2013_10
16
(Wed)21:28

願春

こんばんは。
あさ、です。

このSSは、「台詞なし」というお題に挑戦したものです。

難しかったです。


へもへも師匠は、素晴らしいと思います。

私には、これが限界です。


またいつか挑戦してみたいと思います。

ちなみに、SNSにUPさせて頂いたSSの、転載となります。



【設定・原作沿い】



《願春》




秋晴れ。

そう呼ぶに相応しい、晴天の下。

白陽国国王・珀黎翔は、閲兵式に臨んでいた。



一糸乱れぬ行軍と、剣技。

将軍達の厳しい表情と、漂う緊迫感に。

黎翔は、今日の閲兵が意味のある事だったと知る。



狼陛下。

戦場の鬼神。

まるで戦の申し子のような、王。

其を王たるべく支えてきた、彼ら。

軍部寄りの王と呼ばれることに危機感を抱いた側近の判断により、暫く行われなかった、閲兵式。

久しぶりのそれは、兵の士気を鼓舞し。

将軍達の不満を晴らす、格好の場となっていた。





実践を重んじる今の白陽国において、見せ掛けの気迫などは、到底許されるものではなく。


_____________殺るか、殺られるか。


その境を見据えているか、いないのか。

『閲兵』では、それを試される。


東西南北及び中央を統べる、諸将は。

目を血走らせ、肩を怒らせ。

唇を震わせて、己が兵を見守り。


黎翔は、その光景を微動だにせず、見守る。

据えられた玉座に、座る事すらせず。

平服のまま、いつも腰に佩いている細身の剣を、右手に持ち。

____________薄く、笑みを滲ませて。


ただ、静かに、見守る。


そして、閲兵式の為に選抜に選抜を重ねられた、精鋭達は。

彼らの主である、『狼陛下』を目の当たりにし。


ある者は、驚きに目を見開き。

ある者は、頭を垂れ。

ある者、は____________真っ直ぐに、前を見つめるのだ。




立ち尽くす黎翔の傍らで。

李順は、いつも通りの表情で、筆を走らせた。


どの、兵なのか。

どの兵が、こちらを見つめ返したか。

どの兵か、心からの恭順を見せたか。


そして。

それを。


______________どの将軍が、どのような顔で、見ていたのか。




内乱を鎮める時には。

どうあっても、将軍達の力が必要だった。


荒れつつある、国土。

破綻した、国庫。

民の心は、荒れ。

王都ですら、殺伐としていた。


なりふり構ってなど、いられなかった。

使える物は、なんでも使い。

要らなくなれば、捨てる。


すべては、この国の為に。


ただ、それだけ。

それだけだった、あの頃。




戻りたい、などとは。

口が裂けても、言いたくない。


だが。


兵の鍛錬は、国の為に必要不可欠であり。

将軍達は、その要であり。


『狼陛下』は、その中心である。




あと、どれほどの時がかかるのだろうか。

この国が、穏やかな国に変るまで。

この国が、花を愛で、楽を楽しみ。

季節を愛しむように、なるまで。



薄く、黎翔は笑い。

李順は、静かに俯き。

方淵は、ただひたすらに、前を見つめ。

水月は、表情を変えず、彼方を見やる。



秋風に乗って、微かに、届く。

ほの甘い香りを、利きながら。



ようやく咲いた一輪の花が、放つ。

春を呼ぶ香を、利きながら。




ただ、静かに。

その時を、待つ。

C.O.M.M.E.N.T

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