2013_08
21
(Wed)10:47

弱点 1

【設定 臨時花嫁】


《弱点 1》




「青慎、ただいま!」

夕鈴は久しぶりの休暇に、張り切って家の扉を開け。

愛しい弟の名を呼んだ。


「・・・・ねえ、さん。」

「青慎?どうし・・・・っ!!」


現れたのは、弟の首筋に刃を当てる、黒尽くめの『客』。


「___________王宮で掃除婦をしているそうだな。」

「っ!」

「言う通りにすれば、危害は加えぬ。」


常套句を並べる、来客を。

夕鈴は力いっぱい、睨み付けた。









「・・・・無駄なことはするな。」


囁いた賊は、おもむろに黒衣を脱ぎ捨て。

上品な女性が姿を現した。


「いいわね。」


有無を言わさぬ笑顔で、刃をちらつかせ。

無言で頷いた夕鈴に、満足気な笑みを投げた女は、夕鈴に柔らかく問いかけた。


「休暇はいつまで?」

「ゆ、夕刻までよ。遅くとも門が閉まるまでには戻らないと。」

「そう、わかったわ。」


懐から細縄を取り出し、「ごめんなさいね。」と言いながら青慎を縛り上げ、自室の寝台に転がすと。

女は、夕鈴を台所の隅に連れ込んだ。


「______________さて、『お妃様』?」

「っ!!」

「本題に、入りましょうか・・・・」


品良く微笑んだ女の横顔を、じっと見つめた夕鈴は、気付く。


「っ!!あ、貴女は、陛下付きの・・・・っ!!」

「お声が高うございましてよ?狼陛下、唯一のお妃様?」


柔らかい掌が、夕鈴の唇を塞いだ。


「_________今日の夜。茶にこれを入れて下さいませ。陛下は、お妃様がお手ずから淹れた茶なら、毒見などなさらずに召し上がるでしょう?」

「いやよ。」


即答した夕鈴に、賊はにっこりと笑み。


「あら、それは残念。_________ところでお妃様。弟君の顔色がお悪いのに、お気付き?」

「せ、青慎に、何かしたの?!」

「ふふ、当たり前ではございませんか。遅効性の毒ですわ。明日の朝までに解毒薬を飲ませれば問題ございません。」

「卑怯者っ!!」

「なんとでも。」


浩大!!!

夕鈴は心の内で叫ぶが、今日に限って、浩大は来ておらず。

ほんの少しの時間だからと、護衛も連れずに実家に戻った自分の軽率さを、夕鈴は悔やんだ。


唇を噛んだ夕鈴を、憐れむように見つめ。

女は。


「貴女方に恨みはございませんの。_________あるのは、珀黎翔へ、だけ。愛しい方を殺された恨みを、愛しい者に殺される事で相殺して差し上げるわ。」


女の暗い目が、鈍く光った。












伊達に後宮に居た訳ではございません。

お妃様の一挙一動を、私の『目』が見張っているとお思い下さいませ。


狂気を宿した目で、そう告げた刺客は。


明日朝までに、色よい報告がなければ・・・・弟君の命はございません。

事も無げに言ってのけた。





その日の、夜

「お疲れ様でした、陛下。」

「夕鈴も、お疲れ様。ちょっとしかお休み上げられなくて、ごめんね。」


そう言いながら、ゆったりと微笑み。

茶杯を手に取った黎翔は。


「____________?」


怪訝な顔で夕鈴を見つめた。

笑顔を絶やさず、夕鈴は目線を茶杯に向け。

黎翔は、小さな紙片をそっと掌に隠す。

その紙片は薬を包むためのもので。

僅かに薬が残されており。

夕鈴の目から、ぽろりと涙が零れ、頬を伝う。


「___________弟君は、元気?」


明るく問いかけた黎翔に、夕鈴の唇が震え。

黎翔は全てを理解した。


・・・・浩大。そこにいるな。


胸の内で隠密を呼び、卓をトントン、と指で叩き。

軽く咳払いをしてから、黎翔は茶杯を手に取り。

口に、運んだ。



夕鈴のために。



心地よい香りが鼻腔を擽り。

夕鈴の香りがするような花茶に笑みを浮かべ。

茶杯のふちに軽く唇を触れさせ。


こくり、と飲み込む。


・・・無味無臭の、毒か?


その味わいは、いつもの茶と変わらず・・・・いや、いつもより、甘い気さえして。


黎翔は、全身から血の気が引くのを、感じた。


「夕鈴っ!!!」


気付いたときには、既に遅く。

彼女の茶杯は、空になっていて。


「__________陛下。」


美しく微笑んだ夕鈴は、そっと黎翔の頬に手を当て。


「・・・ずっと、好きでした。」


小さく震えながら、囁くと。


崩れ落ちた。




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C.O.M.M.E.N.T

いやぁ~っ°・(ノД`)・°・

弱点て、弱点て・・・酷い!
あさ様の夕鈴はなんて、男前なの(つд`)
まるであさ様みたい。
カッコ良すぎです。
ああ~。
待てしてますぅ。ずっと待てしてます。

2013/08/21 (Wed) 12:17 | 羽梨 #- | URL | 編集 | 返信

夕鈴!?どうなっちゃうんですか!?(>_<)
気になりすぎます!!

2013/08/21 (Wed) 12:18 | からあげ #- | URL | 編集 | 返信

…え?

…え…?
一体何が起きたの~?!
ゆ、ゆーりん!?

2013/08/21 (Wed) 12:59 | さき #- | URL | 編集 | 返信

Re

男前度では、羽梨様のほうが上ですよ??
もう、羽梨様のおうちのステキイラストと熱が出そうなSSに、のた打ち回ってます。
鎖骨!←

2013/08/21 (Wed) 13:33 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

からあげ様へ

どうなっちゃうんでしょうか?!←こら
大丈夫です、私の書くお話しですから!!
安心してください♪

2013/08/21 (Wed) 13:33 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

Re

さき様へ
ふふ。
何が起きたのでしょうか。←
言葉足らずですいません!
続き、UPしてあります。ちょびっとだけ、陛下が説明してくれてます。

2013/08/21 (Wed) 13:35 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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