2013_08
29
(Thu)10:57

赦し

書きかけの続き物SS、「宝花」とは関係のないSSです。

ちょっと昔のいやな事を思い出しまして。

少々暗いSSです。


もし宜しければ・・・。







【設定・未来・夕鈴正妃です】



《赦し》



遠慮のない「視線」。

それは、純粋な興味であったり、品定めをするようなものであったり。

そして。

あからさまに侮蔑するような「それ」に気付いても。

柔らかい微笑で受け流し、気付かぬ振りをする。


____________貴方のために。










年に二度ほど開かれる、各国の大使を招いての、宴。

正妃として出席するようになってもう何度目かになるその宴は、夕鈴の苦手な行事だった。


「・・・・正妃様、そんなに沈んだお顔では・・・」


こめかみに青筋を立て、化粧道具を手にした李順は夕鈴を嗜め。


「________ご、ごめんなさい。」


いつになく俯き、小さな声で謝る夕鈴に。

ふぅ、とため息を吐き。


「・・・・なにを憂いておいでですか?」


優しく、問いかけ。

手にしていた刷毛を置き、夕鈴と向き合う。


「李順さん・・・宴、やっぱり私も出席しなきゃ、だめですよね?」


俯いたままの夕鈴は、膝の上で手をぎゅっと握って。


「できれば・・・陛下から離れた席に一人で座らせて頂けないでしょうか。」


きっ、と、李順を見上げた。










数刻後。

大広間。


「・・・陛下、そんなに睨まないで下さい。」


宴の席に設えられた、国王の座には。

これ以上なく不機嫌な黎翔の姿があった。


「李順。なぜ正妃の座が私の隣ではないのだ?」

「隣ですよ。」

「私と夕鈴の間に花を置く必要などないだろう。」

「何か間に障害物を置かないと、陛下はすぐに正妃様を抱き上げるでしょう?」

「だからって、こんなに樹みたいに大きなのを置かなくても・・・李順の意地悪。」

「陛下、小犬が出てますっ!!」

「ぶー。これじゃ夕鈴の顔が見えない。やだ。すぐどけて。」

「だめです。」

「ええー!」


ぐずる黎翔を宥めすかしながら。


___________正妃様、お早くっ!


李順が胸の内で叫んだとき。


「_________正妃様の御成りでございます。」


女官長の涼やかな先触れと共に、正妃が現れた。


柔らかな微笑と、花のような香り。

まろやかな曲線と、愛らしい顔。

華やか且つ上品に結い上げられた、艶やかな髪と。

優雅で気品に満ちた所作。


声にならぬため息が、会場に満ち。

李順は静かに目を伏せ、夕鈴が座するのを待った。


「李順。やっぱりこの花、邪魔。ものすごく、邪魔。」


____________苛つく声で囁く主に、頭痛を覚えながら。




この宴における狼陛下の眼光の鋭さは、後世に語り継がれるほどであったと言う。












夜。

後宮。


「__________あ、陛下っ!」

「お疲れ様、夕鈴。」



いつもより念入りな化粧を落とすため、宴から下がってすぐに湯殿を使った夕鈴が部屋に戻ると。

いるはずのない、夫の姿があった。


「陛下?!宴は?!」

「抜けてきちゃった!」

「えええっ?!」

「大丈夫だよー、あとは李順と方淵に任せてきたから。」

「大丈夫じゃないでしょうっ!」

「水月が楽しそうに演奏してたよ。客も聞き惚れてたから、僕がいなくてもだれもきづか」

「気付きますっ!!」


夕鈴は、慌てて侍女を探し。


「誰か、李順殿に使いを・・・・って、あ、あれ?誰も、いない・・・?」


しんと静まり返った廊下に立ち尽くす。


背後には、見なくとも分かる、夫の気配と。

__________威圧感。



陛下、怒ってる、の?


慌てて振り返ると、妖艶に微笑まれ、抱き上げられた。


「っ!へ、陛下っ!」

「なあに?」

「どこへっ!!」

「寝所。」

「_________っ!だ、だめですっ!!」


「どうして?」と言いながら、黎翔はスタスタと歩き。

夕鈴を抱いたまま、寝台に座り込んだ。


「あー・・・・、やっと、夕鈴と二人きりだ。」


すりすりと、甘えるように夕鈴の肩口に顔を埋め。

鼻先で首筋を擽り、項に唇を這わせ。

ゆっくりと、胸に手を這わせる。

が。


「陛下・・・だめです。お戻りください。」


夕鈴の手が、黎翔の手をそっと押さえ込み。

俯いたまま、身を固くして拒絶した。


「ゆ・・・」

「・・・・・だめです。今日は、だめ。これ以上ご迷惑は、おかけできません。」


黎翔から顔を逸らし、襟元を掻き合わせ。

夕鈴はきっぱりと、言い切る。


「ただでさえ、今日は陛下にご迷惑をおかけしているんです。この上、私のせいで陛下が大切な宴を抜け出すだなんて・・・」


襟を握り締めている夕鈴の指先には、真っ白になるほど力が込められ。

硬い声音が、黎翔の胸を締め付けた。


「__________何があった?」


包み込むように抱き締め、問いかける。


「__________何、も。いつも通り、です。」


そう答えた夕鈴の顎は、黎翔の指に捉えられ。

ひた、と目が合わされ。

思わず目を逸らした夕鈴の頬に、優しい口付けが落とされた。


「頼む。正直に言ってくれ。」


縋るような夫の声に、夕鈴は自分の中で何かが切れる音を、聞いた。





「__________触れて、いいですか?」


こんな、私が。


「・・・・嬉しい。触れて、夕鈴。」


いいの?

私、で。


「ごめんなさい・・・・ごめん、なさい。」


相応しくなくて。

恥をかかせて。

でも。

大好きなの。


「赦して・・・あ・・・ん・・・」


私、何も持っていないから。

あるのは、この心と、身体だけだから。


言葉じゃなくて、心と身体で。

貴方に赦しを、乞う。



侮蔑に満ちた視線も、蔑んだ笑いも、平気。

でも、貴方にはそれを見せたくないの。

私のせいで、貴方の心を乱したくないの。

私のせいで、貴方が蔑まれるのが、嫌。

ごめんなさい。

赦して。




全身で愛しさを伝えて、全てを捧げて。

いつしか涙を流していた私を、貴方はきつく抱き締めてくれた。


「___________赦してくれ。」


泣いているような、貴方の声。


「君を縛り付ける私を__________赦せ。」


月に照らされながら、求め合って、与え合って。

分かち合う、黎翔と夕鈴の姿は、この上なく、美しく。



いつまでも帰ってこぬ主を待ち侘びる、側近は。


「__________朝までお開きに出来ないのでしょうかね・・・」


諦めたように、だが少し楽しげに、呟いた。

C.O.M.M.E.N.T

せつないっ(つд`)

多くの困難を乗り越えて結ばれた二人でも、今も先も憂いがあって・・・。
それでもお互いを想い合う二人がとても美しく、けなげで。
夕鈴はいつ、自分の魅力に気づくのでしょうね。
気づかないからこそ、ずっと可憐で美しいのかも。
いいなぁ。ずっと可愛いって。←

2013/08/29 (Thu) 12:43 | 羽梨 #- | URL | 編集 | 返信

Re

結婚はゴールじゃないっ!!スタートだっ!!!
終わりのない二人三脚っ!!
ゴールはどこっ?!
・・・・・はっ。すいません取り乱しました。
いつまでも可愛いって、いいですよね。
うらやましいなぁ。
羽梨さまは可愛らしいですよ?
いいなぁ。

2013/08/29 (Thu) 13:02 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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