2014_02
27
(Thu)21:32

リクエスト第八弾「囚われる」後編

こんばんは。
あさ、です。

愛しのちび陛下が、インフルBに倒れました。
もう、なんていうか。
辛そうな姿が可哀想でなりません。

ごめんね、ちび陛下。
母は無力だ。

長女の時は「まったくもう!早く治しなさい!」な気分だったのに。
この差は、いったい。

依怙贔屓な母です。

ふぅ、しんどい。



のあ様のリクエスト。
書き終えていたのですが、病院だなんだでUPが遅くなりました。
ごめんなさい。

纏まりがなくて申し訳ございませんが、精一杯頑張りました。
すいません・・・。

後編、やたらと長くなっております。
表示されないなどの不具合がございましたら、コメント欄からお知らせ下さると幸いです。


あさ



【設定・臨時花嫁】

≪囚われる 後編≫


目覚めて最初に目に入ったのは、陛下の手。
私の手を包み込む、大きな手。

「・・・あ、れ?わた、し・・・」

どこで寝ちゃったのかしら。
そう思って。
俯せの体を起こそうとしたら。

「っう、あっ?!」

背に焼けるような痛みが走った。

「あ・・・痛ぅっ・・・うっ!」

息が止まって、記憶が戻る。

そうか、私。

「・・・斬られたんだ。」

ふぅ、とため息をついて、俯せたまま視線を上げると。
艶やかな黒髪が目に入った。

よかった。
陛下はなんともなかったんだ。

あ、でも。

「右目の具合、どうかしら・・・」

急に心配になって。
見えそうで見えない陛下の寝顔を、近くで見たくて。
握りしめられた手を、そっと外し。

「失礼、しますね。」

綺麗な顔にかかる前髪を、さらりと払った。






「夕鈴っ!!!」

心臓が止まった。
よく見えぬ右目を庇うため疎かになった左の護り。
隙を突かれた。
そう思った時に飛び出してきたのは、君で。

「危ないっ!!」

はらりと舞い散る、薄茶の髪。
飛び散る、血。
崩れ落ちる夕鈴の身体と。
光を失い閉じてゆく眼。

「夕鈴っ!夕鈴っ!!」

夢中で叫び、君を抱きしめ。

「邪魔だっ!!!」

手当たり次第に敵を減らし、走った。

後宮が酷く遠く感じる。
腕の中の夕鈴が震え始めたのが分かる。
毒か?
血の気が引いた。

「逝くな、夕鈴っ!!」

必死に叫んで。
ようやく辿り着いた老師の部屋で、衣装を裂いて傷を洗い、毒刃でなかったことに安堵する。

「陛下、身体を抑えていて下され。」

額に汗をにじませた老師は、鉤状に曲がった細い針を手に取った。

意識を失ったままの夕鈴。
か細い背に長く走る、痛ましい傷。
ようやく出血が止まり始めたそれを、老師は慎重に縫い合わせていった。

「・・・傷が残るやもしれませんな。」

小さくつぶやいた老師の言葉に、黎翔は答えず。

「夕鈴、夕鈴・・・」

黎翔はただひたすらに、妃の名を呼び続けた。


夕鈴。
君だけは。
何があろうが、失えない。

君が目覚めたら。
跪いて乞おう。

僕の妃は、君だけだ。
何処にも行かないでくれ。

ずっと、ずっと。
一緒にいて。



_____夕鈴。

細い指が僕に触れる。

「失礼、しますね」

_____夕、鈴?

髪に触れる、君の指。

「よかった、腫れが引いてる。」

何を言っているんだ?

「陛下の右目、痛そうだったもの。よかった。」

その言葉と、漂う薬の匂いに。
一気に覚醒した。


「夕鈴?!目が覚めたのか!」

がばっと起き上った黎翔に驚いた夕鈴は、思わず身体を起こしてしまい。

「痛っ!!」
「ごめん夕鈴!大丈夫?!」

黎翔は青褪め、狼狽える。

「いたた・・・だ、大丈夫、です。」

夕鈴は眉を顰めつつ。

「陛下、ご無事で何よりです!」

にっこりと、笑った。


______ああ、夕鈴。君は・・・

胸に満ちる、温かい何か。

このか細い体に守られている。

そんな気持ちになる。

「夕鈴。傷が癒えたら、聞いて欲しいことがあるんだ。」

君を、正妃に。

「覚悟しておいてね?」
 
不思議そうに自分を見つめる夕鈴の額に口付けを落とし。

「老師に傷を診てもらおう。」

黎翔は隣室に控えていた張元を呼んだ。







「掃除娘。言いにくいんじゃがの・・・」

李順に呼ばれた黎翔が席を外した僅かな間。
傷口を改めながら、張元は声を潜めた。

「分かってます。」

少し悲しげに、夕鈴は答え。

「残るんでしょう?・・・傷痕。」
「・・・そうじゃ。」

ふふ、と笑う。

「陛下が、ご無事でしたから・・・いいんです。」

少し、休ませて下さい。

そう言って。
夕鈴は目を瞑った。




これから、どうしよう。
背に傷のある妃なんて、きっとお役御免だわ。

陛下は、優しいから。
傷が癒えるまでクビを延ばしてくれたんだ。
さっきのはきっと、そのお話の事なんだ。

どうしよう。
私、もう。
陛下のお側に、居られない。

「うっ・・・・うっ・・・」

枕に顔を埋めて泣く夕鈴の頭を、大きな掌がそっと撫でる。

「夕鈴。何故泣く。」
「陛下?!」

動きかけた夕鈴の肩をそっと押さえ。

「どうしたんだ。」

黎翔は涙にぬれた夕鈴の顔を手で拭った。

「痛むのか?」

紅い瞳が不安げに揺らぎ。

「もう一度、老師を・・・」

言いかけた黎翔を。

「違うんです。」

夕鈴の囁きが遮る。

「あの、私の、傷・・・」

言い淀む夕鈴の手を取り。

「なあに?何でも言って?」

黎翔は優しく微笑んだ。

____もう、この微笑みが見られなくなる。

胸が締め付けられるように痛み、夕鈴は言葉を詰まらせた。

でも、それでも。
言わなきゃ。

「傷、残るんです。だから、陛下。」
「・・・ああ、老師から聞いている。」

「私を、クビにして下さいっ!」
「_____っ?!」

叫ぶように言い切った夕鈴を。
黎翔は呆然と見つめた。



今、何と言った?

「夕鈴、君は勘違いをしている。」

クビにしろ、と?
背の傷を理由に?
私のために負った愛しい傷を理由に、君を解雇しろ、と?

「背に傷があるから?」
「そうです。傷痕がある妃なんて、みっともないでしょう?」

悲しげに微笑む夕鈴。
伝わらぬ心が、焦れる。

「妃は、君だけだと・・・何度も伝えたはずだが。」
「今は演技はいりませんよ、陛下。」

届かぬ言葉が、宙を彷徨い。

「傷物のバイトなんて、もう必要な」
「夕鈴っ!!!」

抑えきれぬ感情が溢れた。

「勘違いするな、夕鈴。傷があろうがなかろうが、君は私の妃だ!」

俯せのまま動けぬ夕鈴の頬に手を当て。
脅すが如く、言い渡す。

「君以外の妃は、いらぬ。」
「だ、だって・・・」

まだ何か言いたげな夕鈴に。

「・・・話はあとだ。今は傷を治すことだけを考えてくれ。」

そう言い置いて。
黎翔は部屋を出ていった。




「・・・浩大。護衛を怠るな。」

回廊を渡りながら、指示を出す。

「了解。」

不機嫌な自分に八つ当たりされぬよう素早く気配を消した隠密に苦笑する。


あのまま、彼女の部屋に居たら。
いくら言葉を尽くしても通じぬ心に焦れた自分が。
まだ傷も癒えぬ彼女に何をするか、わからなかった。

どうあっても手に入れたい、夕鈴の心。
傷を理由に退宮を申し出る彼女。

夕鈴。
君の心を得る事は。

「____王位簒奪より、難しいな。」

黎翔は足を止め。

「陛下、急ぎの案件が。」
「分かった。すぐに行く。」

待ち構えていた李順に、声を投げた。







傷を負って、十日が経過し。
徐々に痛みも引き、歩けるようになった頃。

「李順さんに会えないかしら、浩大。」

夕鈴は上司に面会を申し出た。

「あの、大変厚かましいのですが・・・」
「何でしょう、夕鈴殿。」

まだ顔色の悪い夕鈴は、思いつめた様子で。

「今回の危険手当で、借金は帳消しにできないでしょうか?!」

必死に言い募る。

「お願いします!ただでさえ嫁き遅れなのに、傷物なうえ、借金まであったら・・・私、もうっ!」
「・・・は?」

予想外の展開に面食らった李順は、絶句し。

「すぐにここを出ていきますから!後の治療は自分で何とかしますから!だからお願いします!借金だけは、なんとか・・・!」

身を震わせて懇願する妃を見つめ。
しばし黙考した。


これは、良い機会かもしれない。

臨時妃を手放す気などない、陛下。
だが、何の後ろ盾も力もない彼女にとって。
後宮は辛い場所でしかない。

背の傷など、こちらでどうにでも言える。
王宮で賊に襲われた事にすれば。
過分に見舞金を下賜すれば。
嫁ぎ先など、いくらもあろう。

______そう。例えば、几家など。


これは、チャンスだ。
彼女を本来の居場所に戻し。
陛下に彼女を手放させる、千載一遇の、好機。


「・・・それでは、夕鈴殿。少し細かい話を致しましょう。」

居住まいを正した上司の迫力に。

「は、はいっ!」

夕鈴は痛む背筋を伸ばした。


____そして、その三日後。

夕鈴は後宮から姿を消した。








____おかしい。

気づいた時には、すでに遅く。

「・・・夕鈴は、どこだ。」

ここ三日政務に追われて王宮に閉じ込められていた黎翔は。

「彼女を何処にやった、李順。」

ようやく事態を悟った。

「今回の怪我で、危険手当が増額され、借金も帳消し。バイトを終えられ、帰られました。」

それがどうかしたか、と言わんばかりの李順を。

「そんな事を、誰が許した?!」

黎翔の怒気が襲うが、李順は怯まず。

「彼女の意思を尊重したまでです。それにバイトは借金が終われば解雇の予定でしたが。」

真っ直ぐに主を見据え。

「嫁入り前の彼女に傷を負わせたのはこちらの責です。彼女の今後に支障が出ぬよう手も回しました。ですから、陛下____」

一気に言葉を紡ぐ。

「____もう、放してやらねばなりませんっ!」

しん、と。
息詰まる沈黙が続き。

「傷が、癒え次第。」
「李順っ。」
「彼女は几商店に嫁ぎます。」
「黙れっ!」

静かに口を開いた李順は、一歩進み出て。

「______彼女を放してやって下さい、陛下。」

ゆっくりと、跪いた。


____夕鈴が、嫁ぐ?

私から、離れて?
僕を、置いて?

世界が傾ぎ、感覚が消え。

____イヤだ。

ただそれだけしか、分からなくなって。

「お待ち下さい、陛下っ!!」

気づけば、僕は。

「・・・夕、鈴。」

下町にいた。







「あ、痛っ。」

高い棚に手を伸ばした夕鈴は、痛みに顔を顰め。
少し、笑う。

「______ずっと治らなければいいのに。」

この痛みが続く限り。
いいえ、この傷がある限り。
あの夢のような恋は現実だったんだ、って。
この手は確かにあの方に触れたんだ、って。
思える。

陛下、陛下。

「・・・へいか。」

小さく口に出してみる。

「陛下。」

涙で視界が曇る。

「・・・陛下。」

ぱたり、と雫が落ちた時。

「夕鈴。」

ここにいるはずのない人の声が聞こえた。

「・・・夕鈴、手を。」

恐る恐る振り返ると、そこにいたのはやっぱり陛下で。
あろうことか、片膝をついて恭しく私の手を取る。

「な、に?」
「夕鈴。私の妃になってはくれまいか。」

聞き間違いにも程があるわよ、夕鈴。

「あ、そうか。これ、夢なのね。」

そう、夢なら何が起きても不思議じゃない。

「そうよね、陛下がこんなとこに来るはずないもの。」

うんうん、と頷いて。

「傷のある妃なんて、陛下には似合わないものね。」

つぶやいた夕鈴の手が、強く握られた。

「夕鈴。何度でも乞おう。わが妃に、君を迎えたい。」

ぎゅっ、と握られた手が、ありえない現実を教える。


____夢じゃ、ない?

ああ、そうか。
陛下は、優しいから。
傷を、気にして。

「陛下、いいんですよ。過分に手当てを頂きましたから、傷の事は気になさらないで下さい。王宮勤めの名誉の負傷、ってことで、結構自慢になるんですよ?それに、ほら!元々美人でもないのに、傷まで作っちゃって!私なんて陛下には似合わな・・・っ!」

努めて明るくまくしたてる夕鈴に。
狼の鮮やかな笑みが間近く迫った。

「・・・甘く見られたものだな、私も。」
牙をむいた狼みたいな、陛下。

「傷?そんなものは関係ない。」

笑顔が、怖くて。

「だ、だって・・・」

何も言い返せない。

「夕鈴。君が君でありさえすえれば、それで構わぬ。」

狼陛下。
鮮やかな笑みは怒りの裏返しだと、夕鈴は悟る。

「陛、下?」
「逃がさん。」

夕鈴の手を、自らに引き寄せ。

「君は私のものだ。」

黎翔は有無を言わさず夕鈴を抱き上げ。
奥の部屋を目指す。

「ちょ、陛下?!」
「ここが君の部屋だな。」

恐ろしい声音とは裏腹に、そっと寝台に寝かされる。

「傷を見せよ。」

しゅっ、と帯が解かれ。
狼に魅入られた兎は抵抗する術もなく。
柔らかな裸身を晒す。

「まだ、痛むだろう。」

真白く輝くような背に走る痛々しい傷痕に、唇を寄せ。
黎翔はそっと奥歯を噛み締めた。

すまない、夕鈴。
この傷を。
胸に刻もう。

この傷痕が、僕を強くする。
命をかけて。
僕は君を護る。

だから。

「夕鈴。愛している。」

心を。

「生涯、私の側にいてくれ。」

君の心が、欲しいんだ。

祈るような黎翔の言葉。
それは、かすかに震えていて。
夕鈴の心に、ゆっくりと沁みる。

「・・・いて、いいの?」

ああ、そうか。

「私、陛下が好きなの。ずっと、側にいたいの。」

私は、この人に。

「側にいさせて。」

_____愛されている。


「愛しています、陛下。」
「愛している、夕鈴。」

貴方の心は、私に。
私の心は、貴方に。
囚われ続ける。

この消えぬ傷のように。
永遠に。

C.O.M.M.E.N.T

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2014/02/27 (Thu) 21:45 | # | | 編集 | 返信

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2014/02/27 (Thu) 22:45 | # | | 編集 | 返信

あつかましくもコメントさせて頂きます。
感動しました!
読み終えた後、涙が…。
素敵な素敵な小説…。すごい…。
これからもおじゃまさせて頂きますので、頑張って下さい!
ハァー、イイ夢見れそうです!

2014/02/28 (Fri) 00:55 | あち #- | URL | 編集 | 返信

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2014/02/28 (Fri) 05:34 | # | | 編集 | 返信

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2014/02/28 (Fri) 05:50 | # | | 編集 | 返信

狛キチさまへ

コメントありがとうございます。
息子も復活しました!
あとは私だけです。
あ、インフルじゃありません。看病疲れでして。
陛下と夕鈴。
たくさんの障害に負けず、幸せを作ってもらいたいなぁ、と思います。
甘いお話でしたか?よかった!
楽しんで頂けて幸いです

2014/03/02 (Sun) 21:45 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

ゆうま様へ

コメントありがとうございます。
看病疲れましたー。
長女もちび陛下も治ってほっとしたら、私の喉がやられました。げほげほ。
疲れるとでるものもらいまで。
でもインフルには罹らない!
丈夫です。えへん!
ちゃんと養生します!

2014/03/02 (Sun) 21:47 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

あち様へ

有難いコメント、嬉しいです。
褒めて頂けると嬉しくて恥ずかしくて、うわぁぁぁ!となりますが。
やっぱりとっても嬉しいです。
これからもマイペースではありますが、頑張りますね。

2014/03/02 (Sun) 21:48 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

萌葱さまへ

そうです!二人なら大丈夫なんですよっ!
聞いてる?!陛下っ!!!←まだ本誌の衝撃が抜けない
いつもコメントありがとうございます♪

2014/03/02 (Sun) 21:50 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

のあ様へ

この度は素敵なリクエストありがとうございました。
リクエストに萌えてしまい、おおおっ!となりまして。
つい、長くなりました。ごめんなさい。
でも、喜んで頂けて嬉しいです。
ありがとうございます。
これからも宜しくお願いします。

2014/03/02 (Sun) 21:52 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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2016/01/13 (Wed) 14:27 | # | | 編集 | 返信

お名前のなかった方、へ

拍手!
15000!ありがとうございます!

ひょっとして15000拍手をクラップしていただけましたか?
本当にうれしいです。ありがとうございます。

2016/01/13 (Wed) 21:44 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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2016/01/13 (Wed) 23:21 | # | | 編集 | 返信

タイフーン様へ

お返事ありがとうございます。
拍手は何度頂いても美味しいんです。
ですので、キリ番のご連絡ほんとうにありがとうございました。

それでですね。
キリ番リクエスト、頂けませんでしょうか。
原稿が上がり次第の取り掛かりになるのですが、せっかくのキリ番ですから、是非お願い申し上げます。

もちろん無理にとは申しません!
お気が向かれましたら、是非。

2016/01/14 (Thu) 20:21 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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