2013_05
30
(Thu)17:18

雨季

SNSの我が家にて、21000人目のお客様になられたY様のリクエストです!


リク内容は、

『梅雨の時期で雨が続いていたある日、夕鈴はてるてる坊主を作ります。もちろん雨のせいで仕事がいつも以上に山積みになっている陛下の為に。そのてるてる坊主にこっそり陛下への気持ちを書きこんだ夕鈴。それが陛下の手に渡って---。』

という、大変に可愛らしいものでした。

Y様らしい、なんとも愛らしいリクエスト。

私に書けるのか?とドキドキしながら、なんとか書いてみたのですが。


Y様!返品交換いつでも受け付けます!!




【設定・原作沿い】




《雨季》




「・・・・李順。」


「なんでしょうか、陛下。」


「あのさー・・・雨季って、いつまで?」


「・・・・・天気にきいてくださいよ・・・」


薄暗い。

じめじめする。

気分が悪い。


雨季がないと困るけど・・・・やっぱり、あまり好きじゃない。









今年の雨季はいつもより半月ほども早く訪れ。

しっかりとした雨がもう何日も降り続いている。


夏の遠慮のない太陽に備え、水瓶が潤うのは_______大変に、喜ばしい。

だが。

「・・・・降り過ぎだ・・・・」

黎翔はぼそっと呟く。


王都周辺の運河は決壊寸前。

標高の低い地域では、避難準備を始めている。


「・・・少しでも、晴れ間が覗かねば・・・」

作物が、やられる。


幸いにして、ここ数年は豊作続きだったので、食糧不足の心配は薄いが・・・・


「李順・・・・雨乞いでも、する?」


ぐったりした様子の黎翔を、李順はうんざりと言った表情で見つめた。










「そうですか、今日も・・・・」


尋常でない降雨のおかげで、黎翔が後宮に戻れなくなって、もう二週間。


「陛下のご様子は、いかがですか?」


王を心配する妃に、陛下付きの侍女は恐縮しながら返答する。


「そ、それが・・・・私共にも、よく・・・」


「え?」


「ここ最近、陛下はご自室にお戻りになられておられません。」


「え?え?」


「王宮の執務室に、お籠りになられて・・・・」


「・・・・それほど、お忙しいのですね・・・・」


妃の美しい柳眉がひそめられ、侍女の胸が痛む。


「も、申し訳ございません!お役に立てず・・・!」


低頭する侍女に、夕鈴はにっこりと笑みを向け。


「気になさらないで下さいませ。貴女のせいではございません。・・・・正直に教えて下さって、ありがとうございます。」


侍女の手をとり、優美に微笑む。


「っ!お妃様!!」


涙を流さんばかりに感激する侍女と、尊敬の眼差しを向ける、妃付きの侍女たち。


___________生涯、お仕え申し上げます!


女官達の心の声が、雨音の響き渡る後宮にこだました。











後宮。立ち入り禁止区域。



「老師、お願いが・・・」

「おお、なんじゃ?」

「あのですね、ハギレで結構なんですが、布を分けていただけませんか?」

「おお?布かの?」

「ええ。あのですね・・・・ちょっと恥ずかしいんですけど・・・・作りたいものがあって。」


えへへ、と照れ笑いする夕鈴を、張元は好々爺の眼差しで見つめ。


「何を作るんじゃ?」


「ちょっと、子ども染みてるかもしれませんが・・・・実は。」


うんうん、と頷きながら、夕鈴の話に耳を傾けた・・・・







「お妃様、何を作ってお出でですか?」


老師のところから帰るなり、何かを縫い始めた妃に、侍女たちは遠慮がちに問いかけた。


「あ、これは・・・・あの・・・笑わないで、下さいますか?」


決まり悪げに返答する妃に、侍女たちは笑みを深める。


__________なんて、お可愛らしい・・・・


「もちろんでございます。」


侍女たちの優しい言葉に安堵した夕鈴は、悪戯がばれた子どものように、もじもじと話し出した。


「・・・最近、陛下が水害対策でお忙しいと伺って・・・・私、何もして差し上げられないので、せめて、てるてる坊主を作ろうかな、なんて・・・」


恥らう妃の愛らしさに、侍女たちの笑みはますます深まり。


「_______お妃様?それでしたら、ちょうど良いおまじないがございます・・・」


__________こそこそ、くすくす。


楽しげな雰囲気が、妃の部屋を満たした。











その頃、執務室では。


「_____________陛下。すこし休憩を取りませんと・・・」


疲労の色が濃い顔を曇らせ、李順が黎翔に休息を勧めていた。


「・・・・今夜こそは、後宮に帰る。・・・だから、休まん。」


目の下に隈を作りながらも、黎翔の右手は休むことなく書物をめくり、左手は筆を走らせる。


「陛下。官吏たちも相当疲弊しております。一刻ほどの休息を。」


ふぅ、とため息をつく側近の声音の弱さに、黎翔はようやく顔を上げ。


「・・・・・・お前も顔色が悪いぞ。」


「そうでしょうか?」


「_________では、休憩、だな。」


素早く立ち上がった黎翔は、さっさと後宮へ足を向けるのだった。


「はい。」


黎翔を見送った李順は、官吏たちを見渡し、おもむろに口を開く。


「・・・・さあ、一刻だけとはいえ、時間が取れました。・・・・今のうちに、差し戻し案件等のご相談があれば、私がお聞きしますが?」


不機嫌な狼陛下の冷え切ったオーラに包まれていた執務室が、にわかに活気付いた。












「_______________なんだ、これは?」



後宮への回廊を渡る黎翔の目に、目なれぬ物が飛び込んできた。


夕鈴の部屋に付近の回廊の庇にぶら下がっている、何かかわいらしい物体。


若草。桃。白。青。萌黄。


色とりどりの・・・これは、てるてる坊主?


「・・・なぜ、こんなものが後宮に?」


思わず手に取ると、ほんのりと夕鈴の香が薫る。


「・・・きみの仕業か。」


くすり、と笑ってしまった。


「ほんとうに、きみは・・・・・」


鬱陶しくて、薄暗くて、陰湿な、後宮。


「________雨季を終わらせる時期・・・・なのか?」


夕鈴の香りがする、晴天を呼ぶ人形にそっと口づけると、カサッと不自然な感触がした。


「・・・・なんだ?」


不審に思った黎翔は、人形の首に巻かれた紐を解き、中身を確かめ________絶句する。


『陛下のお仕事が少しでもお楽になりますように』これは、若草色の。

『陛下が健康でいらっしゃいますように』これは、桃色。

『陛下のお心がいつも安らかであられますように』これは、青。

『陛下がいつも笑顔でいらっしゃいますように』これは、萌黄。


そして。


最後の白に入っていた紙片を握り締め、黎翔は走り出した。




『いつまでも、陛下のお側にいられますように』




後宮の、長かった雨季が明けるのは・・・・・・・・・・きっと、もうすぐ。

C.O.M.M.E.N.T

感涙ですわっ!

あさ様!なんて可愛らしくて、爽やかで、胸が締め付けられるお話なんですか!?
やはり、白!染まらぬ思いは白ですわね?
嗚呼、走り出して夕鈴をどうするおつもり?
きっと甘い甘い・・・ピーーー。
久しぶりにピー出た(笑)
しつこいようですが、政務室をにわかに活気付ける側近殿の機転が素晴らしく・・・(#^.^#)
出来る男って最高!!

2013/05/30 (Thu) 18:21 | 羽梨 #- | URL | 編集 | 返信

Re

よかったー・・・可愛らしく書けたかどうか、心配してたんですよ。
ほら、黒とかピンクは書きやすいんですが、白はねぇ。(こら)
夕鈴は白兎ですから、白にしてみました。純白です!
走り出した陛下は止まりません。笑
とりあえず、口付けは必須かと!!
李順さんに羽梨さまが引っかかって、ほくほくですよ。ふふ。

2013/05/30 (Thu) 19:06 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

ほろり

泣けました
良いお話をありがとうございますです

2013/05/30 (Thu) 22:59 | おりざ #seqx95NU | URL | 編集 | 返信

Re

こめんとありがとうございます。
泣けましたか?ほんとに?(こら)
嬉しいです♪

2013/05/31 (Fri) 13:33 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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