2013_10
07
(Mon)19:40

居たい場所 3

見切り発車で書いております。

色々おかしなところがあると思いますが。

ご容赦下さいませ!





【設定・臨時花嫁】


《居たい場所 3》



唐突にやってきた、終わりの日。

そうよ。

当たり前じゃない、汀夕鈴。


早く借金を返して、下町に帰って。

青慎の世話も、父さんの面倒も。

やらなきゃいけないことは、山ほど、あって。

ずっと王宮にいたから、明玉も心配してるだろうし。

几鍔だって、気を揉んでいる。


真っ白な思考のまま、部屋に戻って。

僅かな私物を、まとめて。


少し辛そうに笑う、浩大に笑顔を向けて。


______________家に、帰って。


私は、元の通り。

下町の庶民に、戻った。











「__________陛下、陛下っ!!」


「・・・・なんだ。」


__________『なんだ』じゃありませんよ。


李順は胸の内で独りごちた。


目の下の隈は、青黒く。

艶の失せた肌は、青ざめ。

食が進まぬせいで、陛下は一回り痩せられた。


別れの言葉もなく、ただ、静かに。

陛下は夕鈴殿を手放された。


去っていく後姿を最後まで、目で追い。

夕鈴殿の部屋を、そのまま封鎖し。

愛しいものを、無理矢理手放した。


増え続ける、刺客。

増す危険。

このままでは、夕鈴殿が命を落とす日も、そう遠くなかった。

今、この時、手放さなければ。

近い将来、陛下は夕鈴殿を永遠に、失う。


そうなる前に、逃がす。

陛下もそれを望んだ。


____________はず、なのです、が。




再び書簡に集中し始めた黎翔の様子をしばらく見守った後。

李順は静かに退室し、廊下に出た。


「・・・浩大。昨夜の陛下のご様子は?」


ふわりと屋根から舞い降りた浩大は、悲しげに笑い、報告する。


「きちんと眠れてないみたいだ。辛そうだよ。」

「なるほど。見たまま、と言う訳ですね。」

「うん、そう。」

「・・・わかりました。」



踵を返した李順は、執務室へ取って返し、人払いをした。

厳しい表情の側近に、官吏たちは怯えつつも大人しく下がり。

李順の急な動きに、浩大が窓から顔を出す。


その間もずっと、黎翔は筆を離さず。

ただひたすらに、書簡に目を通し、筆を走らせ、印を捺し続け。

浅い呼吸を繰り返す身体が、微かな痙攣を繰り返す。


__________陛下、やべえ。

__________これは、限界では・・・


意志の強さが精神を蝕んでいくのを、目の当たりにし。

李順と浩大は、言葉を失った。









私の一日は、忙しい。

炊事、洗濯、掃除。

急に背が伸びた青慎の衣を仕立てなくてはならないし、

父さんがツケにして飲んできた代金を払いに行かなきゃいけないし、

新しいバイトも探さなきゃならない。




はるか彼方、王宮の瓦が太陽の光を跳ね返す。

強くて優しい、陛下の様な、温かい光。


バイト、だもの。

演技、だもの。


甘い言葉も、優しい手も。

力強い抱擁も、柔らかな口付けも。


全部、演技。


私に向けられたものじゃ、なくて。

『偽妃』に向けられた、優しさ。



諦めなきゃ。

諦めなきゃ、いけない。




でも。




何も言わずに私を見送ってくれた、陛下。


ただ、静かに私を見つめるその瞳に浮かんでいたのは、悲しみ、で。

ただ一言命じさえすれば、留められる、私を。

懸命に手放そうとしているのが、よく分かった。


_____________陛下。


陛下は、やっぱり優しい。

ひっきりなしにやってくる刺客や、下賎な妃を貶める、卑劣な罠。

心ない侮蔑の言葉や、嘲笑から。


私を護ってくれた。





今日も朝早くから起き出して、井戸で顔を洗って。

陛下が護ってくれた、『私』を動かす。


ほら、汀夕鈴。


前を、向きなさい?



勝手に零れ出る涙は今日も頬を濡らすけど。

陛下の痛みに比べれば、こんなのなんてことないもの。

__________ほら。

洗濯物をまとめて、籠を持って。

もう一度井戸端に戻らなきゃ。




自分を励まして、重たい足を動かし始めた、夕鈴の目に。


「___________え?」


飛び込んできたのは。


「・・・夕鈴殿、おはようございます。」


かつての上司と。


「おはよう!お妃ちゃん!」


にぱっと笑う、隠密。



「お忙しいところ、申し訳ないのですが・・・・少々、お話を。」

「ごめんね、お妃ちゃん。すぐ済むから、さ。」



____________バイト代の精算、かしら?



きょとんとした夕鈴を見た浩大が、声を上げて笑った。





「・・・すいません、お茶しかなくて・・・」

「結構ですよ。」

「俺はちょっと残念だけどさー・・・」


急な来客に驚きを隠せぬ汀家の食卓で。


「____________夕鈴殿。『待つ』事は、お得意ですか?」


李順はおもむろに切り出した。





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C.O.M.M.E.N.T

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2013/10/07 (Mon) 20:07 | # | | 編集 | 返信

凛さまへ

コメントありがとうございます!
私も!
私も「待て」は得意です!
お気遣い頂いて、ありがとうございます♪
無理せず楽しんでがんばりますね♪♪

2013/10/07 (Mon) 22:31 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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