2013_10
15
(Tue)09:44

逃兎

お久しぶりです!

すいません、ちょっと時間無くて、一発書きです!

間違いなどは後から修正しますっ!!


ぎゃー!時間ないっ!!


ではでは!!








【設定・原作沿い】



《逃兎》




ちりっとした気配を感じた。

いや、気配というより、『予兆』にも似た何かを、感じた。


浅い眠りを破るには充分な、それに。

黎翔は小さく悪態をつき、身を起こす。


国王の寝台は、無駄に広く。

妃を数人侍らせても充分なほどだ。


だが、今後宮にいる妃は、唯一人。

自らを「バイト」と言い切る、愛しい妃が唯一人。


「っ!」


先ほど感じた嫌な、何か。

再びそれを感じた、黎翔は。


下町に里帰りしている妃の身を、案じた。









前夜。

夕鈴は久しぶりの実家で、綺麗に円を描く月を見上げていた。


父さんの友人の、息子さん。

昔よく一緒に遊んだ、圭お兄ちゃん。

面倒見が良くて、人気者で。

私は圭お兄ちゃんが、大好きで。

遠くに行ってしまうと聞いた時は、声を上げて泣いたっけ。


『また会えるわよ、夕鈴。』


泣かないで?と、私の頭を撫でてくれた母さん。


ふふ、本当ね。

また会える。


見合い相手として、だけど。






『借金は、終わっております。』


里帰りをお願いしたとき、李順さんに言われた。


『勝手に調べさせて頂きましたが・・・お父上が、縁談を。』

『こちらでも、できるかぎりの援助はさせて頂きます。貴女と御夫君となられる方を、護らせて頂きます。』



矢継ぎ早に繰り出される、李順さんの言葉に。

私は、どうしたらいいのか、分からなくて。


ただ、立ち尽くした。


陛下。

陛下と、もう、会えない。


ただそれだけが、ぐるぐると頭の中を回った。




借金は、もうなくて。

私は、嫁ぐことが出来て。

もういい、と、李順さんは言う。


そう、か。

もう、いいのね。


妙に冷静な自分が呟く。



『夕鈴殿。・・・無理強いは、したくありません。』


遠くから聞こえる、李順さんの言葉。


『貴女を、正妃にと。どうあっても、正妃に、と。陛下は強くお望みです。』


思わず唇を噛み締める。


__________陛下。それは、だめです。


自分が囁く。


『私も、貴女を正妃に、と・・・・思わなくも、ないのですが。』


李順さんまで。

何を言ってるの?


『無理強いは、したくないのです。貴女の選択を、私は良しとします。』


そんなの、決まってるじゃないですか。

私じゃ、陛下の正妃には_________


『三日後。三日後、見合いを終えて帰宮した時・・・・お返事を、賜りたく。』


跪き、礼を取る李順さん。


本気なんだ、って分かった。



即答は、できなかった。


私が正妃にふさわしくない事なんて、分かりきっているのに。


それでも、私を望んでくれる、陛下に。

それでも、私を認めてくれる、李順さんに。


申し訳なくて、できなかった。



三日後。

言うべき言葉は、もう決まっている。


「ごめんなさい。陛下。」


月に向って、囁く。



さあ。

覚悟を、決めなきゃ。


陛下から逃げる、覚悟を。


月明かりを浴びて笑む、夕鈴に。

迷いはなかった。









翌朝、王宮。



「李順。朝議が終わったら、私は休暇だ。」


朝から最高潮に不機嫌なオーラを撒き散らし。

黎翔は李順に言い放った。


「・・・はいはい。分かりましたよ。お手柔らかに、願います。」


もう全てを諦めたような顔で、李順は呟き。

下町に潜む、兎を思う。


唇を噛み締め、心を殺した、あの方は。

いつも、陛下のためだけを、思う。

どこにいても、どんな時も。

あの方は、いつも陛下を優先なさる。

それは、稀有な資質。



私は。

狼を心から愛せる、類稀なる、兎に。

最後の逃げ道を、差し上げた。

今なら、間に合うから。


見合い相手は、夕鈴殿を大切にするだろう。

幼い頃からの想い人を、妻にするため。

必死に勉学に励み、中央に帰ってきた秀才だ。


後宮で暮らすより。

もっと、ずっと、幸せな未来が。

夕鈴殿には、ある。



___________陛下。


澄んだ空を見上げ、李順は思う。


それでも、兎を捕まえる覚悟は・・・・おありですか?



愚問と知りながら、問いかけた。










下町。

料亭。


「圭お兄ちゃん!」

「夕鈴ちゃん!よかった!遅くなっちゃったから、もうダメかと思った!!」


見合いの席ではあるが、両家共に既に打ち解けた間柄。

会は、和やかに始まった。


「夕鈴ちゃんをお嫁さんにするために頑張ったんだよ?」


そう言って笑う、圭お兄ちゃんは。

とても素敵になっていて。

高い背と、広い肩と、長い指が。


誰かを、思い起こさせる。



「昔、夕鈴ちゃんが迷子になってさー・・・」


朗らかに話す、その声音は。

低く、心地よく響いて。


「僕のお嫁さんに、なってくれるかなぁ・・・」


不安げに私を見つめる瞳は、柔らかい光を湛えていて。




へいか



正直な私が、泣く。



だめ



冷静な私が、留め。


身動きが出来なくなった、「わたし」は。

ただ、微笑む事しか、出来なくて。



「夕鈴?どうした?」


父さんが心配そうに私を覗き込むけど。

動けない。


「夕鈴ちゃん?大丈夫?びっくりした?」


圭お兄ちゃんが、私の頬に手を伸ばした、その時。



「___________失礼する。」


狼陛下の声で。

正装した陛下が、現れた。





「なんで?!」



もう、硬直も何もない。

下町の料亭の狭い部屋に、なんで国王陛下が正装でお出ましなのか。

なんで、李順さんまでしれっとした顔で付き従っているのか。

なんで、浩大は嬉しそうなのか。


もう、何を考えているのか、この人たちは!!



「陛下!!いい加減にして下さい!!!」



気付いたら、大声で怒鳴りつけていた。











「・・・もう、逃げようなんて思わない、から・・・」


問答無用で連れ戻された、王宮の。

無駄に広い陛下の寝台で。

夕鈴は、心から後悔していた。


「だめ。まだ安心できない。」


嬉しげに宣言する、黎翔は。

おずおずと腕を差し出す夕鈴を。

愛しげに、包み込む。


「僕のためを思うなら・・・・何があっても、側にいてね?」


狼は残酷な願いを口にして。

兎を、捕らえ。


「私のためを、思うなら・・・・何があっても、離さないで?」


兎は、優しい願いを口にして。

狼を、捕らえる。



逃げる兎は、狼の手の内に。

捕らえる狼は、兎の手の内に。



逃げた先は、互いの、手。

C.O.M.M.E.N.T

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2013/10/16 (Wed) 00:08 | # | | 編集 | 返信

おりざ様へ

そうです。
無駄に広いですからね。
きちんと活用しないと!!←

2013/10/16 (Wed) 13:17 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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