2013_10
09
(Wed)15:59

いつか 1

こんにちは。
あさ、です。

毎度の事ながら、見切り発車です。

おかしいな、おかしいな、と思いながら書き進めております。←やめなさい

少し真面目なお話になる予定、なのですが。

私の立てる予定です。

きっと予定外になります。←開き直り


お付き合い頂ければ幸いです!







【設定・臨時花嫁】


《いつか 1》




いつか、貴方のために。

いつか、君のために。



いつか。


__________必ず。











「陛下。あまり威嚇なさらないで下さい・・・・」



狼と呼ばれる王が統治する、白陽国。

かつて繁栄を謳歌したこの国は、今、弱体化していた。

名君と謳われた前々国王の跡を継いだ、愚王________狼陛下の兄に当たる、その国王は。

全く政に向かぬ男で。

心ある臣下を遠ざけ、甘言を弄する佞臣で身の回りを固め。

国庫は破綻寸前にまで追い込まれ、民は疲弊し。

当然のごとく、内乱が起きた。


血と泥にまみれた、暗くて苦しい、あの日々。

馬上で起居し、安眠など望めず。

口に入るものは何でも口に入れた。


そんな日々と引き換えに、ようやく見えた、出口。


内乱を制圧し、諸州を抑え。

ようやく即位して、粛清を始め。


愚かな臣下を廃し、使える者だけを残し。

刺客から身を守り、巧妙な罠を仕掛け。


ようやく、ようやく見えた、この国の、『未来』。





「・・・・威嚇するなという方が、おかしい。」


狼陛下・珀黎翔はそっけなく呟き。

側近・李順は小さくため息をついた。


「お気持ちは分かりますよ?ようやく落ち着いて政務に取り組めると思った矢先の、降る様な縁談。思惑だらけの『妃推挙』と、あからさまなご機嫌取り。・・・本当に、腹の立つ・・・」

「分かっているなら、このような話を持ち込むな。」


黎翔に押しやられた、山のような書簡が床に散り。

煩わしい音を立てて転がった。

それらをちらりと見やった李順は、軽く咳払いをして、黎翔に向き直り、口を開いた。


「____________『臨時花嫁』を雇うというのは、如何でしょう?」

「臨時、花嫁?」


黎翔の紅い瞳が訝しげに細められた。









・・・・あれから、数ヶ月。



「夕鈴、夕鈴!お茶淹れて?お茶っ!」


___________陛下。気を抜きすぎです。



人払い済みの、庭園の四阿で。

李順は密かに頭を抱えていた。


『_________なんだ、手を出してはいかんのか?』

『愛らしい兎が来たものを』


あの時、嫌な予感がしたんですよ。

痛む頭を抑えつつ、思う。


どのような女性にも『執着』というものを見せなかった、陛下が。

なぜ、ここまで気に入ってしまわれたのか。


絶世の美女という訳でもなく。

立ち居振る舞いが目を見張るほど優美ということもない。

楽に優れているわけでも。

際立った後ろ盾がある訳でも、もちろん、ない。


なのに。

なぜ。


「わぁー!すごいね、夕鈴が作ったの?」


そうか、そうなのか?


「美味しいね、温かいね!こっちの中身は、なに?」


飢えた狼を、餌付け?!


「えっとですね、こちらが肉饅頭で、こちらが栗餡で、こちらが・・・」

「ねえ、全部食べていいの?いいの?」

「ふふ、お腹壊さないで下さいね?あ、あと李順さんと浩大の分も残して下さい。」

「えー・・・・やだ。」

「やだ、って!たくさんあるんですから、いいじゃないですか!」

「お嫁さんの作ったお饅頭を他の男に食べられるなんて、やだ。」

「っ?!私はバイトです!」

「_______君は私の妃だろう?・・・爪の先から髪の一筋にいたるまで、全ては私の・・・」

「っ!!な、何をっ!」


陛下っ!なにしてんですか!!


夕鈴の指先を口に咥えた黎翔に。

李順は心の中で盛大に突っ込んだ。





夜、王宮。




どんどん酷くなる頭痛を堪えつつ、李順は機嫌よく書簡に向う黎翔を見つめた。


『囮』でもある、臨時花嫁。

狼の巣に迷い込んできた、哀れな兎。


命を落とそうが、何があろうが、どうとでもできる_______『駒』に過ぎぬはずが。



「また夕鈴にお饅頭作って貰いたいな!美味しかったなー。夕鈴が淹れてくれるとお茶まで甘く感じてさー。」


狼の牙を丸くするとは。


釘を、刺さねば。

手遅れに、なる前に。


___________枷となるように。巧妙に。









「夕鈴殿。バイト期間の件でお話しがあります。」


立ち入り禁止区域で掃除をしていた私のところに突如現れた、李順さん。


「借金が終わるまで、あと三月ほどです。冬になるまでには、バイト終了になる見込みです。」


明細を見せてくれて、きちんと説明をしてくれた。


何が言いたいのかなんて、よく分かってる。


「わざわざありがとうございます!あと三ヶ月ですね?大丈夫です、きっちりお仕事させて頂きますから!」


笑顔で誤魔化して、目だけは笑わずに。

私は上司に真っ直ぐに向き合った。


「・・・・よろしく、お願いしますよ?」


一瞬、驚いた顔をした、李順さんは。

少しだけ笑うと、王宮に戻っていった。




気持ちのよい風が吹きぬけ。

廊下を歩く李順を追い越す。



___________察しがよい兎ですね。


先ほど自分を見つめ返した、茶色い瞳を思い出す。


あと、三ヶ月。

陛下に未練を抱かせぬよう、バイトらしく、後腐れなく。

心の準備をしてもらうための、三ヶ月。




軽く目を瞑り、あの日の光景を思い出す。



累々と積み重なる、骸と。

舞う烏。

血に濡れた己の手と、刃こぼれした剣と、降り注ぐ矢と。

苦悶に満ちた呻き声と、肉の潰れる音と。

全てを捨てて国王となられた、あの方を。


王とは、何も持たず。全てを持つ。

世界の中心であるが故の、生贄にも似た存在で。

その身は国のものであり、個の感情は、不要。


ほんの一時の安らぎが、命取りになる。

失えないほど大切なものを知ってしまえば、精神は保てない。



『夕鈴、夕鈴!』


楽しげな主の声が、頭の中で反響する。



_____________まだ、間に合う。


枷を。

枷を、嵌めねば。


_____________陛下にも。


_____________陛下の、ために。


枷、を。





「いつか2」へ

C.O.M.M.E.N.T

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