2013_08
21
(Wed)19:53

弱点 3

夕鈴がかわいそうなので、これで最終話です。ぺこり。←


【設定 臨時花嫁】


《弱点 3》




「___________陛下、このお部屋・・・陛下の、香りが。」


何も映さぬ瞳で、夕鈴は黎翔を見上げ。

黎翔は、そっと夕鈴を長椅子に下ろしながら、「そうだよ。」と答える。


「僕の部屋だ。護衛の事もあるし、しばらくここで一緒に過ごす事になる。」


夕鈴の頬に口付けを落としながら、黎翔は少しだけ微笑み。


「大丈夫。夕鈴の目が良くなるまで、手は出さないから。」

「よ、良くなるまで、って?!手?!て?!出さないって?!え?!」


妖しく、優しく、囁く。


頬を押さえながらうろたえる夕鈴は、耳まで真っ赤で。


「________夕鈴、大好き。」

「なっ!!」

「ゆっくり身体を治そうね。________君と話したいことが、たくさんあるんだ。」

「・・・は、い・・・」


優しく包み込むように抱き締めながら囁く、黎翔の腕の中で。

夕鈴は、その温もりと香りに身を預け、深くゆっくりと息を吐き。


「・・・・ふふ、いい気持ち・・・」


夢見るように、目を閉じた。





夕鈴の目が見えなくなって、数日が過ぎ。

薄っすらと光を感じ始めていた夕鈴ではあったが、何も見えないことには変わりがなく。

抱き締めても逃げ出さない夕鈴に、胸を痛めながら。

黎翔は日々、夕鈴の心労を取り除くことに尽力していた。


そんな、ある日。


「・・・夕鈴殿、具合はいかがですか?」


妃の元に、李順が姿を現した。


「ありがとうございます。真っ暗だったのが、少しずつですが、明るくなってきました!」


明るい口調で答える夕鈴は、少し痩せたようで。

青白い頬が、薄くなった肩が、痛々しさを感じさせる。


「・・・こちらへ。」


連れてきた侍官を、促し。

李順は夕鈴に近づいた。


「__________姉さん・・・」

「青慎っ?!無事なのね?大丈夫?身体はもういいの?!ごめんね、怖かったでしょう?!」


弟に抱きつこうとした夕鈴は、卓にしたたかに脚を打ちつけてしまい。


「い、いたた・・・」

「もう、姉さんったら。見えないのに急に動くから・・・」

「妃ともあろう者が・・・落ち着きのない・・・」


李順の小言に、夕鈴は「すみません」と縮こまる。

思ったよりは元気そうな姉の姿に安堵した青慎は、くすっと笑い。


「それにしても・・・『お妃様』なんだね。姉さん。」


改めて、姉を見つめた。


艶やかな髪と、ほっそりとした身体。

綺麗に結い上げられた髪と、美しい衣装は、姉に良く馴染み。

どこから見ても、立派な『お妃様』だ。


「ちょっとびっくりしたけど・・・姉さん、綺麗。」

「ありがとう。」


ふふっと笑った夕鈴は、「でも、偽者なのよ?」と付け加え。

それを聞いた李順が声をひそめて困ったように笑ったのを認めた、青慎は。


「・・・・うん、わかった。」


_________『李翔さん』も、大変だなあ。


少しだけ同情しながら、李家に帰って行った。


「姉さんを、宜しくお願いします、と・・・『李翔さん』にお伝えください。」


しっかりと、李順に言い置いて。







「今日、青慎に会ったんですよ!」


久しぶりに心からの笑顔を浮かべた夕鈴に、黎翔の頬も綻ぶ。


「よかったね!僕も会いたかったなぁ。ごめんね、青慎君を呼ぶのが遅くなっちゃって。」

「っ!陛下が呼んで下さったんですか?!」

「うん。だって、僕のせいで青慎君にも迷惑かけちゃったし・・・ね。」


本当は、義弟に挨拶したかったから、なんだけど。

出かけた言葉を飲み込んだ黎翔は。

夕鈴の鼻先まで、顔を寄せた。


「____________どうだ?何か、見えるか?」


声の近さに焦った夕鈴だが、黎翔の声音は、真剣で。

じっと、目を凝らす。


「・・・・・あ・・・・陛下の、瞳が・・・・・っ!見え、ますっ!!」


ぱちぱちと瞬きをし、夕鈴は黎翔の頬をぐっと引き寄せ。

ぺたぺたと、額や頬を撫で回し始めた。


「・・・陛下・・・・陛下が・・・・見え・・・・」


ぱあっと笑顔になった夕鈴を、力の限り抱き締めながら。


「老師を呼べっ!!!!」


黎翔は大声を出した。







「___________弟君に会われたのが、良いきっかけだったようですな。気力が湧いたのでしょう。」


もう、大丈夫。

そう太鼓判を押し、老師は夕鈴の手を握り。

ぶんぶんと両手を振り回し、喜びを伝える。


「よしっ!毒も残っておらんでな、これでいつでも御子を産めるぞ?!」

「なっ!何をっ!!!」

「・・・・本当か?老師。」

「へ、陛下まで何をっ!!」

「諦めてください、夕鈴殿。弟君の事は、私が責任を持って・・・」

「李順さんまでっ!!」

「ああ、そうでした。『姉を宜しく』と、弟君から陛下へのご伝言です。」

「ええ?!青慎が?!」

「____________愛しい后だけではなく、賢く可愛らしい義弟まで持てるとは・・・私は果報者だな。」


黎翔は、にやりと笑う。


急な展開についていけない夕鈴と、幻の尻尾をぶんぶん振り回す黎翔を残して。

後宮管理人と側近は、早々に姿を消し。

屋根の上の隠密は、客の相手をする。



「・・・・・あっ・・・・へいか・・・恥ずかし・・・」

「・・・ずっと、僕のこと好きだったの?いつから?________ねえ、教えて?」

「んっ・・・・やっ・・・・しゃべれ、な・・・・んんっ!」

「僕はずっと前から夕鈴のことが好きだったよ・・・・ずっと、ずっと前から。」

「・・・私、も・・・・好き、でした・・・・・ん、やぁっ・・・」

「___________もう、遠慮はいらぬな・・・・」



しっとりとした、闇の中。

光を取り戻した兎と、ようやく光を手に入れた狼は、睦み合う。



闇の中、互いを照らすように。

優しく、いつまでも。
処暑   
«  HOME  »

C.O.M.M.E.N.T

はふぅ(*´д`*)

青慎は聡い子ですな。
李家の後ろ盾があれば、最短政務室行きですよね。
みんなでワイワイ夕鈴を囲むの好きです。
夕鈴が最初に見たものが陛下だとは、なんて目の保養、いえ、なんと幸せな。
毒が残っているなら、なんでも聞きますよ?

2013/08/21 (Wed) 20:30 | 羽梨 #- | URL | 編集 | 返信

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2013/08/21 (Wed) 20:50 | # | | 編集 | 返信

目が治って最初に見えたのが陛下で、最初に映ったのが自分で、夕鈴も陛下も良かったですよね~
SSを読める幸せに浸る果報者がここにも1人。
視力は大事です!!

2013/08/21 (Wed) 21:58 | からあげ #- | URL | 編集 | 返信

Re

李家に預けるか、几家に預けるか、迷ったのですが。
芙蓉と青慎は実は顔見知りですので、その辺も(どの辺だ)考慮して、李家行き決定。
仲良しの芙蓉と青慎を、もやもやとした気分で眺めると良いのです。お兄様は。ふふ。
解毒、自浄作用で頑張ってみております。
時間薬です。
ふふ。
うちの陛下が弱いのは、私が弱いからです。ふふふ。

2013/08/21 (Wed) 22:32 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

良かった~…ん?

夕鈴の目が治って一安心(*´▽`*)
青慎はどう言って王宮に連れ込まれたんですかね(・・?
汀姉弟は大変です、色んな意味で(笑)
陛下ッ!
手を出すのが早いッ!待てッ、待てはどこにッ!!!?

2013/08/21 (Wed) 22:32 | さき #- | URL | 編集 | 返信

慎さまへ

ええ?!
いいのでしょうか?!いいの?!
以前頂いたイラストも、見つめすぎるほどに見つめ続けているのにっ!!
甘くて艶やかなの、大好きなんです!!いいのでしょうか?図々しいですよ?私。←
私のSSがぐるぐると繫がっているのは、脳内が妄想だらけだからですっ!!(いばるな)

2013/08/21 (Wed) 22:35 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

からあげ様へ

視力。大事ですよね。
夕鈴がかわいそうで、早く終わらせてしまいました。
やっぱり夕鈴を苛めるのは、辛いですね。(じゃあ書くな)

2013/08/21 (Wed) 22:36 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

Re

青慎は、李家に預けられた時点でしっかりと状況を把握した模様です。
賢い子ですからね。
取り乱さず、冷静に現実を受け入れた模様。
あれ?陛下、待てしましたよ?
目が治るまでは、ね。ふふ。

2013/08/21 (Wed) 22:38 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2013/08/21 (Wed) 23:11 | # | | 編集 | 返信

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2013/08/22 (Thu) 06:58 | # | | 編集 | 返信

慎さまへ!

本当に宜しいのでしょうか?!
うわーい!!!
待ては大得意ですので!!
おりこうに、お座りして待ってます!!
わーい♪わーい♪

2013/08/22 (Thu) 07:02 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

ちょこれーとぱふぇ様へ

お久しぶりです♪
くらーいお話を書くと、自分が凹むのですよ。
学習せずに、たまに暗いお話しを書いちゃうんですけどね。←
またお越し下さると嬉しいです♪

2013/08/22 (Thu) 07:04 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

コメントの投稿

非公開コメント

トラックバック