2013_10
31
(Thu)22:54

おわり 4

さて。

早く終わりたいのですが、そうも参りません。

暗い話は、苦手です。

ああ、芙蓉(オリキャラ)が書きたい。




【設定・バイト終了】


《おわり 4》



「・・・・・う・・・・」


声が出ない事に驚いた。

随分ゆっくりと眠った気がするから、そのせいだろうか。

水を飲まなきゃ。

起き上がろうとした自分が。


「夕鈴っ!!」


信じられないほどの力で、抱き締められた。


「夕鈴、夕鈴・・・・・っ!」


痛い。

ぎゅうぎゅうと抱き締められて、息が苦しくて、痛い。


やめて、と言いたいのに、枯れてしまった喉から出るのは、呻き声だけで。

無理矢理声を出そうとしたら、咳き込んでしまった。


「ぐっ・・・げほっ・・・・ごほっ!」

「ご、ごめん、大丈夫?」

「ぐっ・・・み、ず・・・・・」

「ゆっくり飲んでね?」


差し出された水椀を、言われた通りゆっくりと飲み干して。

夕鈴は自分を取り巻く状況の胡乱さに気付いた。

涙ぐんでいる侍女たち。

真剣な顔で脈を測り出す老師。

ものすごく疲れ果てた顔の李順さんと。

窓の外で手を振っている、浩大。


それに。


陛下が。

泣いてる。


___________何があったのかしら?


そう思った瞬間。



『楽しませて頂きますよ?』



男達の身の毛もよだつ様な声が、聞こえた。







腕の中の夕鈴が冷えていくのを感じた。

カタカタと、小さく震えて。


「あ・・・・あ・・・・」


叫びだしそうになるのを必死に堪えているのが、分かった。


「_______人払いを。」


即座に侍女たちを下げるよう、老師に目配せをする。


「お妃様が落ち着かれるまで、少し下がっておるが良い。」


老師の穏やかな口調に安堵した侍女たちは、涙を拭いながら退出し。

扉の外には、李順が見張りに立った。


「・・・夕鈴、大丈夫だからね?何もなかったんだからね?」

「は、はい・・・・は、い・・・」


ガタガタと震えながら、それでも気丈に返事をしてくれる夕鈴の身体は、氷のように冷たくて。

宙を彷徨う瞳が、僕の不安を煽る。


消えないで。

いなくならないで。


今にも自らの呼吸を止めてしまいそうな、夕鈴。

僕の唯一人の、愛しい妃。


「__________僕が守る。どこにも行かせない。」


口をついて出た言葉が。

夕鈴の肩を震わせた。








「__________僕が守る。どこにも行かせない。」


こんな私に、価値はあるの?

陛下が守るほどの価値が、あるの?


________穢れた、下賎な妃。


男達の手の感触が。

身の毛もよだつ言葉が。

私を壊す。


いなくなれ、と。

消えてしまえ、と。


唆す。


私なんて居ない方がいい。

狼陛下の花嫁になるのは、私なんかじゃない。


もっと、ずっと___________


私は、邪魔。

私は、要らない。


陛下を穢す妃なんて、要らない。


我知らず、手が動き。

陛下の佩く剣に手が伸び。



消してしまえばいい。


泥炭のように纏わりつく暗い思考が、夕鈴を満たした。







扉を細く開けて、中の様子を伺う。

陛下に抱き締められたままの夕鈴殿は、遠目にも分かるほどに震えていて。

明るく輝いていたはずの茶色の瞳は、何も映しておらず。

ただ、宙を彷徨い。


これが夕鈴殿か、と。

李順は目を見張った。


全てを諦めたような、沈み込むような、目。


危ない。


李順がそう思った時。


白くて細い手が、ゆっくりと陛下の腰に伸び。

___________柄を、握る。


考えるより先に、身体が動き。

李順は、扉が壊れるほどの勢いで室内に飛び込んだ。


「夕鈴殿っ!!何を考えておいでですか、情けないっ!!」


「っ!」


状況を理解した黎翔が、夕鈴の手首を抑え込み。


「・・・消えたい、の。」


虚ろな夕鈴を。

空っぽになった夕鈴の唇を、塞いだ。


満たすように。



目を見開いたまま、王を受け入れる、夕鈴と。

睨みつける様に妃を見つめる黎翔の、姿は。


この世のものでは、ない様で。


交わるはずのない、月と太陽が。

添えぬはずの、花と雪が。

重なることのない、春と冬が。


___________繫がる、様を。


李順は、目の当たりにした。




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C.O.M.M.E.N.T

あさ様。

マジで。ヤバい。
悔しいくらいに格好いい。
私もこんなSSを書けるようになりたい。
清々しいくらいに、完敗です。
素敵です。

2013/10/31 (Thu) 23:10 | 羽梨 #- | URL | 編集 | 返信

Re

完敗は、私の方です。
色々と、羽梨さまに完敗です。
そもそも、手を離さずに消えようなどと、無茶な事を考えた私がバカでした。
このSS。
褒めて頂けて、嬉しいです。

2013/11/01 (Fri) 00:03 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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