その先 4
【設定・臨時花嫁終了】
《その先 4》
「夕鈴ちゃん、こっちも頼むよ!」
「はーい!ただいま!」
明玉の飯店は、昼時は大忙しだ。
「いやー、助かるよ、夕鈴ちゃんは働き者だから。」
「こちらこそ、ありがとうございます。時間も融通してもらって・・・。」
「何言ってるんだい、水臭いねぇ。」
半年前と同じ会話が、交わされる。
元気な下町の、「汀夕鈴」が、そこにいた。
________________痩せたな。
客に紛れて茶を啜りながら、浩大は目の光を隠した。
ふっくらとしていた頬は、すっきりと痩せ。
胴回りはさらにほっそりとして、腰の優美さを強調する。
客の大半は、夕鈴の姿を眼で追い。
自分の卓に夕鈴がやってくるのを心待ちにしてた。
____________あーあ、これじゃぁ・・・・
お妃ちゃんが嫁ぐのも、時間の問題、だぜ?
いいのかよ。
なぁ。
お偉いさん方の考えてる事は、俺には良く分かんねえけどさ。
陛下。
アンタは、本当に「これ」でいいのか?
卓に勘定を置き。
浩大は目立つことなく飯店を出た。
「___________よう。元気そうじゃねえか。」
浩大と入れ替わりに入ってきた几鍔に、夕鈴は引き攣った笑顔でお茶を出す。
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
「あー・・・・、いつもの。」
「かしこまりました。」
綺麗にお辞儀をして、注文を厨房に伝えて。
今しがたまで浩大が座っていた卓を片付け始めた夕鈴の手が、ピタリと止まった。
「・・・・・・」
不審に思った几鍔が、振り向いたときには。
夕鈴はもう、いつもの笑顔に戻っていた。
「じゃあ、明日も頼むよ、夕鈴ちゃん。」
「こちらこそ、宜しくお願いします。」
頭を下げ、夕鈴は店を出て。
胸元を押さえながら、大通りを足早に歩いた。
脇目もふらず、真っ直ぐに家を目指し、門を潜ると。
そこには、にぱっと笑いながら浩大が立っていて。
「・・・・お久しぶり、お妃ちゃん。」
にこやかに声を投げた。
「良く気付いたね。」
「・・・あんな花、下町には咲かないもの。」
浩大が勘定と一緒においていった、一枚の花弁。
臨時花嫁の髪を飾っていた、大きな桃色のそれは、下町にはない。
「あのさ・・・・これは、俺の一存なんだけど。お妃ちゃんには、知らせておいた方がいいと思って。」
浩大は言いにくそうに、口を開き。
「陛下、正妃を迎えるって。」
告げた。
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《その先 4》
「夕鈴ちゃん、こっちも頼むよ!」
「はーい!ただいま!」
明玉の飯店は、昼時は大忙しだ。
「いやー、助かるよ、夕鈴ちゃんは働き者だから。」
「こちらこそ、ありがとうございます。時間も融通してもらって・・・。」
「何言ってるんだい、水臭いねぇ。」
半年前と同じ会話が、交わされる。
元気な下町の、「汀夕鈴」が、そこにいた。
________________痩せたな。
客に紛れて茶を啜りながら、浩大は目の光を隠した。
ふっくらとしていた頬は、すっきりと痩せ。
胴回りはさらにほっそりとして、腰の優美さを強調する。
客の大半は、夕鈴の姿を眼で追い。
自分の卓に夕鈴がやってくるのを心待ちにしてた。
____________あーあ、これじゃぁ・・・・
お妃ちゃんが嫁ぐのも、時間の問題、だぜ?
いいのかよ。
なぁ。
お偉いさん方の考えてる事は、俺には良く分かんねえけどさ。
陛下。
アンタは、本当に「これ」でいいのか?
卓に勘定を置き。
浩大は目立つことなく飯店を出た。
「___________よう。元気そうじゃねえか。」
浩大と入れ替わりに入ってきた几鍔に、夕鈴は引き攣った笑顔でお茶を出す。
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
「あー・・・・、いつもの。」
「かしこまりました。」
綺麗にお辞儀をして、注文を厨房に伝えて。
今しがたまで浩大が座っていた卓を片付け始めた夕鈴の手が、ピタリと止まった。
「・・・・・・」
不審に思った几鍔が、振り向いたときには。
夕鈴はもう、いつもの笑顔に戻っていた。
「じゃあ、明日も頼むよ、夕鈴ちゃん。」
「こちらこそ、宜しくお願いします。」
頭を下げ、夕鈴は店を出て。
胸元を押さえながら、大通りを足早に歩いた。
脇目もふらず、真っ直ぐに家を目指し、門を潜ると。
そこには、にぱっと笑いながら浩大が立っていて。
「・・・・お久しぶり、お妃ちゃん。」
にこやかに声を投げた。
「良く気付いたね。」
「・・・あんな花、下町には咲かないもの。」
浩大が勘定と一緒においていった、一枚の花弁。
臨時花嫁の髪を飾っていた、大きな桃色のそれは、下町にはない。
「あのさ・・・・これは、俺の一存なんだけど。お妃ちゃんには、知らせておいた方がいいと思って。」
浩大は言いにくそうに、口を開き。
「陛下、正妃を迎えるって。」
告げた。
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