2014_01
27
(Mon)09:27

何処へ

おはようございます。
あさ、です。

更新もないのにお越し下さいまして、ありがとうございます!

休暇。
そろそろ終わらせたいと思います。

頂いたコメントの温かさに、元気を頂いております。
後ほど、ゆっくりお返事させて頂きますね。

本当に、ありがとうございます。







【設定・バイト終了】


《何処へ》


私達は、何処へ向うのだろう。
この先に、道はあるのだろうか。





宰相を始めとする、諸大臣。
文官武官、全ての臣下から。

声が、上がる。

国政が安定を見せ始めた、今。
正妃を迎えよ。
妃を。
世継ぎを。

白陽国の安泰の為、後宮を整えよ、と。

止む事なき声が、上がる。


「・・・私なら、大丈夫です。」

苦渋に満ちた表情の李順に向き合って、夕鈴は笑顔を作った。
泣きながら。

「分不相応な夢を見ただけですから。借金が終わったバイトが此処を去る。ただそれだけですから。」

桜色の頬に伝う雫は、透明で。
光を受け、煌く。

「貴女には、甘えてばかりですね。」

李順は視線を落とし。
足元を照らす曖昧な陽射しを見つめて。

「・・・しばらくの間、王都を離れて頂く事になります。」

顔を上げ。

「はい。分かってます。」

涙を止めた夕鈴は、鮮やかに笑った。







「・・・夕鈴は。」

書簡から目を逸らさず、黎翔は声を投げた。

「李順さんが手筈どおりに進めてる。」
「・・・そう、か。」

カタン。
らしくない音を立て。
浩大が舞い降りる。
怒りを帯びて。

床に着いた右手には、鞭。
左手には小刀。
主を見据える瞳の色は、獰猛で。

「ほんとに、やる気?」

道具が主に牙を剥く。

「・・・・他に、どうしろと?」

書簡に目を落としたまま、そう呟いた黎翔は。

「教えてくれ、浩大。」

震える手で、筆を取った。









「・・・こちらです。」

李順さんが連れて来てくれたのは、北辺に近い所にある綺麗な邸。
雪に覆われたお庭は、静かで。
人の気配なんて、ない。

大丈夫。
分かってるから。
知り過ぎたんでしょう?私。

安心して貰いたくて、笑った。

「素敵な所ですね。」
「・・・陛下の母君がお亡くなりになった邸です。」

李順さんの声が、震えていたけど。

「嬉しい、です。」

私は正直に心の内を伝えた。

「陛下のお母様がお亡くなりになった場所で、私も眠るのでしょう?」
「・・・。」

陛下が忘れられない、場所。
陛下に忘れられない、場所。

「ここで、なら・・・。嬉しい、です。」


怖いのは、陛下の邪魔になること。
辛いのは、陛下の心から私が消えること。
哀しいのは、役に立たない自分。


震える手で、李順さんが薬瓶を差し出す。

これなら、苦しまずに逝ける、と。
そう、言う。

「弟君やお父上の事は、私が。」
「ありがとうございます、李順さん。」

きゅっ、と音を立てて薬瓶の蓋を開いて。

「陛下に、『大好きです』って・・・」
「はい。必ずお伝え申し上げます_____お妃様。」

最後のお妃スマイルを浮かべて。

「ありがとうございます。」

私はそれを、一息に飲み干した。







蒼白な顔で、李順が戻った。

「・・・さすがに、今回は堪えました。」

力なく。

「大分、平和ボケしてしまっていたようです。」

自嘲する。

「・・・。」

声の出ない、私に。

「苦しまず、安らかに・・・お眠りあそばしました。」

跪いた李順が、厳かに言った。


『そうか。』


そう言った筈なのに、声は出ず。
罪なき者を殺める事など、初めてではないのに。
膝が震えて、立っていられず。
視界から色が消え。

________陛下。

夕鈴の声が、頭の中に響く。


私は、何をした。


ようやく出会えた、私の春を。
ようやく見つけた、温もりを。

殺したのか。

_______どこにいても味方です。

夕鈴。

_______大好きですよ!

私の、夕鈴。



「ああああああっ!!!!」

ようやく出た自分の声は、獣のようで。
その浅ましさに、愚かさに、吐き気を覚えた時には。
もう、脚が勝手に動いていた。

「お待ちください、陛下っ!!」

走り出した私を捕らえた、李順が。

「・・・こちらが、解毒薬にございます。陛下。」

淡い色の薬瓶を、差し出した。






馬を駆り、北へ向う。

昔決意を秘めて通り来た道を、遡る。

嫌われても、憎まれてもいい。
国に安寧を。

母のような妃は、作らぬ。
愛などいらぬ。

そう決めて、歩み来た道を。
遡る。


失えない。
何を捨てても、君だけは失えない。

君は許してくれるだろうか。

先の見えぬ道へ君を連れ去る、僕を。




「______夕、鈴。」


ひと気の無い邸内に明かりの灯る一室。
カタン、と扉を開けると同時に。

「どの面下げて来た。」

浩大の冷たい声と、撓る鞭が飛んだ。

「・・・。」


返す言葉など、ない。
愚かな私を、殺さば殺せ。


静かな紅い瞳が、浩大の動きを止め。

「・・・二度目は、ねえぞ。陛下。」

しゅる、と鞭が引かれた。


薬瓶を煽り、夕鈴に口付け。
ゆっくりと、流し込む。

昏睡に陥った身体は、くったりとしていて。
わずかに感じられる鼓動が、頼りない。

「・・・・っ。」

なかなか薬を飲み込もうとしない、夕鈴。
拒絶されているようで、手が震えた。

どうにか全て嚥下させ、頭を少し高くして寝台に寝かせて。
その隣に、身体を滑り込ませた。

明日の朝、目覚めたら。
何を言えば、いいのだろう。


深くため息をついて。
黎翔は夕鈴を抱き締めた。







あったかい。
陛下の香と、温もり。

気持ちよくて、起きたくない。
起きたら、夢は終わっちゃうもの。

バイトも終わって、借金も終わって。
陛下は本物のお妃様をお迎えになる。

だから、もう少し。
眠っていたかったのに。

「夕鈴っ!!」

陛下の大きな声で、目が覚めた。


見慣れぬ天井と、力の入らない体。
ぐるぐる歪む視界と、泣きそうな陛下のお顔。

動き始めた思考が、異常を告げた。

「わ、わたし・・・死んだんじゃ」
「ごめん、許してくれ!!」

痛いほどの力で私を抱き締める、陛下。

______陛下、泣いてる。

ああ、そうか。
陛下が私を助けてくれたのね。

「・・・ご迷惑、おかけしてすいません。」

邪魔なバイトを助けてくれる、優しい陛下。

「ありが_______っ!」

お礼を言いかけたら、何かに口を塞がれた。

「・・・っ!・・・・んっ!」

すごく近い、陛下の紅い瞳。
とっても、綺麗。

柔らかくて温かいものが私の唇を塞いで。
言葉も吐息も、からめとられる。

「・・・・はっ、」

ようやく開放された頃には、気を失いそうになってたけど。

「君を、愛している。」

陛下の言葉が、私を引き戻した。

「君と共に・・・この先へ進みたい。」

真摯な言葉と、強い光を宿した、瞳が。

「なんの保証もない未来へ君を連れ去る私を・・・許せ。」

陛下の覚悟を、私に伝えた。



私も。

もう、迷わない。


「愛しています、陛下。」

心からの、言葉を。

「貴方となら、何処までも。」

私の大切な。

「何処へでも。」

貴方に。

「私を連れて行って、陛下。」

捧げよう。


私の幸せは、貴方の幸せなのだから。

離れる事なんて、できないのだから。
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C.O.M.M.E.N.T

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