2014_02
19
(Wed)23:33

リクエスト第五弾「はるのひねもす」

こんばんは。
あさ、です。

リクエスト第五弾は、おりざ様(陛下の花園様)からです。

「春爛漫ある日の 陛下と夕鈴の 朝から晩までのお話」

との事でございました。
またもやリクからは少々外れてしまっておりますが、どうかご容赦下さいませ。

楽しく書かせていただきました。
ありがとうございます!






《はるのひねもす》


「ん・・・」

小さく身じろぎして。
ふわりと漂う貴方の香を、聞く。

きちんと上を向いて眠る貴方の綺麗な鼻筋と。
私を掴んで離さぬ、腕。

___まあ、私が腕枕から頭を外さないのも悪いんだけど。

痺れちゃわないのかしら、右腕。

少し心配になる。
でも、この私だけの特権を棄てるのは、どうしても嫌で。

今朝も陛下の腕を枕にしたまま、目覚めた。

さらりと流れる黒髪をそっと避けて。
綺麗な額に口付ける。

滑らかな頬に、指の背を触れさせ。
ちゅ、と、小さく口づける。

この一時は、私だけの。
私だけの、陛下。




「・・・他にございますか?」

議場に響く、李順の低い声。
よく通るそれは、冷たいが、心地よく王宮広間に馴染む。

一斉に膝をつく臣下に、労いの言葉を述べ。
黎翔は早足で回廊を渡った。

「正妃と朝餉を。」

少し息を切らして後宮に現れた王を迎える侍女たちは、苦笑し。

「正妃様は、朝のご公務にあたられておられます。」

毎朝繰り返される恒例行事とも言うべき国王の来訪を、あしらう。

「______そう、か。」

今朝も少し肩を落として。
黎翔は自室へと戻る。




「陛下、御戻りなさいませ。」
「夕鈴っ!!」

自室に戻った黎翔を出迎えたのは、この国の正妃で。
夢でも見ているのかと頬を抓りかけた黎翔の手が、止まる。

「あれ?いい匂い。」
「ふふ、朝餉をお作りしたんです。今朝の祭事は始まりが早くて、時間が空いたんですよー。」

部屋から漂う、何ともいえぬ温かな空気と。
ぐぅ、と鳴る正直な腹が、笑いを誘い。

「陛下、そんなに急いで食べると火傷しちゃいますよ?!」
「大丈夫!火傷したら消毒してね、夕鈴。」
「し、しませんっ!!」

侍女たちは、そんな二人を微笑ましく見つめた。




「方淵。雪害の報告はまだか。」
「遅れまして申し訳ございません、こちらに。」

しゅ、と小気味良い音を立てて書簡が開かれ。
狼陛下の冷徹な目が、文字を追う。

「水月殿。花恵宴の進捗状況ですが。」
「李順殿、その件でしたら・・・」

政務室では常と変わりなく仕事が進み。
高く昇った日が、暖かな光で窓を彩った。

りん。

その小さな音色は、昼の合図。

しゃりん、と鳴る、飾り沓。
華奢な真白い足を包むそれに付けられた、小さな鈴は。
その名に鈴を持つ正妃に相応しい可憐な音色で、官吏たちに休息を運ぶ。

「陛下、正妃様のお越しにございます。」

ふっ、と微笑んだ李順は。
手元の書簡を手早く片付け、拝礼し。
方淵や水月及び官吏たちも、それに倣い。

「夕鈴、こちらへ。」

過分に艶を含んだ黎翔の、嬉しげな声と。

「あ、あの・・・昼餉を・・・」

恥らう、清楚な愛らしい声音に。

「・・・・」

視線を宙に漂わせた官吏たちは、頬を染めた。





「・・・きちゃん、お妃、ちゃん・・・」

____だあれ?
____まだ、ねむいの。

ぽかぽかと暖かい陽射しに包まれるように眠る夕鈴を、隠密は困ったように見つめる。

「無防備にも、程があるよー?」

あどけない寝顔に触れそうになる手を押さえ込んで。
浩大は落ちかけた夕鈴の上着を掛け直した。

四阿。

湖畔の四阿でお茶をする事を好む正妃を狙う輩は、多い。
物騒な者から、横恋慕まで。
多種多様な客が、この後宮を訪れる。

「饗応役は大変なんだぜ?」

浩大は小さく呟くと。

「・・・遅いよ、へーか。」

ようやく現れた、正妃の待ち人に。
小さく手を振り。

「触ってないからね?ね?」

背筋にぞわりとしたものを感じつつ、屋根の上に後退した。




「・・・で、こちらは世にも珍しい熊の手の!」
「はいはい、分かりました、老師。」

夕餉の時間。
今日も老師が張り切って仕度させた食事は、主に精力増強に長けていて。

_______普通のご飯が食べたい。

夕鈴は胸の内で愚痴を零した。

美味ではあるが、食べ慣れぬそれらは。
たまになら良いのだろうが、毎日ともなると苦行に近い。

空芯菜の炒め物。
揚げ餃子に水餃子。
湯気の立つスープと、冷たい蒸し鶏。
舌が焼けそうなとろとろの粥。

「・・・・普通のご飯が、食べたい。」

ようやく食事を終え、湯殿で独りきりになった夕鈴は。
無駄に広い湯船に浸かり、込み上げる吐き気を堪えて膝を抱えた。



_____痩せた。

湯煙に浮かび上がる白い背を見つめる黎翔の胸がちくりと痛む。

華奢な肩は掌にすっぽりと収まるほどで。
ほっそりした背は、片手で覆えそうだ。
頼りない首筋は、折れそうで。
それでもたわわに揺れる膨らみが、艶めかしい。

「・・・辛い、よね。」

自由に跳ねるべき兎を囲った自分を、悔いる。

「ごめんね、夕鈴。」

懺悔は、湯に溶けて。

「それでも・・・君が欲しいんだ。」

抑え切れず、渇望する。

ぱしゃん、と湯音を立てた黎翔が、妻を抱き締めた途端。

「______っ、ぐぅっ!」

驚きに目を見開いた夕鈴は、口元を押さえて蹲った。




「老師を呼べっ!正妃を寝台に運ぶ!すぐに侍医を!!」

矢継ぎ早に指示を出す黎翔の周りを、侍女たちがぱたぱたと動き回り。

「正妃様、正妃様っ!」

青褪めた彼女達は、それでも手早く正妃の身体を拭い、夜着を着せる。

「だ、大丈夫・・・ぐっ!」

何度も込み上げる吐き気を押さえ込み微笑む夕鈴は、痛々しく。

「辛かったら正直に言ってくれ、頼む!」

うろたえる夫の頬に、優しく手を触れさせた。

「へいか・・・お耳、を。」
「え?なあに?」

兎のぷっくりとした唇が、狼の耳に近付き。

「・・・赤ちゃん、できたみたい、です。」

秘め事を、紡ぐ。

「_______っ!」

しばし動きを止めた黎翔の頬が、ゆっくりと紅潮し。
大きな掌が、口元を覆い。
紅玉のような瞳が、潤み。

「・・・そう、か。」

腕の中の妻を、抱き締める。

「へ、い」
「夕鈴。」

胸の内が、震える。

この、喜びを。
この、愛しさを。

「なんと言えばいいのか・・・」

夕鈴。

「ありがとう、愛している。」

そう。
この言葉しか、見当たらない。

この、春の佳き日をくれた、君に。

「ありがとう・・・・愛している。」

繰り返し、繰り返し。

尽きる事なき感謝と愛を、捧げよう。

何度も。

何度でも。

C.O.M.M.E.N.T

いとおしい小編を有難うございました

暖かでいつも通りの、そのなかに溢れる愛情と、最後の小さな変化からもたらされた喜びを
有難うございました
とても素敵に仕上げてくださって嬉しいです。

2014/02/21 (Fri) 01:12 | おりざ #- | URL | 編集 | 返信

Re

おりざ様へ
リクエスト、有難うございました。
二人の一日、楽しく書かせて頂きました。
最後はなぜかこんな事に。
なんでかしら。←おい
お喜び頂けて、嬉しいです。
ありがとうございましたっ。
あさ

2014/02/21 (Fri) 20:10 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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