2013_07
18
(Thu)11:39

祝福・続

【設定・バイト終了】


《祝福・続》





あと、半月。

今満ちている月が、欠けてなくなるまで。

それで、おしまい。

私の想いも、おしまい。


消えてなくなれば、いいのに。

月と一緒に。



私も。









花の種が芽を出し、庭を飾り。


私は、変らぬ日常を過ごす。


早朝に目覚め、朝食を作り。

家事をして、バイトに明け暮れて。

そんな毎日を、いつも通り過ごしていたのに。



「・・・なあ、夕鈴。話しがあるんだが。」


父さんが、突然持ってきた、結婚話。


私を、どこかの貴族のご子息が見初めたんだって。

断ると、父さんの首どころか、上司の首まで飛ぶんだって。

結構上級な貴族だから、王宮に呼ばれることもあるんだって。


「・・・耐えられるか?夕鈴。」


下町から見る王宮だって、辛くて眼を背けたくなるのに。

本物の王宮で、あの人の姿を見てしまったら。

あの人が、私じゃない誰かを腕に抱く、その姿を、もし、見てしまったら。

きっと。



「・・・父さん。私なら、大丈夫よ。」


にっこり笑って、是を伝えた。





そよぐ風が、花の香りを運ぶ。

いつも髪に挿していた、花。

『美しいな』って、貴方が言ってくれた、花。



嫁ぎ先から届けられた花嫁衣裳は、本当に立派で。


「・・・・まるで、お妃衣装みたい。」


ふっ、と、笑みが浮かぶ。

衣装に焚き染められた香は、なんだか覚えのある香りで。

花の香りと相まって、私を包む。


そう。

これは。

この、香りは。


貴方の。


「・・・・っ・・・・く、ぅっ・・・・・・」


だめ。


艶やかな黒髪と、優しい指先と。


______________夕鈴。


ふわりと笑う、優しい笑顔。


_____________君が私の妃だ。


切ない顔。


「あ・・・・あ・・・・・」


手が震える。

香りに、包まれる。


「____________へい、かぁ・・・・へい、か・・・・・陛下ぁっ!!」




ひとしきり、泣いて。

ふらふらと、庭に出て、月を、見上げ。


風にそよぐ花弁に、触れると。


___________香る。


懐かしい香りが。


月明かりが遮られ、大きな腕が、私を包み。


「____________ゆう、りんっ!!」


夢にまで見た温もりが、私を包む。


うそ。


「・・・・・う、そ」

「うそじゃない。」

「だ・・・って。わたし、」

「君は、私の妃だ。」

「・・・・・っ」

「____________戻ろう。夕鈴。」



門前に停まった馬車の前には、李順さん。

いつも通りの表情で。

いつも通りの口調で。


「__________お妃様。後の事は私にお任せを。今は、一刻も早くお戻り下さいませ。」


淡々と、告げる。


「今回の雇用期間は、無期限。一生をかけて、私がお仕え申し上げますから・・・そのおつもりで。」


笑顔を、浮かべて。





そう、きっと。

最初の、最初から。


初めて会った、あの時から。



「_____________僕は、君が。」


「_____________私は、貴方が。」



好き。





貴方への変らぬ想いを、この花に寄せて。

君への心からの想いを、この花に寄せて。


貴方に。

君に。


届けよう。


君に。

貴方に。
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