2013_07
26
(Fri)15:22

その先 5

【設定・臨時花嫁終了】



《その先 5》



どれくらい、庭に立ち尽くしていたのか。

良く覚えていない。



「おい・・・・おい!!何してんだよ?!」


几鍔に肩を揺さぶられるまで、浩大がいなくなったことにすら、気付かなかった。

隠密だから、気付かれなくて当然なのかもしれないけど。


涙も出ない。


『________心は、いつも君の側に。』


ふいに、あの人の声が甦った。


陛下。

大好き。


いつも、いてくれるんでしょう?

陛下は、王様だから。

お身体は、国のものだけど。

心は、私のもの。


そうですよね?



「おい・・・・何考えてる。」

「・・・なにも。」

「・・・・まあ、いい。お前に話しがあって、来た。」

「・・・・お茶でも淹れるわよ。」


家の中に入っていく、夕鈴と几鍔の背を。


少し離れた樹上から、浩大が見守っていた。












「_____________李順、次。」

「陛下、そろそろ終わりになさっては・・・・」


機械的に書簡を捌き、政務をこなし。

半年前と変わりなく、陛下は精力的に勤めを果たされている。


が。


痩せられた。

顔色は悪く、隈ができ。

唇は青黒く、頬は青ざめ。



側仕えの女官に聞いても、

「きちんとお食事を摂られ、寝台にも定刻にお入りになられていらっしゃいます。」

そう、言う。


侍医に聞いても、

「御身体に特に異常は見られません。夏のお疲れがお出になったのやも・・・・」

そう、言う。



だが、これは、明らかに・・・・

おかしい。



仕方ない。自分で確かめるとしましょう。


李順は書簡をまとめると、「明日朝、お迎えに上がります。」と言い残し、退室した。







深夜。

煌々と月が照らす、回廊には。

白い夜着を纏った黎翔の姿があった。


半分閉じた紅い瞳には、何も映っておらず。

滑るように、後宮に向って歩を進める。



_________________陛下。


李順は、黎翔の後を追った。




警備兵の隙をつき、黎翔は難なく後宮に入り。

迷うことなく、ある一室を。

夕鈴の部屋だった場所を、目指す。


がらんとした、真っ暗な部屋に、足を踏み入れ。


「・・・・・いな、い・・・」


虚ろな瞳で、小さく呟き。


踵を返し、庭園に降り立ち。

四阿へ、向う。


さくっ、と乾いた音を立てて、草を踏み。

よく夕鈴が摘んでいた、花を摘み。


「・・・ここに、いたの?」


両手で大切そうに、花を包み込み。

ゆっくりと、長椅子に腰を下ろす。


「・・・・・ねえ、ゆうりん・・・・おちゃ、いれて・・・?」


うっとりと笑顔を浮かべながら、花に触れる黎翔の姿に。

日々繰り返していたのであろう。

長椅子の周囲に積もる、花の数に。


李順は、絶句した。





翌朝。


「おはようございます、陛下。よくお休みになれましたか?」

「ああ、眠れた。」


_________________気付いておられないのか。


常と変わりなく、朝の業務を済ませながら。

李順の背に、嫌な汗が伝った。




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C.O.M.M.E.N.T

李順さん!
頑張って・・・。
やっぱりキーマン李順さん。
務めと心と、引き裂かれた二人の運命はいかに!?
待てしてます。
こっそり待てしてます。

2013/07/26 (Fri) 16:21 | 羽梨 #- | URL | 編集 | 返信

羽梨さまへ

小学校の稲観察から帰宅しました。砂埃がすごかった・・・・ざっらざら。
陛下、心と体が分かれちゃいましたね。
本人に、自覚はありません・・・。
李順さん、どうしましょうか。←
今日中に、さいごまで書けるといいなぁ。頑張ります。笑

2013/07/26 (Fri) 16:39 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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2013/07/26 (Fri) 22:45 | # | | 編集 | 返信

yossi様へ

泣かせてしまいましたか?!
陛下陛下、涙をお拭きして?!

2013/07/27 (Sat) 07:56 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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