2014_01
17
(Fri)19:11

お別れ 8

こんばんは。
あさ、です。

「お別れ」。やっと終わりました。
お付き合い頂きましてありがとうございました。



【設定・色々捏造・バイト終了・恋人】
【オリキャラのお子様出ます←今頃注意書き】


《お別れ 8》




「陛下っ!!」

浩大の声を背に受け、弾かれたように駆け出し。

「清翔、来いっ!」

小さな体を抱き上げて、馬に飛び乗った。


草を掻き分ける風が道を示し。
主の意を汲んだ駿馬は草原を滑るように走り抜け。

「舌をかむぞ、喋るな。」

何事かを話そうとした清翔を制し。
黎翔はただひたすらに、馬を駆った。


夕鈴。
このまま別れる事など、許さぬ。











「ここなら、少しは安心だろ。」

几商店の持つ、小さな別宅。
長いこと使われていなかったその邸は、少し傷んでいたものの、不自由は無く。

「すぐに薬を煎じねばならん。外に見張りに立っておれ。」

几鍔を追い出した張元は、火をおこし、妃を診た。

穏やかな脈拍と、ようやく血の色をみせた唇。
健やかな寝顔は、臨時花嫁だった頃を思い起こさせる。


_______お菓子をこぼさないでくださいっ!

_______ああっ!そこは掃除したばかりなのにー!


生き生きとした、明るい瞳。
朗らかな、声音。

全てが、懐かしく。

「・・・随分と遠くまで来たものじゃな、掃除娘。」

ふっ、と小さく笑い。
張元は懐から取り出した薬を煎じ始めた。










_____薬の、においがする。


薄く目を開けると、見慣れぬ天上が映り。
夕鈴は首を傾げた。

殺された、って思ったのに。
どうして、生きているのかしら。

ぼうっとしたまま、起き上がると。

「目ぇ覚めたか。体の調子はどうだ?」

ちょうど部屋に入ってきた几鍔が心配げに夕鈴を見つめた。

「・・・うん、なんともない。大丈夫よ。」

少し間をおいて答えた夕鈴は、儚げに笑い。

「・・・っ。」

几鍔を言い知れぬ感情が襲う。


_______金貸しに用はないわよっ!!


いつも元気に俺に噛み付いてきた、アイツを。
こんなに、したのは。
アイツか。

「・・・珀黎翔。許さねぇ。」

「几鍔?」

訝しげに自分を見つめる夕鈴の背に、腕を回し。
小さくなってしまったその身体を、几鍔は抱き締めた。

「・・・どうしたのよ、几鍔。」

腕の中の幼馴染の温もりが、几鍔の心を決めさせる。

「全部、忘れて。全部忘れて、俺のとこに来い。」
「っ!」

ほっそりした、頼りない肩が。
びくっと震えるのと。
ほぼ、同時に。

「夕鈴っ!無事か?!」

扉が壊れそうな音を立てて。

「へい、か・・・」

黎翔が飛び込んできた。








几鍔おじさんと、父さま。

二人の間にいるのは、母さまで。
母さまを抱き締めた几鍔おじさんは、父さまを睨みつけていた。


「てめえが、コイツをこんなにしたんだ。」

おじさんの左目が、見たこともない色に変る。

「てめえなんかと、会わなければ・・・コイツはこんなに苦しまずに済んだ。」

怒っている。
几鍔叔父さんが、ものすごく怒っている。

なんとかしなきゃ。

「几鍔おじさんっ!」

前に出た、僕を。

「清翔、黙っていろ。」

押し留めた、父さまは。

「________几鍔。」

一歩前に出て。

「すまなかった。」

膝をついた。





痛いほどの力で私を抱き締める几鍔の腕が、一瞬震えたのが分かった。

陛下が膝をついて。
几鍔に頭を下げている。

「すまなかった。君の怒りは、当然だ。」

うな垂れる陛下の表情は、読めなくて。

「君のそばにいるほうが、夕鈴は幸せになれるのかもしれない。」

その言葉に、心臓が凍りついた。



腕の中の幼馴染が、カタカタと震えだす。

「・・・ああ。コイツは、俺といる方が幸せなはずだ。」

構わず言葉を紡ぐ。
ひゅっ、と小さく息を呑む音が胸元から聞こえる。

「清翔と、コイツ。今まで護ってきたのは、この俺だ。」
「・・・ああ、そうだな。」

下を向いた狼陛下の瞳は、前髪に隠されていて。
何を考えているのか読めないが。

それでも、几鍔は。

「お前にコイツを護る資格は、ねえんだよっ!!!」

声を張り上げた。

刹那。

パンッと几鍔の頬から高い音が響き。

「黙んなさいよっ!!!」

肩で息をした夕鈴が、睨みつけ。

「あんたに、陛下の何が分かるって言うのよっ!!!」

ドンッ、と几鍔の胸を拳で叩く。

「陛下は、陛下、は・・・・っ!!」

「ゆ、う・・・」

「あんたなんかが、逆立ちしたって叶わないほど・・・」

「・・・わかったから、もう・・・」

「優しくて、強い方なんだからっ!」

「もう、いい・・・夕鈴。」

ぼろぼろと泣きながら、几鍔の胸を叩き続ける夕鈴を。
俯いたまま立ち上がった黎翔が、優しく抱き締め。

「________ありがとう。」

少し顔を上げて。
気まずそうに顔を背けた几鍔に、言う。

「礼を言われる筋合いじゃねえよ。」

そう言って立ち上がった几鍔は。

「少しは素直になれよ、バカ女。」

黎翔の胸に顔を埋めて泣きじゃくる夕鈴の頭を、くしゃっと撫でて。

「じゃあな。」

部屋の扉を閉めた。









「あのさ、夕鈴。」

三ヵ月後。

黎翔は、不安げに瞳を曇らせ。

「ほら清翔、じっとして!」

息子の髪を直す妻を見下ろした。

「・・・・僕、大事な事を忘れてた。」
「なんですか?」

首を傾げた夕鈴の簪が、しゃらん、と涼やかな音を立て。
柔らかな風が、裾長に引いた衣装を優雅に弄ぶ。

「僕と、結婚してくれる?」
「っ!!」

頬を真っ赤に染めて固まった夕鈴を、愛しげに見つめ。

「・・・してくれるよね?」

柔らかな耳朶を食みながら、再度囁いた黎翔の耳に。

「もう、どこにも行きませんから・・・私を、妻にして下さいね、陛下。」

微かに震えながらも、しっかりとした声が届き。

「ありがとう。夕鈴。」

黎翔の手に、夕鈴の手が重なり。

「父上、まだ求婚なさってらっしゃらなかったのですか?」

少し呆れたような清翔の明るい笑い声が、そよ風に乗る。



もう、二度と。

お別れは、言わない。



「_______陛下、正妃様。太子様も・・・お時間にございます。」


立后並びに立太子の儀に臨む、親子を。

若草の香りがする風が、柔らかく包んだ。

C.O.M.M.E.N.T

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2014/01/17 (Fri) 21:24 | # | | 編集 | 返信

澪さまへ

嬉しいコメントを、ありがとうございます。
また、頑張りますね!

2014/01/18 (Sat) 15:41 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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