皇子の願い⑥
【設定・未来・お子様あり】
【ご注意!オリキャラ(お子さま三人・李順さんの奥さん・その他)でまくりです。】
【捏造の塊でございます】
【ほぼ、お子さま世代がメインの話しです】
☆人物説明
珀清翔(長男にして、李順の長女と夫婦。李家に居候中。)
珀明翔(次男にして、時期国王・・・なのは、まだ内緒。)
珀桜花(三人兄弟の末子。長女にして、女王。几鍔の嫁になることが決まっている。)
李芙蓉(李順さんの奥様。)
李玉華(李順さんの長女。清翔の妻。姉さん女房。)
この他にも、オリキャラさんが出てくる予定です。
苦手な方は、ご無理なさらず!!
《皇子の願い6》
李家。
「お帰りなさいませ、お兄様。」
芙蓉は今日も心から嬉しそうに微笑み、李順を出迎える。
「今帰りました、芙蓉。・・・・玉華は?」
最近の李順は、帰邸時に必ず娘の様子を尋ねる。
なにかある、と察しはするが、芙蓉は夫を問い詰めるような事はしない。
____________話さない理由がおありなのね。
夫の微細な表情の変化から、芙蓉はその心情を推し量る。
「・・・今日は特に外出もせず、ゆっくりと書画を楽しんでいたようですわ。」
おっとりと、芙蓉は答え。
「・・・・そう、ですか。」
李順は、ほっとため息をついた。
___________夜半。
明翔を待つために王宮に泊まることになった清翔が、冴え冴えとした月を見上げていた頃。
「・・・・・ごめんなさい・・・・」
蒼く美しい夜空に浮かぶ月を見上げ、声を震わせて、呟き。
李家から、玉華の姿が・・・・消えた。
*
翌日、早朝。
王宮では。
「清翔様っ!!」
王宮の自室で、着替えを済ませたばかりの清翔のもとに、李順が駆け込んできた。
異変を察し、清翔の気が尖る。
「玉華、がっ!」
「っ!」
清翔は、飛び出した。
_________王宮の、外へ。
王宮の外門には、すでに浩大が待機していて。
「足取りは。」
久方ぶりの清翔の怒気交じりの声音に、浩大ですら一瞬口ごもる。
「・・・わからない。」
「っ!」
ぴたりと清翔の足が止まり、浩大が静かに報告する。
「玉華ちゃんが持ち出した路銀は、かなりまとまった額だ。足が付かないよう、馬車を借り切ってどこか遠くまで行くつもりだと思う。馬車を長期間借りた女性を捜索中。でも、金で口止めしている可能性もあるから・・・そうなると、捜索に時間がかかって、足取りはますます追い辛くなるね。さすがは李順さんの娘だ。簡単には探せない、かな。」
感心した口ぶりの浩大を、清翔は睨みつけた。
「李家に、なにか書置きは。」
「探すな、と一言。」
「________『探すな』だと・・・・?」
清翔の冷たい声音に、浩大の背筋を懐かしい感覚が這い登る。
____________さすが陛下の息子だ。怒気だけで人を殺せるよ。
清翔の紅い瞳が濃く色を変え。
口元には、鮮やかな笑みが浮かぶ。
本気で怒ったときにだけ見せる・・・・極上の、笑み。
「・・・・絶対に、見つける。」
清翔は、李家に向って走り出した。
*
同時刻。几商店。
「なんだって?!荷馬車が足りねえ、だと?」
朝から几鍔の大声が響き渡る。
「すいません、アニキ。なんでも急に荷馬車を数台買い上げたいってやつがいたらしくて。」
「だからって、『足りねえ』じゃぁ・・・・こっちが困るんだがな。」
うーん、と考え込んだ几鍔の後ろから、遠慮がちに明翔が声をかけた。
「あのー・・・泊めてもらってありがとう。僕、帰るね。」
「おお、気をつけてな!・・・あんまり、考えすぎるんじゃねえぞ?お前が思うより、世の中もっと単純にできてんだ。」
「うん、ありがとう、おじさん。」
明翔は、王宮に向って歩き出した。
早起きが常の下町だが、さすがにまだこの時間は人通りもほとんど無く。
明翔は、まっすぐに王宮を目指す。
__________世の中、もっと単純、か。
人を安心させる、几鍔のおおらかな笑顔が浮かぶ。
__________悩まずに、『彼女』に伝えてみようかな。
僕の、『願い』を。
昨日とは打って変わった足取りで、明翔は歩き続け。
「・・・・・?」
異変を、感じ取った。
早朝の空気をかき乱すように走る、あれは・・・兄上、か?
「兄上?!」
「明翔!お前も来いっ!!」
有無を言わさず、腕を引っ張られ。
玉華が身を隠した経緯を聞かされながら、明翔は李家に連れ込まれた。
*
離宮。
「________陛下っ!」
最近の朝寝のおかげで、黎翔はまだ寝室にいた。
「なんだ、朝から。」
不機嫌そうに返事をする黎翔に、浩大は苛ついた声を投げる。
「起きろよ!アンタがいつまでもぐずぐずしてるから、玉華ちゃんが消えたんだよ!!」
「っ?!玉華が、消えた?!」
「少し考えれば、分かる事だったろ?!玉華ちゃんが、太子が即位後に自分が正妃になるのは得策じゃない、って考えてたの、あんた知ってたよな?あの李順さんの娘だぞ?こっちが先手打っておかなきゃ、って・・・・さんざん、言ったぞ?俺は!!」
「・・・・ちょ、浩大、陛下、なんの話し?」
騒ぎを聞きつけ、寝室に戻ってきた夕鈴にかまわず、浩大は吠える。
「あんなに!!あんなに太子が大切にしてたのに!いつまでも昔の事にこだわってるあんたのせいで!どうすんだよ!陛下!!」
ぜえぜえと、肩を上下させて、浩大は黎翔を怒鳴りつける。
初めて見る浩大の形相に絶句していた夕鈴が、ようやく口を開いた。
「___________陛下、浩大。きちんと、教えて。」
・・・黎翔は、うなだれて説明を始めた。
曰く。
明翔が数週間前に翠国の皇女を見初め、妃に望んでいること。
その皇女・玉水蘭は、第一皇女にして国王唯一の、直系長子であること。
それを知った明翔が、思い悩んでいる事。
そして。
明翔の悩みを察した清翔が、『太子』に戻る覚悟を決めた事。
玉華が、自分には『正妃』の価値がない、と、譲らぬ事。
そして。
「明翔が、翠国に入る。」
それで、全てが解決する、こと。
そして。
どうしても、自分がそれを許せない、こと。
手早く、だがしっかりと全てを語り終えた黎翔は、力なく寝台に座り込み。
「_____________私の、せいだ・・・・」
低く、呻く。
そして。
「行くぞ、浩大。」
「ちょっと待って、私も行きます!」
李家に、向った。
皇子の願い⑦へ
【ご注意!オリキャラ(お子さま三人・李順さんの奥さん・その他)でまくりです。】
【捏造の塊でございます】
【ほぼ、お子さま世代がメインの話しです】
☆人物説明
珀清翔(長男にして、李順の長女と夫婦。李家に居候中。)
珀明翔(次男にして、時期国王・・・なのは、まだ内緒。)
珀桜花(三人兄弟の末子。長女にして、女王。几鍔の嫁になることが決まっている。)
李芙蓉(李順さんの奥様。)
李玉華(李順さんの長女。清翔の妻。姉さん女房。)
この他にも、オリキャラさんが出てくる予定です。
苦手な方は、ご無理なさらず!!
《皇子の願い6》
李家。
「お帰りなさいませ、お兄様。」
芙蓉は今日も心から嬉しそうに微笑み、李順を出迎える。
「今帰りました、芙蓉。・・・・玉華は?」
最近の李順は、帰邸時に必ず娘の様子を尋ねる。
なにかある、と察しはするが、芙蓉は夫を問い詰めるような事はしない。
____________話さない理由がおありなのね。
夫の微細な表情の変化から、芙蓉はその心情を推し量る。
「・・・今日は特に外出もせず、ゆっくりと書画を楽しんでいたようですわ。」
おっとりと、芙蓉は答え。
「・・・・そう、ですか。」
李順は、ほっとため息をついた。
___________夜半。
明翔を待つために王宮に泊まることになった清翔が、冴え冴えとした月を見上げていた頃。
「・・・・・ごめんなさい・・・・」
蒼く美しい夜空に浮かぶ月を見上げ、声を震わせて、呟き。
李家から、玉華の姿が・・・・消えた。
*
翌日、早朝。
王宮では。
「清翔様っ!!」
王宮の自室で、着替えを済ませたばかりの清翔のもとに、李順が駆け込んできた。
異変を察し、清翔の気が尖る。
「玉華、がっ!」
「っ!」
清翔は、飛び出した。
_________王宮の、外へ。
王宮の外門には、すでに浩大が待機していて。
「足取りは。」
久方ぶりの清翔の怒気交じりの声音に、浩大ですら一瞬口ごもる。
「・・・わからない。」
「っ!」
ぴたりと清翔の足が止まり、浩大が静かに報告する。
「玉華ちゃんが持ち出した路銀は、かなりまとまった額だ。足が付かないよう、馬車を借り切ってどこか遠くまで行くつもりだと思う。馬車を長期間借りた女性を捜索中。でも、金で口止めしている可能性もあるから・・・そうなると、捜索に時間がかかって、足取りはますます追い辛くなるね。さすがは李順さんの娘だ。簡単には探せない、かな。」
感心した口ぶりの浩大を、清翔は睨みつけた。
「李家に、なにか書置きは。」
「探すな、と一言。」
「________『探すな』だと・・・・?」
清翔の冷たい声音に、浩大の背筋を懐かしい感覚が這い登る。
____________さすが陛下の息子だ。怒気だけで人を殺せるよ。
清翔の紅い瞳が濃く色を変え。
口元には、鮮やかな笑みが浮かぶ。
本気で怒ったときにだけ見せる・・・・極上の、笑み。
「・・・・絶対に、見つける。」
清翔は、李家に向って走り出した。
*
同時刻。几商店。
「なんだって?!荷馬車が足りねえ、だと?」
朝から几鍔の大声が響き渡る。
「すいません、アニキ。なんでも急に荷馬車を数台買い上げたいってやつがいたらしくて。」
「だからって、『足りねえ』じゃぁ・・・・こっちが困るんだがな。」
うーん、と考え込んだ几鍔の後ろから、遠慮がちに明翔が声をかけた。
「あのー・・・泊めてもらってありがとう。僕、帰るね。」
「おお、気をつけてな!・・・あんまり、考えすぎるんじゃねえぞ?お前が思うより、世の中もっと単純にできてんだ。」
「うん、ありがとう、おじさん。」
明翔は、王宮に向って歩き出した。
早起きが常の下町だが、さすがにまだこの時間は人通りもほとんど無く。
明翔は、まっすぐに王宮を目指す。
__________世の中、もっと単純、か。
人を安心させる、几鍔のおおらかな笑顔が浮かぶ。
__________悩まずに、『彼女』に伝えてみようかな。
僕の、『願い』を。
昨日とは打って変わった足取りで、明翔は歩き続け。
「・・・・・?」
異変を、感じ取った。
早朝の空気をかき乱すように走る、あれは・・・兄上、か?
「兄上?!」
「明翔!お前も来いっ!!」
有無を言わさず、腕を引っ張られ。
玉華が身を隠した経緯を聞かされながら、明翔は李家に連れ込まれた。
*
離宮。
「________陛下っ!」
最近の朝寝のおかげで、黎翔はまだ寝室にいた。
「なんだ、朝から。」
不機嫌そうに返事をする黎翔に、浩大は苛ついた声を投げる。
「起きろよ!アンタがいつまでもぐずぐずしてるから、玉華ちゃんが消えたんだよ!!」
「っ?!玉華が、消えた?!」
「少し考えれば、分かる事だったろ?!玉華ちゃんが、太子が即位後に自分が正妃になるのは得策じゃない、って考えてたの、あんた知ってたよな?あの李順さんの娘だぞ?こっちが先手打っておかなきゃ、って・・・・さんざん、言ったぞ?俺は!!」
「・・・・ちょ、浩大、陛下、なんの話し?」
騒ぎを聞きつけ、寝室に戻ってきた夕鈴にかまわず、浩大は吠える。
「あんなに!!あんなに太子が大切にしてたのに!いつまでも昔の事にこだわってるあんたのせいで!どうすんだよ!陛下!!」
ぜえぜえと、肩を上下させて、浩大は黎翔を怒鳴りつける。
初めて見る浩大の形相に絶句していた夕鈴が、ようやく口を開いた。
「___________陛下、浩大。きちんと、教えて。」
・・・黎翔は、うなだれて説明を始めた。
曰く。
明翔が数週間前に翠国の皇女を見初め、妃に望んでいること。
その皇女・玉水蘭は、第一皇女にして国王唯一の、直系長子であること。
それを知った明翔が、思い悩んでいる事。
そして。
明翔の悩みを察した清翔が、『太子』に戻る覚悟を決めた事。
玉華が、自分には『正妃』の価値がない、と、譲らぬ事。
そして。
「明翔が、翠国に入る。」
それで、全てが解決する、こと。
そして。
どうしても、自分がそれを許せない、こと。
手早く、だがしっかりと全てを語り終えた黎翔は、力なく寝台に座り込み。
「_____________私の、せいだ・・・・」
低く、呻く。
そして。
「行くぞ、浩大。」
「ちょっと待って、私も行きます!」
李家に、向った。
皇子の願い⑦へ