2013_07
12
(Fri)14:20

白詰草 7

【設定・臨時花嫁】
【いまさらですが、捏造あります。】



《白詰草 7》



王宮。深夜。





「_________分かりましたか?」


李順は、屋根裏に控える部下に、問う。


「はい。捕縛は済みました。正気を保たせ、牢につないでおります。」

「ご苦労様です。この事は、陛下には内密に。」

「・・・陛下には、内密に、ですか?」


驚く部下に、何気なく応える。いつものように。


「刺客は、女でしょう?・・・陛下が『尋問』なされば、吐かせる前に正気を失わせてしまいますよ。」

「_________承知いたしました。」


納得したように頷く部下が、立ち去る気配を追い。

遠ざかるそれを確認し、ほうっ、と安堵の息を吐く。


「・・・・これで。陛下を胸に抱き続けるより・・・これが、夕鈴殿のためにも______陛下のためにも、『最善』な、はず。」



そう。


きっと、これでいい。


なのに。


__________どうしてこんなに・・・・・



「・・・私にも、まだ良心が残っていましたか。」


自嘲気味に、笑い。


李順は酒盃を傾けた。











「・・・戻ったみたいだな。」


浩大は李順の部屋から出てきた配下を待っていた。


王宮の隠密の指令系統の頂点にいるのは、張元老師。

李順の使っている隠密も当然、張元の支配下にある。


表向きでは。

王宮の『裏』は、李順。

後宮は、老師。

と、住み分けがなされてはいるが、そんなものは、建前に過ぎぬ。



________黎翔が即位する、ずっと以前から。

老師は全ての隠密を統率してきた。

それは、今も変わりなく。

そして、それを、李順は知らない。





「じいちゃんから言われてるだろ?俺の質問に答えろ、って。」

「はい。承知しております。」


_______じゃあ。


浩大は、にっ、と笑い。

ずいっと、音もなく、李順の部下に近寄る。


「刺客は、捕らえたな?________話せ。すべて。」


夜目の効く、獰猛な瞳が、きらりと月光を反射した。












「________どうだ、老師。」


李翔の姿のまま、黎翔は後宮に戻ってきた。


灯火の下、山積みの書籍を繰りながら、張元は筆を走らせ。


「・・・・もう少々、お待ち下され・・・」


頁をめくる音だけが、部屋に響く。




________夕鈴。



おかえりなさい、陛下。

お茶をどうぞ、陛下。

陛下にされて、いやなことなんて・・・



愛らしい唇が紡ぐ、僕の敬称。

君の心を蝕む、僕の、私の、『敬称』。

『陛下』を消されても、『李翔』を受け入れた夕鈴。

涙を流し、僕に助けを求めた、夕鈴。


暗示にかけられても抗い続ける、夕鈴の心は、強い。


何か方法があるはずだ。



暗示などに負ける夕鈴ではなく。

諦める私でも、ない。



「・・・解毒は・・・比較的容易いのですが・・・やはり問題は、暗示の解き方、ですな。」


思いにふける黎翔を、張元の声が現実に引き戻した。


「難しいのか。」

「解く方法自体は単純ですが、問題は。」

「なんだ。早く言え。」

「かけた者にしか解けぬ、ということです。」

「なるほど。」


事も無げに応えた黎翔を、張元は怪訝な顔で見やった。


「_________要は、刺客を捕らえればよい。そういうことだな?」

「そ、それはそうですが・・・素直に暗示を解くとはかぎりま」


張元の言葉が終わらぬうちに。

黎翔の姿は、回廊に消えた。





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