2014_03
18
(Tue)23:57

リクエスト第十二弾「吐息」

こんばんは。
あさ、です。

リクエスト第十二弾は、ちょこちょこ様からです。

「臨時妃で、陛下の首元のすそ?がほどけかけていてそれを縫ってあげる夕鈴。
縫い物が上手な夕鈴は上衣を脱がないで陛下に椅子に座ってもらいながらぬいぬい。
最後糸を切る時についくせで歯で切ってしまう!
私の萌えポイントは陛下の首もとに口を寄せる夕鈴…
そしてその行動にドキドキする陛下。」


とのリクエストでございました。

ご要望にお応えできたかどうか、甚だ微妙ではありますが。
お楽しみ頂ければ幸いに存じます!






【設定・臨時花嫁】

《吐息》


「______あと一刻だけ待ってやろう。」

政務室に響き渡る、氷点下の声音は。

「私がおらぬ間に、ここにいる者は揃いも揃って能無しとなり下がったか?」

白陽国国王、珀黎翔、の。

「具体性に欠ける。詰めが甘い、と・・・何度言わせる気だ?」

『冷酷非情の狼陛下』の、苛立ちを。

「・・・役に立たぬ耳なぞ、要らぬな?」

余すところなく表していた。

ガツン、と石床に突き立てられる、剣。
黒光りする鞘に収まったそれは、実践に即した頑丈な造り。
長身の国王が振り下ろせば、鞘に収まったままでも十分な殺傷能力があろう事は、文官たちにも察せられる代物だ。

その鯉口から聞こえる、金属音が。
氾水月を、震撼させ。
柳方淵を、青褪めさせる。

片隅に座した、夕鈴は。

______陛下、怖すぎますっ!!

視線を落として身を固くし。
凍り付いた政務室を悠然と横切った黎翔は。

「______妃よ。しばし休息だ。」

嫣然とした微笑を浮かべ。

「君の部屋で、私を温めてくれ。」
「っ!」

瞬時に頬を朱に染めた妃を抱き上げ、回廊へと姿を消した。







後宮、夕鈴の部屋。

「_____よい、下がれ。」

妃を抱きかかえて現れた王の命に従い、侍女たちの退室を待つ間。
夕鈴は羞恥を堪えて寵姫らしく黎翔の胸に凭れ掛かっていた。

____とくん、とくん。

安心する、音がして。
大好きな人の香りに包まれる。

そっと、目を閉じて。
束の間の幸せに、身を委ねていると。

「・・・うん、もう大丈夫。行ったよ、夕鈴。」

邪気のない小犬の声が、夕鈴を現に引き戻した。

「お疲れ様でした!お茶をお淹れしますね!」

我に返り、慌てて膝から飛び降りて。

「ええと、今日は花びらの形のお菓子が・・・」

先ほどまでの夢を振り払うように、くるくると動く。

「・・・もう少し抱っこしていたかったのに。」

黎翔は、名残惜しげな視線を妃に向けて。

「お茶よりも、夕鈴のほうが癒されるんだけどなぁ。」

ぼそっと呟いた。



爽やかなお茶の香りと、花びらを模したお菓子。
春らしいそれらは、なにとはなしに心を浮き立たせる。

「それで、飾り棚の中から出てきた文を、老師が取り上げて・・・」
「うん。」

「その慌て様があんまりおかしかったので、理由を聞いたら・・・」
「うんうん。」

「なんと!昔々、老師がもらった恋文だったんですよっ!」
「______ええっ?!こいぶ・・・げほっ!ごほっ!!」

驚いた黎翔は茶でむせ返り、夕鈴は慌てて立ち上がって手巾を渡した。

「だ、大丈夫ですか?陛下。」
「ぐっ・・・けほっ・・・だ、だいじょう、ぶ・・・あはは、老師に、恋文・・・はは、ははは・・・」

苦しげに身を捩って笑う黎翔の様は、楽しげで。

「そりゃ、老師にもお若い頃があったんでしょうが・・・あの慌てぶりを思い出すと・・・ぷっ・・・ふふ、ふ・・・あははは!」

夕鈴もつられて笑い出した。

くすくすと笑い続ける二人の前には桃色の菓子と、淡い緑色の茶。
立ち上る茶の香りが、和やかな春を告げる。

二人で顔を見合わせ、思う存分、笑って。
漸く笑いを止めた夕鈴は、黎翔の衣装に目を止めた。

「_____あ、陛下、襟が・・・」

背を丸めていたせいで見えた、黎翔の襟足。
綺麗な群青色の衣装の襟に、ほんの少しの解れが見える。

「ほどけてるのかしら?」

何気なく手を伸ばした夕鈴に。

「あ、そこね、使ったから。」

黎翔はさらりと答えた。

「・・・使った?」
「うん、そう。襟の裏に針を仕込んであるんだ。刺客対策でね。」

そうか、解けちゃってたかー、と朗らかに言いながら。
黎翔は少し冷めてしまった目の前の茶に手を伸ばす。

「し、刺客、ですか・・・」

事も無げに言い放つ黎翔を、睨むように見つめる夕鈴に。

「______いつもの事だから。」

黎翔は笑顔で切り返した。



「_____はい、どうぞ。」

茶を入れ替え、黎翔に手渡し。
夕鈴は無言で針箱を手に取る。


私は、バイトだし。
臨時の花嫁、だし。
仮初の妃、だし。
ただの下町娘・・・だけど。

____心配するくらい、いいじゃない。

『詮索はするな』と言うような、先ほどの黎翔の笑顔。
踏み込んではいけない一線は、あちらこちらに張り巡らされていて。

何も考えず、ただ、笑って。
陛下の寵姫を演じるしかできない自分に、情けなさを感じつつ。

「・・・すぐに済みますから。じっとしてて下さいね。」

縫い針を摘み上げ。
夕鈴は黎翔の背後に回った。



さらり、と夕鈴の髪が流れる音がする。
君の前髪が、僕に触れていて。
真剣に針を動かす君の息遣いが、感じられる。


______ねえ、夕鈴。

知ってる?

僕が躊躇いなく口にする茶は、君が淹れたものだけ、で。
背後に立たれても警戒しないのは、君だけ。


____とくん、とくん

針に夢中になった夕鈴の身体から伝わる、柔らかな鼓動。
首筋にかかる、君の、吐息。

口中に含んだ茶菓よりも甘く。
立ち上る茶の香りよりも香しく。

春の息吹を、僕に伝える。



「______はい、できました!」
「っ!!」

最後に、プツンと。
糸切り歯を使った夕鈴の、蕩ける様な、吐息と。
首筋に触れた、前髪に。

「・・・・あ、ありがとう・・・」

過剰に反応した自分を持て余しつつ。

「夕鈴も一緒にお菓子食べよう?」

_______一刻までには、まだ、間がある。

黎翔は、必死に

まだ首筋から香る、愛しい香りと。
背に残る、柔らかな温もりの名残と。
微かに襟足に触れたような気がする、ぷっくりとした唇の、気配を。

「お茶、おかわりしていい?」

振り払った。




一刻後の、政務室には。

「お妃さまは偉大だねぇ・・・」
「無駄口を叩くな!氾水月!!」

穏やかな小春日和が訪れたという。

C.O.M.M.E.N.T

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2014/03/19 (Wed) 01:16 | # | | 編集 | 返信

偉いよ!

なんて素敵なお話!
我慢できた陛下、偉いよ!
一瞬、前屈みになっちゃうのかと
ドキドキしました。
夕鈴の齎す春がずっと続くといいな。

2014/03/19 (Wed) 06:20 | 羽梨 #- | URL | 編集 | 返信

ちょこちょこ様へ

この度はリクエストありがとうございまいした。
随分とお待たせしてしまい、心苦しく思っております。
申し訳ございませんでした。
拙いSSではありますが、喜んで頂けて嬉しい限りです。
スキンシップに免疫のない陛下の慌てぶりをお楽しみ頂ければ幸いに存じます。
ふふふー。

2014/03/19 (Wed) 09:06 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

Re

前屈みだったと思う。
でも、気合で抑え込んだんだよ、きっと。
・・・どんな気合かは分かんないけど。
夜まで我慢だ、黎翔!
夜になったら存分に思い出すがいい!
背中に何が当たったのか。←

2014/03/19 (Wed) 09:08 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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2014/03/19 (Wed) 15:06 | # | | 編集 | 返信

ちょこれーとぱふぇ様へ

いつもありがとうございます。
お忙しい毎日の癒しになれましたなら、幸いに存じます。
イライラすると、心がささくれてきますよね。
うきゃーってなって、李順さんが書きたくなります。
何故でしょう。

2014/03/19 (Wed) 17:27 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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2014/03/19 (Wed) 20:27 | # | | 編集 | 返信

狛キチ様へ

コメントありがとうございます。
お忙しそうですが、お体に気を付けてくださいね?
期末も本番。
夫も毎日午前様です・・・。
陛下、我慢しました!たぶん!(笑)

2014/03/20 (Thu) 07:04 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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