2013_08
18
(Sun)07:51

刻花 2

【設定・臨時花嫁】



《刻花 2》







目覚めた陛下の様子は、何だかおかしかった。


焦点の合わぬ瞳。

彷徨う手。

演技なのかどうか、判別しかねる、言葉。


後頭部の傷は、幸いにもそれほど酷くはなく。

多少の意識混濁はあるかもしれないが、数日でおさまる、との老師の診断だった。



・・・・・でも。



再び目覚めた陛下の様子は、やっぱり、おかしくて。



「あのさ、『君』は、・・・・」

「ふふ、夕鈴、で結構ですよ、陛下。」

「うん、ありがと。・・・それで夕鈴は・・・僕の『妃』なんだよね?」

「__________はい、そうです。貴方の妃、です。」



ちくりと痛む胸を無視して、夕鈴は笑んだ。

陛下を混乱させぬため、臨時花嫁の件は伏せるようにと、李順から言われているからだ。



「そっかー・・・。それで、僕は『国王』で。」

「はい。」

「この人が、側近の李順、で。」

「ええ。」

「この人が、隠密の、浩大、で。」

「そうです。」

「この人が、後宮管理人の、老師。」

「その通りです。陛下。」

「_____________黎翔。」

「は?」

「僕の名前。『黎翔』でしょ?呼んで?」

「っ!」

「_____________夕鈴殿、陛下の仰るとおりに。」


促す李順に、夕鈴の背筋が伸び。


「・・・はいっ!・・・・れ、黎翔、様。」


耳まで真っ赤に染めて、俯きながら呼んだ夕鈴の顎を。

つい、っと、黎翔の骨ばった指が持ち上げる。


「・・・・ああ・・・よい響きだ。__________夕鈴。今一度、名を。」

「っ!!」


狼?!どうして?!


混乱する夕鈴の背を、李順がつつき。


「・・・・仰る、通りに。」

囁いた、その時。


「______________李、順。」


周囲の温度を急激に冷やす、狼陛下の声音が響いた。


「我が妃にみだりに触れるとは・・・・・命が惜しくは、ないのか?」


いつの間にか鞘を離れた鈍く光る鋼が、李順の胸にピタリと当てられ。


「____________ご無礼を、致しました。」


すっ、と跪いた李順の額に、汗が滲んだ。


「・・・此度は、見逃す。」


しゃりん、と涼やかな音を響かせて剣を収めた黎翔の瞳は。

どこまでも紅く、澄み渡り。

いつもと変らぬように見え。


____________少し、試してみましょうか。


頭を垂れつつ、李順は決心した。










「______________それではとりあえず、こちらの書簡を・・・」


山と積まれた書簡を前に、黎翔は眉を顰めた。


「これを『処理』せよ、と?今日中に?」

「はい。」


厳然と言い渡す李順の笑顔には、隙がなく。

ふぅ、とため息をついた黎翔は、書簡を開き始めた。





これは、水害の記録だ。

これは、飢饉への対策・・・・急務、だな。

こちらは、物価の安定についての献言で・・・。

こちら、は・・・妃の______________献上?


なんだ、この不快感、は。


『・・・・諸般の事情を鑑みるに、数多の名家より妃を冊立し、より多くの血筋を__________』


正論、だ。


『・・・正妃には、しかるべき家柄の子女を・・・・諸外国との友好関係も・・・・』


ああ、なるほど。

国王たるもの、より多くの子を成すのが、勤めだろうな。


だが。


何故。



__________________これほどに、心が乱される?


__________________これほどに・・・



ぴたりと手を止めた黎翔の額に、薄汗が滲み。

胸を掻き毟られるような焦燥感が、襲う。



「_____________くっ・・・」


ぐしゃっと、書簡を握りつぶし。


「う・・・あ・・・・・くっ・・・・は、ぁ・・・っぐ、うっ・・・」


身を震わせて嘔吐を始めた黎翔を、介抱しながら。




_______________やはり、「そこ」でしたか。




李順の顔が、歪んだ。






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C.O.M.M.E.N.T

ああっ(*´д`*)

出来る男、李順さん(*´д`*)
色々試して?
いっそのこと、夕鈴を(自粛)
なんでしょう、このワクワク感。
よい子の羽梨はチョンと待てしてます。
ええ、それはもうよい子に待てしてます。

2013/08/18 (Sun) 11:31 | 羽梨 #- | URL | 編集 | 返信

Re

今、夕鈴お試し中!!なトコを書いてました。
子ども達&だんなさんが外遊びに行っている間の妄想タイムです。
どこまで書けるか。
頑張ります!

2013/08/18 (Sun) 11:38 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

なるほど

試す、というので「政務が出来るか」だと思っていたら、そういうことだったんですね!
陛下は記憶が無くても陛下ですね。
狼は狼!
私も体育座りで待ってます♪

2013/08/18 (Sun) 11:51 | さき #- | URL | 編集 | 返信

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2013/08/18 (Sun) 12:57 | # | | 編集 | 返信

Re

さき様へ
上手くまとまりませんでしたが、一応最後までUPしてみました。
体育座りでお待ち頂き、ありがとうございます!

2013/08/18 (Sun) 14:35 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

慎さまへ

夏コミ!
熱くて暑くて楽しかったです♪♪
思う存分、やらかして参りました。もう悔いはないです。笑
「刻花」ですが。
久しぶりに書いたというほど「久しぶり」でもないのですが、なんだか上手く書けなくて。
いつもですね。そうですね。笑
挙動不審な陛下に振り回されましたので、夕鈴に締めてもらいました。笑

2013/08/18 (Sun) 14:39 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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