2013_10
11
(Fri)10:44

いつか 4

おはようございます。

あさ、です。

暗いシーンばかり続く、「いつか」ですが。

ようやくお話が動きました。(他力本願)


所用のため、今日を逃すと更新は週明けになりますので。

今日中に終わらせたいと、終わらせたい、と。

・・・・思っては、いるんですよ?







【設定・臨時花嫁】


《いつか 4》




時は、悲しみを癒し。

時は、痛みを薄れさせる。


私はそれを良く知っている。

母さんがいなくなった時、『そう』だったから。



後宮の庭から見上げる、月は。

冴え冴えとして、美しく。

下町から見上げた時よりも、儚げに見えた。



深夜。

目覚めてしまった夕鈴は、階を降り。

さくっ、と、草を踏む音を立てながら、内庭を進み。

月を見上げて、歩き続けた。



___________いつか。


ううん。

その内、きっと来るはずの、陛下とのお別れの時。


突然のお別れは、胸が潰れてしまうけれど。

しっかりと分かってさえいれば、笑顔でお別れできる。


「・・・・ばか、ね。」


思った以上に苦しい自分の心を、叱る。


「こんな日が、いつかは来るって・・・知っていたでしょう?」


清かな月が、朧になる。


「_________夢は、終わりよ。『いつか』って。知っていたじゃない。」


繰り返し、繰り返し。

自分に言い聞かせて。


夕鈴は、夜着のまま。

湖畔に辿りついた。



そこら中に蔓延る、黒い影が。

自分を取り囲んでいる事に。

__________気付かぬ、まま。











翌朝。


慌しく駆け込んできた、夕鈴付きの侍女が。

黎翔に異変を告げた。


「お、お妃様がっ!何処にもいらっしゃいませんっ!!」

「っ!」


唇を噛んだ黎翔は、すぐに部屋を出て。

浩大を呼ぶ。


「浩大っ!・・・浩大っ!!」


返事はない。


昨夜与えた傷は、それほどの深手ではなく。

浩大なら、そのまま夕鈴の護衛に戻れる程度のものだった。


「陛下!お戻りくださいっ!!」


自分を追ってきた李順に、怒りが湧く。


「妃を探しに行く。・・・・止めるなら・・・」


___________斬るぞ?


黎翔の瞳が、赤黒さを増した。










「っ・・・」


僅かに動かせる指先ですら、もう、痺れて感覚がない。

きつく縛り上げられて、起き上がれない。


ここは、どこだろう。

冷たい。


目隠しをされ、猿轡をされた、夕鈴は。

必死に様子を伺った。


少しごつごつした、床と。

揺れるような、感覚と。

水溜りのような、匂いと。

微かな・・・水音。

水?

「・・・・っぅ、ぐ!」


夕鈴は、自分が舟の中に転がされている事を悟り。

なんとか起き上がろうと、足掻き始めた。


ちろちろと、水の音がして。

どんどん身体が冷たくなる。


まさか。

この船。

沈みかけてる?!



群生する、蓮の中。

蒼白の夕鈴を乗せた小舟は、

少しだけ、揺れながら。

沈み続けた。





どこだ?!


樹上を渡り歩きながら、痕跡を探す。

どんな小さなものでも、見落さねえ。


なんでもいい。

頼むから、見つけさせてくれ。



祈るように、浩大は夕鈴の部屋中を。

内庭を。

微かに残る足跡を、辿る。


乾いた風が、空気を洗い。

夜の名残を消していく。




「・・・・陛下。」


浩大は、近づく気配に向って、跪き。

殺気を撒き散らす主に、礼を取る。


「報告せよ。」


何の感情も見せず、黎翔は浩大を見下ろし。


「__________痕跡、なし。」


隠密は簡潔に報告を済ませた。


「・・・ふざけるな。」


顔を歪ませ、腰に佩いた剣に手を伸ばした、黎翔に。

浩大は言葉を紡ぐ。


「・・・ちょうど、いいじゃねえか・・・陛下。」

「何?」

「人には渡せねえ、大事な大事な娘なんだろ?誰にもやれないのに、手放すくらいなら・・・いっそ、このまま・・・」


消しちゃえば?


いつも通りの、明るい笑顔で。

隠密の目で、浩大は言い。


黎翔の顔が、蒼白に変わる。


「陛下。『いつか』って思いながら生きてくより、さ。自分で終わらせちゃった方が、楽なんじゃねえの?」


くすくすと笑いながら。

浩大は、立ち尽くす主を、じっと見つめた。





共にいられぬのなら。

いつか、誰かの物になる姿を、見るくらいなら。


_____________いっそ。


もう、誰にも見られぬように。

もう、どこにもやらずに済む様に。


_____________この手で。


この、手、で。


震える手を握り締めた、黎翔に。


甘い香りが、届いた。




________________桂花。




百里を香る、道標。

甘くて清い、君の香り。







どこだ。

夕鈴。




走り始めた黎翔の後姿を。

頭の後ろで手を組んだ、隠密が。

向日葵のような笑顔で、見送った。


「・・・・あー、俺、明日まで生きられっかなー。」


楽しげに、呟きながら。




「いつか5」へ

C.O.M.M.E.N.T

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