2013_11
19
(Tue)21:49

枯渇9

【9巻未収録のネタバレを含みます。】
【基本的に、捏造の塊です。】
【オリキャラも出るかもしれません】
【臨時花嫁です】


《枯渇 9》



「あ、あの、蘭瑶様っ!」

「身内ばかりを集めた小規模な宴ですわ。ご安心なさって?」

「いえ、あのっ!そうではなくて・・・・っ」


夕鈴に言葉を紡ぐ隙を与えず、蘭瑶は優雅に裾をさばき、宴の間に向う。


___________とにかく、このままじゃ・・・

陛下の、ご迷惑になる。


夕鈴は、自分を取り囲んだ侍女たちに押し出されるように進む足を、無理矢理止めて。


「話を聞いて下さいっ!!!」


叫んだ。


「・・・・夕鈴、さま?」


後宮の妃というものは。

蝶よ花よと育てられた、深窓の姫君にして。

相手に隙を与えぬだけの器量を持つ、毒花。

立ち居振る舞いから諸作法に至るまで全てが完璧であらねばならず。

人前で大声を出すなどということは。

まず、ない。

絶対に、ない。


なのに、この『妃』は・・・・・


「蘭瑶様。私は陛下がどれほど頑張っていらっしゃるかをご理解頂きたくて、おかしな噂を信じて頂きたくなくて、ここに残ると申し上げたんです。・・・宴に出る為では、ございません。」


声を張り上げ、足を止め。

真っ直ぐに目を見つめてくる。


『_______お妃様。』


同じように強い目で、自分を見つめた舞姫と。

「陛下は立派な方です。お会いになれば分かります。」

目の前の妃が、重なった。







「・・・・私も甘く見られたものだ。」

黎翔は薄く笑い、一歩間合いを詰める。

じりじりと足を下げ、浩大と克右は左右に退き。

確率に賭けた。

__________一方が斬られている間に、この場から・・・


「逃げられるとでも、思ったか?」

「「っ!いいえっ!!」」

するりと間合いを詰めた黎翔と、真顔の李順が、二人を捕らえた。



「________で?『花』をよこせと言われて、そのまま帰ってきたのか?」

紅い瞳が鮮やかに笑い。

「・・・子どもの使いですか?」

李順の口調に棘が混ざり。

「・・・・。」

蒼白の克右と浩大を、見やる。


_________このままでは、埒が明きませんね。


すっ、と顔を上げた李順は。


「陛下。念のため確認させて頂きますが・・・下賜をなさるおつもりは」

「死にたいか、李順。」

「いえ。」

狼の怒りを煽り。


__________夕鈴を下賜せよ、だと?


何が目的だ、蘭瑶。



剣を握り締めた、黎翔は。

無言で扉へ向った。








蘭瑶は、動きを止め。

夕鈴を凝視した。

__________違う。あの人じゃ、ない。


自分に言い聞かせた、その時。


「・・・・何をなさっておいでですか、母上。」

「っ!!」


気配を消して現れた晏流公が。


「・・・大人しくしていないと、貴女が『誰』かを、ここにいる者たちに・・・・」

__________知らしめますよ?


夕鈴に、囁いた。


「そ、それは・・・」

「私は一向に構いません。______陛下の寵妃を御下賜頂けるなど、身に余る光栄ですからね。」

にこりと微笑む公の顔には、邪気がなく。

「・・・・え?」

見覚えのある笑顔に、夕鈴は戸惑い。

「・・・大人しく、私の寵姫を演じて下さい。」

そんな夕鈴を抱き上げた晏流公は。

宴の間へと、歩を進めた。



公の登場に、人で溢れた広間がざわつく。

あらかじめ知らされていたのであろう、寵姫の登場に。

その顔を一目見ようと、好奇の視線が降り注ぐ。


公に抱かかえられたままの、夕鈴は。

__________扇がないっ!

顔を隠す術もなく。

自らの袖で顔を覆うことしかできぬまま、身動きも出来ずに公に抱かれ続け。


愛らしい兎を手中に収めた、晏流公は。

満足気な笑みを浮かべた。


_________顔を見せるわけにはいかないっ!

もし、もしも。

私が陛下の妃だと、ばれたら。

・・・偽妃だけど、それでも、もし、ばれたら。

きっと。

陛下のために・・・・ならない、の、かしら?


ふと、何かがよぎる。


もし、『後宮の悪女』が晏流公に下げ渡されたと、知れれば。

陛下が悪女に愛想をつかした、目を覚ました、と・・・思われる?

ひょっとすると、それは。

陛下にとって。

___________良い事?

私、は・・・『後宮の悪女』は。

消えた方が。

___________陛下のため?


血が一気に下がっていくような感覚に襲われた、夕鈴は。

歪む視界の中。

晏流公の腕に、身を任せた。




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C.O.M.M.E.N.T

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