2013_02
14
(Thu)19:18

結託⑧

【注意!オリキャラが出ます。苦手な方はご注意下さい。】
【設定 原作寄り(臨時花嫁)・捏造あり】
【CP 黎翔&夕鈴】

《結託⑧》

「夕鈴救出作戦」の決行直前。
浩大は、珍しく真剣な顔で几商店に飛び込んできた。

「陛下っ!!!」
「どうした。浩大。」

下町で「陛下」と呼ばれたことより、浩大がそれをするほど落ち着きをなくした理由の方が気にかかった。

「お妃ちゃん、・・・いない!!」

「・・・・なんだと?」

「どの部屋に監禁されてるのか、調べたんだよ。隠し部屋も、全部調べた。・・・そしたら」

黎翔が瞳を光らせながら、浩大の胸倉を掴み上げ、続きを促す。
浩大も負けずに瞳に強い光を宿したまま、息を詰まらせながらも平然と答える。

「うぐっ・・・。そしたら、二つある隠し部屋のうち、一つは使われた形跡があった。薄茶の長い髪が数本、寝具に付着。縄などの拘束具の形跡、なし。だけど、本人がいない。料亭内にいた高商店主及び関係者を捕縛。吐かせたところ、薬物を飲ませ、自由を奪った上での軟禁状態にあったと判明。軟禁とは言え施錠はされておらず、部屋への出入りは可能だった模様。お妃ちゃんは、薬でふらふらの状態で、料亭を抜け出たと思う。」

「・・・・夕鈴。この寒空に、どこへ・・・」

唇を噛み締めた黎翔に、浩大が声を潜めて報告を続ける。

「______陛下。寝具に、血痕数滴、付着。」

すうっと、黎翔の顔から表情が抜け落ち、腕から力が抜ける。

解放された浩大は、顔色をなくした。

(やばい。)

本能で、間合いを取る。
・・・が、黎翔は剣を抜かず、無表情のまま、命を下す。

「付近一帯の捜索を。几の手下を使い、大路小路はいうに及ばず、全ての路地裏まで探せ。」

「ちょっと待て!!」
 
黎翔の言葉を遮った几鍔に、浩大はある意味感心する。

(今の陛下に物申せるなんて、大した胆力だよな)

「・・・ちょっと待て。・・・「李翔」、だよな。今はとりあえず。」
「・・・なんだ?」

睨みつける黎翔に、几鍔はなおも続ける。

「・・・「李翔」。状況は分かった。もう料亭に向かう必要もないことも、アイツが一人で逃げ出したことも。俺の手下を全部使うことにも、もちろん依存はねぇ。だがな。」

几鍔は、息を継ぎ、続けた。

「アイツが無事見つかったら、お前にだけは、もう渡さねぇ!!」

静まり返る、几商店。

黎翔の顔に、表情が戻る。氷のような、見るものを凍らせる微笑が。

「・・・・彼女は、私のものだ。」

「っ!!」

氷のような怒りを漲らせた黎翔と、爆発寸前の几鍔の睨み合いに割って入ったのは、
_____崔洸だった。

「お二人とも!!!そんなことをしている場合ですか?!」

振りむいた二人に、顔を真っ赤にさせた崔洸の怒声が響く。

「なにやってんですか!!今、夕鈴さんはこの寒空の下、一人で彷徨ってるんですよ?!探しに行くのが先でしょう?!」

そして崔洸は、夜の下町に飛び出した。

その後姿を見送りながら、呆然と二人は呟く。

「・・・・似てる。アイツに。」
「・・・夕鈴みたいだ。」

黎翔は、夕鈴の見合い相手である崔洸を憎みきれなかった理由が、なんとなく分かった気がした。

そして微かに笑みを零し、静かに命じる。

「・・・行くぞ。浩大。」

「はいよっ!」

微風のように出て行った黎翔と浩大に続き、几鍔も店を飛び出し、崔洸に追いついた。

「・・・几鍔さん、さっきは怒鳴っちゃってすいませんでした。」

「いや、こっちが悪いんだ。」

「・・・ひとつ、思い出したことがあるんです。」

「なんだ?」

「まだ我が家がそこそこ羽振りが良かった頃、当時の王、つまりは狼陛下の父王ですが、その王にお仕えしていた祖父が教えてくれたんです。____王族の瞳は、美しい紅色だ、と。」

「______紅色、か。・・・血の色だな。どっかの自称役人さんの瞳みたいに。」

「・・・はい。」

「陛下、って呼ばれてたしな。馬鹿じゃない限り、察しは付くよな。」

「はい。」

「・・・今は、アイツを見つけて、『下町に』連れ帰ることが先決だ。俺は、もう絶対、アイツを王宮には行かせねぇ。」

「それが、夕鈴さんの望みでも、ですか?」

やけに静かな瞳で崔洸は几鍔を見つめる。

「・・・お前は、アイツをあの『役人』に渡してもいいってのか?」

「いいえ。今日会ったばかりですが、夕鈴さんを妻に迎えたいと思っています。」

「なら、」

「いいえ。それは、『私の願い』です。彼女の願いではない。・・・私は、彼女が見合いの間中、何かを気にかけているようだったのを覚えています。『誰かを』気にかけていたのかもしれませんね。」

静かに語る崔洸の言葉に、几鍔は、歩みを止めて俯いた。

そんな几鍔を優しくみやりながら、崔洸は言う。

「・・・だから、夕鈴さんに選んで頂きませんか?これからどうなさるのか、を。」

「・・・そうだな。アイツの気持ち次第、ってとこか。」

「はい。」

二人は笑みを交わし、また歩き出した。



☆完全に、正体ばれました。陛下。
 隠す気もなさそうですが。笑
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C.O.M.M.E.N.T

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