おわり 4
さて。
早く終わりたいのですが、そうも参りません。
暗い話は、苦手です。
ああ、芙蓉(オリキャラ)が書きたい。
【設定・バイト終了】
《おわり 4》
「・・・・・う・・・・」
声が出ない事に驚いた。
随分ゆっくりと眠った気がするから、そのせいだろうか。
水を飲まなきゃ。
起き上がろうとした自分が。
「夕鈴っ!!」
信じられないほどの力で、抱き締められた。
「夕鈴、夕鈴・・・・・っ!」
痛い。
ぎゅうぎゅうと抱き締められて、息が苦しくて、痛い。
やめて、と言いたいのに、枯れてしまった喉から出るのは、呻き声だけで。
無理矢理声を出そうとしたら、咳き込んでしまった。
「ぐっ・・・げほっ・・・・ごほっ!」
「ご、ごめん、大丈夫?」
「ぐっ・・・み、ず・・・・・」
「ゆっくり飲んでね?」
差し出された水椀を、言われた通りゆっくりと飲み干して。
夕鈴は自分を取り巻く状況の胡乱さに気付いた。
涙ぐんでいる侍女たち。
真剣な顔で脈を測り出す老師。
ものすごく疲れ果てた顔の李順さんと。
窓の外で手を振っている、浩大。
それに。
陛下が。
泣いてる。
___________何があったのかしら?
そう思った瞬間。
『楽しませて頂きますよ?』
男達の身の毛もよだつ様な声が、聞こえた。
腕の中の夕鈴が冷えていくのを感じた。
カタカタと、小さく震えて。
「あ・・・・あ・・・・」
叫びだしそうになるのを必死に堪えているのが、分かった。
「_______人払いを。」
即座に侍女たちを下げるよう、老師に目配せをする。
「お妃様が落ち着かれるまで、少し下がっておるが良い。」
老師の穏やかな口調に安堵した侍女たちは、涙を拭いながら退出し。
扉の外には、李順が見張りに立った。
「・・・夕鈴、大丈夫だからね?何もなかったんだからね?」
「は、はい・・・・は、い・・・」
ガタガタと震えながら、それでも気丈に返事をしてくれる夕鈴の身体は、氷のように冷たくて。
宙を彷徨う瞳が、僕の不安を煽る。
消えないで。
いなくならないで。
今にも自らの呼吸を止めてしまいそうな、夕鈴。
僕の唯一人の、愛しい妃。
「__________僕が守る。どこにも行かせない。」
口をついて出た言葉が。
夕鈴の肩を震わせた。
「__________僕が守る。どこにも行かせない。」
こんな私に、価値はあるの?
陛下が守るほどの価値が、あるの?
________穢れた、下賎な妃。
男達の手の感触が。
身の毛もよだつ言葉が。
私を壊す。
いなくなれ、と。
消えてしまえ、と。
唆す。
私なんて居ない方がいい。
狼陛下の花嫁になるのは、私なんかじゃない。
もっと、ずっと___________
私は、邪魔。
私は、要らない。
陛下を穢す妃なんて、要らない。
我知らず、手が動き。
陛下の佩く剣に手が伸び。
消してしまえばいい。
泥炭のように纏わりつく暗い思考が、夕鈴を満たした。
扉を細く開けて、中の様子を伺う。
陛下に抱き締められたままの夕鈴殿は、遠目にも分かるほどに震えていて。
明るく輝いていたはずの茶色の瞳は、何も映しておらず。
ただ、宙を彷徨い。
これが夕鈴殿か、と。
李順は目を見張った。
全てを諦めたような、沈み込むような、目。
危ない。
李順がそう思った時。
白くて細い手が、ゆっくりと陛下の腰に伸び。
___________柄を、握る。
考えるより先に、身体が動き。
李順は、扉が壊れるほどの勢いで室内に飛び込んだ。
「夕鈴殿っ!!何を考えておいでですか、情けないっ!!」
「っ!」
状況を理解した黎翔が、夕鈴の手首を抑え込み。
「・・・消えたい、の。」
虚ろな夕鈴を。
空っぽになった夕鈴の唇を、塞いだ。
満たすように。
目を見開いたまま、王を受け入れる、夕鈴と。
睨みつける様に妃を見つめる黎翔の、姿は。
この世のものでは、ない様で。
交わるはずのない、月と太陽が。
添えぬはずの、花と雪が。
重なることのない、春と冬が。
___________繫がる、様を。
李順は、目の当たりにした。
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早く終わりたいのですが、そうも参りません。
暗い話は、苦手です。
ああ、芙蓉(オリキャラ)が書きたい。
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《おわり 4》
「・・・・・う・・・・」
声が出ない事に驚いた。
随分ゆっくりと眠った気がするから、そのせいだろうか。
水を飲まなきゃ。
起き上がろうとした自分が。
「夕鈴っ!!」
信じられないほどの力で、抱き締められた。
「夕鈴、夕鈴・・・・・っ!」
痛い。
ぎゅうぎゅうと抱き締められて、息が苦しくて、痛い。
やめて、と言いたいのに、枯れてしまった喉から出るのは、呻き声だけで。
無理矢理声を出そうとしたら、咳き込んでしまった。
「ぐっ・・・げほっ・・・・ごほっ!」
「ご、ごめん、大丈夫?」
「ぐっ・・・み、ず・・・・・」
「ゆっくり飲んでね?」
差し出された水椀を、言われた通りゆっくりと飲み干して。
夕鈴は自分を取り巻く状況の胡乱さに気付いた。
涙ぐんでいる侍女たち。
真剣な顔で脈を測り出す老師。
ものすごく疲れ果てた顔の李順さんと。
窓の外で手を振っている、浩大。
それに。
陛下が。
泣いてる。
___________何があったのかしら?
そう思った瞬間。
『楽しませて頂きますよ?』
男達の身の毛もよだつ様な声が、聞こえた。
腕の中の夕鈴が冷えていくのを感じた。
カタカタと、小さく震えて。
「あ・・・・あ・・・・」
叫びだしそうになるのを必死に堪えているのが、分かった。
「_______人払いを。」
即座に侍女たちを下げるよう、老師に目配せをする。
「お妃様が落ち着かれるまで、少し下がっておるが良い。」
老師の穏やかな口調に安堵した侍女たちは、涙を拭いながら退出し。
扉の外には、李順が見張りに立った。
「・・・夕鈴、大丈夫だからね?何もなかったんだからね?」
「は、はい・・・・は、い・・・」
ガタガタと震えながら、それでも気丈に返事をしてくれる夕鈴の身体は、氷のように冷たくて。
宙を彷徨う瞳が、僕の不安を煽る。
消えないで。
いなくならないで。
今にも自らの呼吸を止めてしまいそうな、夕鈴。
僕の唯一人の、愛しい妃。
「__________僕が守る。どこにも行かせない。」
口をついて出た言葉が。
夕鈴の肩を震わせた。
「__________僕が守る。どこにも行かせない。」
こんな私に、価値はあるの?
陛下が守るほどの価値が、あるの?
________穢れた、下賎な妃。
男達の手の感触が。
身の毛もよだつ言葉が。
私を壊す。
いなくなれ、と。
消えてしまえ、と。
唆す。
私なんて居ない方がいい。
狼陛下の花嫁になるのは、私なんかじゃない。
もっと、ずっと___________
私は、邪魔。
私は、要らない。
陛下を穢す妃なんて、要らない。
我知らず、手が動き。
陛下の佩く剣に手が伸び。
消してしまえばいい。
泥炭のように纏わりつく暗い思考が、夕鈴を満たした。
扉を細く開けて、中の様子を伺う。
陛下に抱き締められたままの夕鈴殿は、遠目にも分かるほどに震えていて。
明るく輝いていたはずの茶色の瞳は、何も映しておらず。
ただ、宙を彷徨い。
これが夕鈴殿か、と。
李順は目を見張った。
全てを諦めたような、沈み込むような、目。
危ない。
李順がそう思った時。
白くて細い手が、ゆっくりと陛下の腰に伸び。
___________柄を、握る。
考えるより先に、身体が動き。
李順は、扉が壊れるほどの勢いで室内に飛び込んだ。
「夕鈴殿っ!!何を考えておいでですか、情けないっ!!」
「っ!」
状況を理解した黎翔が、夕鈴の手首を抑え込み。
「・・・消えたい、の。」
虚ろな夕鈴を。
空っぽになった夕鈴の唇を、塞いだ。
満たすように。
目を見開いたまま、王を受け入れる、夕鈴と。
睨みつける様に妃を見つめる黎翔の、姿は。
この世のものでは、ない様で。
交わるはずのない、月と太陽が。
添えぬはずの、花と雪が。
重なることのない、春と冬が。
___________繫がる、様を。
李順は、目の当たりにした。
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