2013_07
29
(Mon)21:37

清流

【設定・未来】
【オリキャラ注意!李順さんの父上(初出)と母上が出ます】

*殆どオリキャラの独白です



《清流》




春先。

北の地の河に流れ来るのは、凍りつくような、雪解けの水。

清冽で高潔な流れは、手を切り裂くかのように、鋭く。

下流に豊かな実りをもたらす、恵みの水となる。









「_____________この度、この地にお妃様と皇子がお越しになる。」



花茶を淹れる私に、夫が重い口を開いた。


「承知して、おります。あなた。」


李の本家に、先行きの分からぬ妃と皇子を負わせるわけには、いかない。

ちょうど良い年頃の息子がいる我が家が一番適当なのは、自明の理。


「玲華。乳母として、出仕せよ。」

「ええ。それが貴方のお為になるなら。」


誰より愛しい、私の夫。

生真面目で、融通が利かなくて。

理詰めで物事を判断するくせに、脆い。



躊躇いもせずに諾を述べた私を見つめた眼が、揺れるのが分かったから。

出来る限り優しく、貴方を抱き締めた。


「幸信。貴方の選ぶ道に、間違いはないもの。仮にあったとしても、それは私の間違いだわ。」



私は、この時、分かっていたのかもしれない。

訪れる、最愛の夫の非業の死を。

その先にある、私の姿を。

私達の息子の未来を。



そして。


紅い瞳を持つ聡明な皇子の、人並みはずれた『才』を見たとき。

それは確信に変った。



______________この方を、王に。



それは、李の本家に伝わり。

李の総意となった。





そして、十数年の月日が流れ。



「・・・・すまない、玲華。結局、お前に全てを負わせた・・・・」


黎翔皇子を庇い、無数の矢を受け。

朱に染まった、虫の息の、愛しい貴方に。

私は他に何を言えただろうか。


「___________来世で、私を待っていて下さいませ。」


私が、貴方を。

探して見せますわ。


例え、この先。

どこの誰のものになろうが。


私はいつまでも、貴方の妻。



安堵したように微笑み、息を引き取った貴方に。

私はそっと口付けをし。

大切な一人息子を呼んだ。




「_____________参りますよ。」

「はい、母上。」




迷うことなく答えた、息子の声は、夫とよく似ていて。

押さえ込んだ感情に、皹が入る。



「・・・・母上。どうか、今だけは・・・・」


息子の手が、私の背をそっと撫で。


___________それが、私の、限界だった。











「_________後にも先にも、あれっきりでしたよ。」

「・・・・・」

「母が、涙を見せたのは。」

「そうか・・・・・お前の父と母には、未だに頭が上がらぬ。」

「私もですよ。」



後宮に響き渡る、孫達の賑やかな笑い声を肴に。

黎翔と李順は、杯を傾けた。
  
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