2013_07
11
(Thu)20:30

白詰草 3

【設定・臨時花嫁】
【夕鈴が痛いです】



《白詰草 3》




老師の庵の、奥。

ちょっと見には、そこに部屋があるとは分からぬよう工夫された、隠し部屋。


「・・・・わしのことは、覚えておるか?」

「何言ってるんですか、老師。当たり前じゃないですか!」


夕鈴の顔色は、だいぶ元に戻り。

不安は消えぬ様子だが、目に力が戻ってきていた。


「ほかに、誰を覚えておる?」

「誰って・・・・老師、浩大、李順さん、侍女さんたち、方淵、水月さん、・・・・」


すらすらと述べる夕鈴に、老師は怪訝な目を向ける。


「・・・家族は、どうじゃ?下町の友人などは?」

「青慎のことも、父さんの事も、明玉のことも・・・几鍔のことも・・・覚えてます。」


むぅ、と唸った老師は、矢継ぎ早に質問を繰り出す。


「花の宴は?夏の離宮での星祭は?冬に行った、温泉付の離宮は?」

「覚えています。」


「____________では、陛下は?」

「・・・・陛下・・・・へい、か・・・・」

「覚えておらぬか?思い出せぬか?・・・陛下の御髪のお色は?御眼のお色は?」


畳み掛けるように、張元は問い。

夕鈴は、寄せ来る吐き気と戦いながら、自分の中からぽっこりと消えてしまった、何かを探す。


「・・・・ぐっ・・・・う・・・・」


気持ち、悪い。


陛下。

・・・陛下。


陛下って、どんな方なの?


最初にお会いしたのは・・・・バイトの、面接の、はず。

・・・・李順さんに連れて行かれた部屋で・・・・綺麗な衣装に着替えさせられて・・・


_________誰かが、私を見下ろし____________



ズキン


頭の奥が、鋭く悲鳴を上げた。



__________忘れよ。


な、に?

へいか、って、だれ?


__________消せ。永遠に。


ズキン


__________消さねば、壊す。


いた、い。




頭を抱えて蹲ってしまった夕鈴の背を、張元は、優しく擦り。



「・・・・無理させて、すまなんだ。」


夕鈴を寝台へ誘い、薬湯を飲ませ。

とろとろと眠りに引き込まれていく様を、脈を測りつつ、確認する。


やがて、安らかな寝息が部屋を満たし。

張元のこめかみから、汗が伝い。


「____________これは・・・・手強い。」


低い呟きが、もれた。



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