2013_11
18
(Mon)13:14

枯渇8

こんにちは。
あさ、です。

今回の続き物も、予定より長くなってしまってます。
さて、どうなることやら。←


【9巻未収録のネタバレを含みます。】
【基本的に、捏造の塊です。】
【オリキャラも出るかもしれません】
【臨時花嫁です】


《枯渇 8》



『兎』を気に入ったらしい息子に、満足し。
蘭瑶はくすりと笑う。

「愛らしい方でしょう?」

晏流公の紅い瞳が、夕鈴を見据え。

「ええ、さすがは______狼陛下の唯一、と言ったところでしょうか。」

長い腕を伸ばして、夕鈴の髪を一房、捕らえる。

「え?!な、な・・・・・!」

口をぱくぱくさせて驚き慌てる夕鈴を他所に。

「こんな形でお会いする事になってしまって・・・・本当に、ごめんなさいね?」

困ったように眉を下げた蘭瑶は、少しも悪びれずに謝罪した。

「母上は気短で。少々無理をするのですよ・・・夕鈴殿、申し訳ない。」

黎翔と同じ声と、仕草で。
晏流公は夕鈴の髪に、口付けた。

愛しげに。

「_______っ!」

ぞわり、と嫌悪感が夕鈴を襲い。

「や、止めて下さいっ!」

反射的に、後退さる。
だが、公の動きは兎を凌ぎ。

「っ!」

ぐい、と手首を捕まれ。

「いやっ!!」

晏流公の胸が、夕鈴を受け止めた。

「・・・柔らかいな。」

夕鈴の肩や背を、公の手が這い。

「________っ!いやあああっ!!」

今度こそ、悲鳴を上げた夕鈴を。

「・・・え?」

目を丸くした晏流公が見下ろした。

「は、離して下さいっ!触らないでっ!!」

「え?えっと・・・嫌、なの?」

腕の中で暴れる兎に戸惑う晏流公と、涙目で怒る夕鈴。
二人を見やる、蘭瑶は。

「・・・・初々しい『お妃様』だこと。」

ふっ、と笑み。
くるりと振り返ると。

「そちらの軍人さんに隠密さん。降りていらっしゃいな。お茶に致しましょう?」

樹上の浩大と克右に、声を投げた。





「・・・お妃様がどんな方か、知りたかっただけ、なのよ。」

優雅に茶杯を口に運びながら、蘭瑶は浩大と克右に話しかけた。

「________陛下についても、でしょう?」

「そんなに怖い顔をなさらなくても、お妃様は、いずれお返しするわ。」

自分を睨みつける克右をやり過ごし、蘭瑶はくすくすと笑う。

「・・・『いずれ』じゃダメなんだよね。俺も命が惜しいからさ。」

にぱっと笑う浩大に、蘭瑶の笑みが消え。

「_________では、陛下にお伝え頂ける?」

立ち上がり。

「『花』を御下賜下さいませ、と。」

言い置いて、邸の中に消えた。


「・・・・これは、本気で。」

「・・・・まずい、かもな。」


克右と浩大の呟きは、空気に溶けた。





________私と同じ苦しみを味わうといい。

侍女たちに着付けられる夕鈴に優しく微笑みながら。
蘭瑶は思う。

『______妃よ。』

私を決して見なかった、あの方の。

『・・・すまない。』

私を通して北へ逃がした舞姫を見続けた、あの方の。
あの方の心を捕らえ続けた、あの美しい人の________息子。

何度名を呼び違えられたか。

ふとした瞬間に。
閨の中で。

その度に、思い知らされた。

___________私は、愛されていないのだ、と。


「よくお似合いですわ、夕鈴様。」

『狼陛下』が愛して止まぬ、唯一の妃。
彼女の命を奪ってはならない。
死者は、永遠に心の中で生き続けるから。

「髪は・・・そうね、もう少し華やかに・・・」

愛しい者に触れることの出来ぬ苦しみを。
見てはもらえぬ苦しみを。
どれほど焦がれようが振り返ってもらえぬ、苦悩を。

私と同じ、苦しみを。

「・・・・・・知れば、いい。」

「蘭瑶さま?」

「なんでもございませんわ。・・・さ、夕鈴様。参りましょう。」

「え?」

「歓迎の宴をご準備しておりますの。」

「え、ちょっと、まっ・・・こ、困りますっ!!」

「こちらへ。」


夕鈴は、成す術もなく。
公が待つ宴の間へと向った。



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C.O.M.M.E.N.T

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