2013_08
18
(Sun)13:48

刻花 4

【設定・臨時花嫁】



《刻花 4》



「お帰りなさいませ、陛下。」


すっかり夜も更けた頃、黎翔はいつものように夕鈴の部屋を訪れた。


「茶を淹れてくれぬか。」


妃の柔らかな髪を一房手に取り、滑らかな感触を楽しみ。


「は、はい・・・っ!」


真っ赤に染まる『妃』の頬に、手をあてる。


「・・・・君の肌は、いつも心地よいな。」


真っ直ぐに夕鈴を見つめて言う黎翔の目は、嬉しげに細められ。

控える侍女たちも、にこやかにその様を眺める。


「っ!へ、陛下・・・恥ずかしいですっ!」


必死に囁く夕鈴の茶色い瞳が潤み出し。

黎翔は、ようやく人払いをした。







「______________もうっ!」


侍女たちが下がるのを見届けた夕鈴は、ぐいぐいと黎翔の胸を押し返し。


「は、離れて下さいっ!!」


自分を囲う、黎翔の腕の中で暴れた。


「・・・・今の私に触れられるのは・・・そんなに、嫌か?」


頭上から降る、悲しげな声に。

夕鈴の抵抗が止む。


「君は私の『妃』だろう?記憶をなくす前の私は、君にどのように触れた?どうすれば、君に嫌われずに済む?」

「・・・・っ。」

「私は、君に触れたいと、思う。だが、君は・・・・」


_________嫌、なのだな。

泣きそうな顔で微笑む黎翔に見つめられて。

夕鈴の胸は、息が出来なくなるほどに締め付けられた。


「・・・泣くほど嫌、か?」

「っ・・・泣いて、なんて。」


夕鈴の頬を伝う綺麗な雫を、その長い指で拭い。

苦笑した黎翔の拘束が緩む。


「・・・ごめん、ね。」


小さく呟き、扉へ向う黎翔の背に。

柔らかな身体が、しがみついた。


「・・・・夕鈴・・・無理しないで、いいから・・・・」


背に感じる、柔らかな温もり。

その感触に耐え難い誘惑を感じながらも、黎翔は耐えた。


「・・・記憶のない僕は、君にとっては他人みたいなものだろうから・・・無理、は」

「してませんっ!!どんな陛下も、私の大切な陛下、ですっ!!」


予想以上に大きな声で叫んだ夕鈴に、黎翔は驚き振り返る。


「ゆ、夕鈴?」

「陛下はっ!!いつもそうやって!!無理するなとかばっかり言って!私のこと、甘やかしてばかりで!!」

「あ・・・の?」

「至らないかもしれませんが、私は貴方の妃ですっ!陛下が大変な時にお側に居させて頂けないのは、辛いですっ!お役に立てないのは、悔しいですっ!!」

「・・・はい。」

「だから!!陛下が、陛下、が・・・わ、わたしに、ふ・・・ふ・・・」

「・・・・触れたい?」

「っ!ふ・・・れたい、と、仰るなら・・・・なら!」

「・・・なら?」

「っ!!ど、どうぞっ!!」



夕鈴は、ぎゅぅっと、目を瞑り。

正面から、黎翔に抱きついた。





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