2014_04
13
(Sun)08:51

忘られぬ

おはようございます。
あさ、です。

こちらのSSは、SNSからの転載になります。
こちらに保管するのをすっかり忘れていたのはナイショです。


あちらと同じSSで申し訳ございません。
「この世の春」は、書庫も兼ねておりますもので。
御容赦下さいませ。




【設定・バイト終了、後?】


《忘られぬ》





「___何も知らないくせに、ふざけんじゃないわよっ!」

ああ、また。

「狼陛下は、そんな王様じゃないっ!」

やっちゃった。







バイトが終わって、もう半年。
今になってみれば夢みたいな、後宮での暮らしと。

初恋。

『初恋は叶わないって相場が決まってんのよ?』

明るく励ましてくれた、明玉。

『___だから言ったろうが・・・バカが。』

乱暴に抱き締めてくれた、几鍔。


夢のような日々は、やっぱり、夢で。
汀夕鈴の現実は、下町にあって。

私が陛下を偲ぶ術は。
もう。

ない。


明玉の店で働いて、家に帰って。
家事を済ませて、横になる。

繰り返される、当たり前の毎日。

でも、それでも。
少しずつ、少しずつ。
流れる時にも溶けることのない、澱のように。
積み重なる、陛下への想い。


はるか遠くに臨む、黄金色の甍。
あの中のどこかに、陛下がいて。
今日も、きっと。
山積みの書簡に囲まれて政務に臨まれ。

本来の姿に整えられた、後宮で。
お疲れを癒されているのだろう。


人には、分がある。

陛下は、国王様。
私は、下町娘。

『____いかないで、夕鈴。』

縋るように言った陛下の手を振り払ったのは、私。

『どこにいても、味方です。』

想いだけを。

いえ。

想いしか、ないから。

『花嫁は、陛下に恋をしていました。』

最後は、私らしく。
正直に、伝えて。

『さようなら。』

私は、現実に戻ってきた。




________でも。




「狼陛下も大臣達の傀儡だな。」

陛下の悪口を聞く度に。

「後宮の美妃たちに骨抜きにされてるらしいぜ?」

どうしようもなく、腹が立って。

「______何も、知らないくせに・・・ふざけんじゃないわよっ!」

私は、泣きながら。
抗うのだ。

「・・・・まだ、忘れられねえのか。」

私を庇って頬を腫らした、几鍔。

「安心しろ。いつまででも、待っててやるから。」

優しくて深い瞳に、甘えたくなるけれど。


私は。
どこにいても。
陛下の。

____花嫁、だから。


「ありがと。」

無理やり、笑うの。


「___夕鈴。」

ほら、こんな風に。

「待たせてすまなかった。」

陛下が、私を。

「____おいで。」

迎えに来て、くれる。

「愛している。」

その日、まで。






*





「ここに残ってくれ。本物になって___行かないで、夕鈴。」

希う僕に。
一瞬、伸ばされかけた、夕鈴の手。

「・・・さようなら。」

自らの手を、引き留めて。
夕鈴は、僕のもとを去った。

僕のために。



後宮に、秩序を。
本来の後宮の姿を。

うるさい輩は尽きず。

美辞麗句を並べ立て、『全てはこの国のため』だと。
まるでそれが免罪符であるかのように、言葉を振りかざす。

_____くだらぬ。

多くの妃を娶り、争いを産むことが、『秩序』か?
数多の皇子皇女をもうけ、諍いを誘うことが、『この国のため』か?

違うだろう。

結局、誰も彼も。
欲しいのは『自家に益を齎す国』なのだ。

私は、国王だ。

私が守るべきは、この国の民であり。
民を護ろうとせぬ臣下なぞ、要らぬ。

私に相応しい妃は。
この国を愛し、民を慈しむ者でなくてはならぬ。


夕鈴。

君じゃなきゃ、ダメなんだ。




君がいなくなってから、もう随分経つ。
李順が心配するほど、僕は政務漬けの毎日を送り。
自分でも分かるほど、痩せた。

僕、考えたんだ。
悩んだんだ。

君の幸せと、僕の幸せを。

この国の幸せを。


だから、さ。

もう、いいよね?


君を貰いに行くよ。

この国のために、僕のために。


そして。

君を幸せにするために。

二人が幸せになるために。


忘られぬ、この想いのために。
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