2013_07
26
(Fri)15:18

その先 4

【設定・臨時花嫁終了】



《その先 4》





「夕鈴ちゃん、こっちも頼むよ!」

「はーい!ただいま!」


明玉の飯店は、昼時は大忙しだ。


「いやー、助かるよ、夕鈴ちゃんは働き者だから。」

「こちらこそ、ありがとうございます。時間も融通してもらって・・・。」

「何言ってるんだい、水臭いねぇ。」


半年前と同じ会話が、交わされる。

元気な下町の、「汀夕鈴」が、そこにいた。



________________痩せたな。


客に紛れて茶を啜りながら、浩大は目の光を隠した。


ふっくらとしていた頬は、すっきりと痩せ。

胴回りはさらにほっそりとして、腰の優美さを強調する。


客の大半は、夕鈴の姿を眼で追い。

自分の卓に夕鈴がやってくるのを心待ちにしてた。




____________あーあ、これじゃぁ・・・・


お妃ちゃんが嫁ぐのも、時間の問題、だぜ?


いいのかよ。

なぁ。

お偉いさん方の考えてる事は、俺には良く分かんねえけどさ。



陛下。


アンタは、本当に「これ」でいいのか?



卓に勘定を置き。

浩大は目立つことなく飯店を出た。






「___________よう。元気そうじゃねえか。」


浩大と入れ替わりに入ってきた几鍔に、夕鈴は引き攣った笑顔でお茶を出す。


「いらっしゃいませ。ご注文は?」

「あー・・・・、いつもの。」

「かしこまりました。」


綺麗にお辞儀をして、注文を厨房に伝えて。

今しがたまで浩大が座っていた卓を片付け始めた夕鈴の手が、ピタリと止まった。


「・・・・・・」


不審に思った几鍔が、振り向いたときには。

夕鈴はもう、いつもの笑顔に戻っていた。




「じゃあ、明日も頼むよ、夕鈴ちゃん。」

「こちらこそ、宜しくお願いします。」


頭を下げ、夕鈴は店を出て。

胸元を押さえながら、大通りを足早に歩いた。


脇目もふらず、真っ直ぐに家を目指し、門を潜ると。

そこには、にぱっと笑いながら浩大が立っていて。


「・・・・お久しぶり、お妃ちゃん。」


にこやかに声を投げた。


「良く気付いたね。」

「・・・あんな花、下町には咲かないもの。」


浩大が勘定と一緒においていった、一枚の花弁。

臨時花嫁の髪を飾っていた、大きな桃色のそれは、下町にはない。



「あのさ・・・・これは、俺の一存なんだけど。お妃ちゃんには、知らせておいた方がいいと思って。」


浩大は言いにくそうに、口を開き。


「陛下、正妃を迎えるって。」


告げた。





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