2014_04
10
(Thu)12:47

隠し味

こんにちは。
あさ、です。

向こう三日間の献立を考えていたら。
なぜかSSを書いておりました。

不思議です。

おかしいなぁ。




【設定・臨時花嫁】


《隠し味》



「・・・最近多いな。」

黎翔は、うんざりとした表情で箸を置く。

彩り豊かに盛られた皿の数々。
美しいが冷め切ったそれらは、国王の為のものだ。
数々の毒味を潜り抜けた彼らは、その端々に崩れが見受けられるが、それでも。
美しいことに、変わりはない。

「そうですね、こうも度々ですと、さすがに。」

憮然とした様子の主を、李順はさらりと受け流す。

「どうなさいますか?厨に手を入れますか?」
「・・・いや、しばし待て。」

ふて腐れた黎翔は、美麗な料理を箸で行儀悪くつつき。

「良いことを思いついた。今しばらく、泳がせよ。」

楽しげに笑った。







「・・・で、何でこうなるの?」

ウキウキと大通りを闊歩する国王陛下の背を見つめ、夕鈴はため息をつく。

______僕、毒にあたって寝込んでることになってるから!!


今朝早く現れた黎翔は、それはそれは嬉しそうに。


______李順が黒幕を捕まえるまで、お休みもらっちゃった!!


遊ぼう!と、幻の尻尾を振ったのだ。


「ねえねえ、夕鈴!肉饅頭と揚げ餃子、どっちがいいかなあ?」
「・・・李翔さんの、お好きな方をどうぞ・・・」

長身の黎翔は、かなり目立つ。


_______人目に付かないように!!


上司の厳命を思い出し、夕鈴は両手いっぱいに食べ物を抱える黎翔の袖を引いた。


「り、李翔さん!そんなにたくさん買ったら目立ちますから、二つくらいにして下さい。」
「えー、だって僕、ここ三日まともに食事摂ってないんだよー、おなかすいたー。」

子どものように駄々をこねる黎翔を、夕鈴は目を丸くして見つめて。

「な・・・なんで、三日も?三日もご飯食べてないんですか?!」

叫ぶ。

「ちょ、夕鈴、声が大き」
「なんでっ?!なんでですか?!三日もご飯食べてないだなんて、どうして?!」

愕然とした表情の夕鈴。
慌てる黎翔。
ざわつく周囲。

「_____夕鈴。落ち着いてくれ。」

ふぅ、とため息をついて。
黎翔は夕鈴の肩に手を置き、囁いた。




「・・・どうして、もっと早く教えてくれなかったんですか?」

汀家の台所。

湯気の立つ蒸籠とぱちぱち跳ねる油。
それらから漂う香りは、どれも美味しそうで。

「うーんと・・・毒入りの食事なんて、よくあること、だし?」

にこにこと待つ黎翔は手際よく調理を進める妃を見つめ続けていた。

「よく、ある・・・こと。」

ぼそっと呟いた夕鈴の手が、止まって。

ぱちぱちと油のはぜる音がやけに大きく聞こえる。


「私・・・昨日も、一昨日も、その前の日も。」
「夕鈴?どうしたの?」

「わたし・・・なにも、しらずに・・・お食事、頂いてました。」
「今回は王を狙ったものだったから。君の食事は安全だったよ。」

黎翔に背を向けたまま、夕鈴は俯いて。
ぎゅっ、と唇を噛み締めた。
そうしなければ、涙が溢れてきそうだったから。

「そうじゃ、なくて!!へ、陛下、は!」

涙を怒りにすり替える。

「いつもそうやって、何でもないことみたいに・・・辛くないわけ、ないのにっ!!」
「夕鈴?」

「か、悲しい時は悲しいって・・・辛い時は、辛いって・・・」
「うん。」

「言ってくれないと、わたし、わからない・・・」
「うん、ごめんね。」

ぱたぱたと雫が落ちて。
皿に落ちる。

「陛下がお腹を空かせていたのに、わ、わたし・・・しらなく、って!」
「・・・。」

「じ、自分は食べてっ!情けない、です。____妃、なのに。」
「っ!」


国王は、申し訳なさそうに。
震えるか細い肩を優しく抱く。

漂う湯気と、穏やかな陽射しの中。
黎翔は夕鈴の涙が止まるまでそうしていた。




「ごめんなさい、少し揚げ過ぎちゃったかも・・・」

恐縮しながら皿を並べる夕鈴。

「うっわーーー!!美味しそうっ!!」

目を輝かせる黎翔は、待ち切れずに箸を手に取る。

「ね、ね!食べていい?」
「ふふっ、どうぞ!」

三日ぶりのまともな食事に、黎翔の前の皿は次々と空になり。
その満面の笑顔と旺盛な食欲に、夕鈴の心も明るくなる。

「おいしい、ですか?陛下。」
「うん!とっても!」

温かくて優しい味。
今まで口にしたどの皿よりも美味な、食事。

きっと、夕鈴の涙のおかげ。


______毒味をせずに召し上がっても安心なのは、夕鈴殿の手料理だけですから。


休暇も致し方ない、と、嫌そうにため息をついた側近の顔が浮かぶ。

今回は、厨全体を入れ替えねばなるまい。
人員は、最小限に抑えるとしよう。

そして。

ついでに。


「・・・夕鈴専用の台所を作ろうかなぁ。」

いつまでもいつまでも、僕のために。
この優しい味を、作ってもらいたいから。

「何か仰いましたか?」
「ううん、なんでもないよ。」

黎翔は、少し色の濃い揚げ餃子を箸でつまんで。

「夕鈴も、食べようよ。・・・はい、あーん、して?」
「あ、はい。あーん・・・って、むぐっ!」

思わず開けてしまった夕鈴の口に、それを詰め込み。

「美味しい?」
「むっ、ぐっ・・・!」

くすくすと、笑った。



「・・・やっぱり、明玉さんのとこで昼食済ませよう、かな。」

学問所帰りの青慎は。
楽しげな笑い声を扉越しに聞きながら、踵を返す。

その後姿を。

「よくできた弟君だねー。・・・それにしても・・・ハラヘッタ。」

空腹を抱えた屋根の上の隠密が見送った。
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2014/04/10 (Thu) 13:07 | # | | 編集 | 返信

高月慧ネン様へ

コメントありがとうございます。
明日明後日明々後日。
さて、何を食べさせようか、と考えていたんですよ。
そしたら、陛下の食事って毒だらけっぽいなぁ、となり。
三日連続毒入りの食事だったらどうするかな、となって。
気付いたらPCを開いてSS書いてました。←病んでる
夕鈴専用の台所が設置される日もそう遠くはなさそうです。

2014/04/10 (Thu) 19:34 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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2014/04/10 (Thu) 20:33 | # | | 編集 | 返信

ぶんた様へ

いえいえ、スルーなんて致しません(笑)
献立。悩みますよね。
予算には限りがありますし、かと言って似たようなものばかりだと飽きてしまう。
スーパーでは眉間に皺を寄せてしまいます。
夕鈴専用の台所。
おたまも勿論ですが、きっと鍵付きです。(おい)
何故鍵が必要なのかは、陛下に聞いてまいります。
サイン会、電話頑張ったんです。
懐かしの就職活動を思い出しました。(笑)

2014/04/11 (Fri) 11:09 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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