2013_07
26
(Fri)13:03

その先 2 

【設定・臨時花嫁終了】



《その先 2》





秋の気配が深まった頃、姉さんは急に帰ってきた。

なんだか前よりもずっと、大人びて見えた姉さんは。


「やっとバイト終わったの。予定よりずっと長く勤めたから、ずいぶんとお手当ても頂けたわ。だから、学費の心配はもうしなくていいのよ。」


落ち着いた声で、僕に言って聞かせた。


李翔さんは?

出かけた言葉は、きっと訊いちゃいけない事だろうから。


僕は、できるだけ明るく。


「よかった、姉さんがいなくて寂しかったんだ。これで元通りだね!」


無邪気に返事をした。

にっこりと微笑み返す姉の頬に残る。

___________涙の後に、気付かぬ振りをして。







「お邪魔します、おばば様は?」

「お、夕鈴ちゃん!」


バイト終了の挨拶に、夕鈴は几家を訪れた。


「・・・やっと目ぇ醒めたか。ばか女。」


そっと夕鈴の背後に立った几鍔は、くしゃ、と薄茶の髪を撫でる。

その掌の大きさと温もりに、違和感を感じ。


____________違う。


夕鈴は、黎翔の面影を探す自分に気付いた。


だめだ。

こんなんじゃ、だめだ。





『ごめん、夕鈴。ごめん。』

美しい顔を苦しげに歪め、何度も何度も。

『ずっと、一緒にいたいのに。君だけが、欲しかったのに。』

軋むほど強く抱き締めてくれた、腕。

『________心は、いつも君の側に。』

高貴な涙を私にくれた、あの人に。


私ができる事は。


生きる事。

私らしく。

あの人の心にいる「私」らしく。



そうよ。

前を見なきゃ。



夕鈴は、ぎゅっ、と拳を握り。

ぱっ、と、元気良く振り返り。


「几鍔!いいバイト紹介して!!」


威勢良く言い放った。




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