?」


嗄れた声で、囁いた。







「・・・そうか、名は覚えておるのじゃな?」


柔和な笑みを浮かべ、不安に揺らぐ茶色の瞳を覗き込む、張元。

好々爺と言った態を装った老師は、妃の首にくっきりと残る痕を診はじめた。


「これは痛かったじゃろう・・・苦しかったじゃろう・・・よく頑張ったのう。」


絹の手巾に、水薬を沁みこませ。

とんとん、と優しく夕鈴の首を治療する。


「今のは、傷の痛みを軽くする薬じゃ。この薬湯は、のどの痛みを内側から和らげる。さほど苦くはないはずじゃ。」


冷え切った夕鈴の手に、茶碗を持たせた老師は。


「大丈夫じゃ。きっとすぐに記憶は戻るぞ?」


優しく微笑んだ。



「・・・・。」


無言で己の背を見つめる、隠密の気配を無視して。






「そう、ですか・・・記憶が。」


書簡を積み上げる李順の手が止まる。


「それだけでは、ない。」


黎翔は緊急の書簡のみに目を走らせ筆を動かしながら答える。


「夕鈴は今、十二歳だ。」

「は?!」


さすがの李順も素っ頓狂な声を上げ。


「・・・・かくれんぼ、を・・・していたそうだ。」


黎翔は書簡に目を落としたまま、静かに語りだした。






「お兄ちゃん、だあれ?」

「え?ゆうりん?」


「あれ?お兄ちゃん、私の事知ってるの?」

「う、うん。」


ことん、と首をかしげる夕鈴のしぐさは、どことなく幼く。




_____可愛い。



そんな場違いな感想を黎翔が抱いたとたんに、夕鈴が顔を顰めた。


「どうした?!」

「なんだか、首が・・・痛いの。」


夕鈴の額に汗が浮かび。

身体が震え出す。


「あ、れ・・・?寒い。」


カタカタと歯の根が合わぬ夕鈴。


茶色の瞳から、光が失われる直前。



「たすけて、へいか。」



愛らしい唇から、言葉が零れた。




「・・・っ!!」



目を閉じ眠る夕鈴を抱き締める。


『たすけて、へいか。』


あれは、きっと。

死に瀕した君が想った、最後の。


最後の。




私は何をしていた。


殺意のない刺客に手こずり。

君を一人にした。



暗闇で、唯一人。

故なき刺客に襲われて。

酷く首を吊るされ。



どれほど、恐ろしかったか。

どれほど、苦しく痛かったか。




『たすけて、へいか。』



私は、間に合わなかった。


夕鈴。






「・・・・李順。明日から政務は最小限に抑えよ。私は妃を取り戻さねばならぬ。」



黎翔は、静かにそう告げると。

じっと己を見つめる側近の視線を無視して、書簡に目を落とした。
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2014/04/17 (Thu) 01:38 | # | | 編集 | 返信

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2014/04/17 (Thu) 03:42 | # | | 編集 | 返信

水無瀬りん様へ

コメントありがとうございます。
夕鈴が苦しいと私も苦しくなります。
陛下を苦しませるのは嫌いじゃないんですが。←
勿忘草2の冒頭でご案内申し上げましたが、「桜舞う」の方でしたら軽やかにスクロール出来るのではないかと…
いかがでしょうか。

2014/04/17 (Thu) 22:16 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

聖璃桜さまへ

コメントありがとうございます。
何時にコメント下さっても問題ありません!
お気遣いありがとうございます。
これからどうなって行くのか。
今、頭の中の李順さんと相談中です。(^-^)

2014/04/17 (Thu) 22:19 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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