2013_07
23
(Tue)11:55

昔話 2

【設定・未来・お子さまなし】
【オリキャラが色々と出ます】
【陛下の過去捏造】




《昔話 2》





吹き抜ける、涼しい風。

さらりとした空気。

冷たくて甘い水。

見たことのない小鳥たち。

水を基調に整えられた庭園と、爽やかな設えの、離宮。




「正妃様、こちらの四阿は蓮が見頃でございます。」

「あちらの庭園には、珍しい小鳥が・・・・」

「宮殿内に小川を引き込んでございます。お御足を浸すのに宜しいかと・・・」


女官長・秀麗は、愛らしい正妃のために色々と腐心し。


『都から離れた環境で、日頃のお疲れを取って頂きたい。』


との、王宮女官長の意を受け、甲斐甲斐しく夕鈴の世話を続けていた。


最初の数日こそ、秀麗に警戒心を抱いていた夕鈴だが、その穏やかな笑顔と心遣いに、徐々に心を開き。

滞在から七日が過ぎた頃には、すっかりと打ち解けていた。



「正妃様、今夜はお部屋に少々変った趣向を・・・・」


少し悪戯っぽく笑う、秀麗に。

夕鈴もつられて笑顔になる。


「ふふ。なんでしょう。」

「夜になってのお楽しみ、ですわ。」


くすくすと笑い、秀麗は礼を取って退室し。


それと入れ替わるように、黎翔が現れた。


「・・・・随分と、楽しそうだな。」

「ええ、陛下。秀麗さんとお話ししていて・・・・」






ここ数日、夕鈴は口を開けば『秀麗』と言う。


あいつは昔から、そうだった。

人の物を取るのが、大好きで。


毒見と称して、何度饅頭を取り上げられた事か。



李順だって相当やられた。

この課題が終わるまでは部屋から出てはなりません、とか言って。

自分は、芙蓉と水遊びに興じるんだ。

涼しげな水音を、盛大に立てて。

李順は蒸し風呂のような室内で、必死に書簡と格闘していたっけ。



_________王宮の女官長からの言伝?


うそだ。

絶対、嘘だ。



あいつは。


秀麗は・・・・・絶対、面白がっている。


くそう。

いつもいつも、お前の思うとおりにさせてたまるか。


私の兎を、易々と手に入れられると、思うなよ?





じっと自分を見つめる黎翔に、夕鈴は不思議そうに首を傾げ。


「・・・どうかなさったんですか?」


瞳を覗き込んだ。


「なんでもないよ。」


ふっ、と笑う夫の瞳に、少しの翳りを感じながら。




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