2013_05
23
(Thu)10:46

正妃の家出

SNSにて14000Hitを踏んでくださった、Gさまからのリクエストです。




【設定・未来夫婦・お子さまあり(オリキャラ皇子様二名・清翔・明翔)】



《正妃の家出》




「私だ。」
「いえ、私です。」
「だめです、私が。」

国王一家の居間では、今日も不毛な争いが繰り広げられていた。


「・・・陛下、清翔、明翔。私がこちらの椅子に座れば問題な」

「「「だめ!!!!」」」

親子揃って叫ばれ、夕鈴は黙った。



ことの原因は、長椅子。


誰が夕鈴の隣に座るかで、揉めに揉めているのだ。



実は、揉めるのはこれだけではない。

食卓に座る順序でも、揉める。

湯殿に誰と入るかも、揉める。

寝室に入るときも、揉める。


「僕が!」
「私が!」
「僕も!」

一日中、三人は夕鈴を取り合い。

________人知れず、夕鈴は疲弊していた。










「おはようございます、陛下・・・・」

目覚めて一番に目にするのは、愛しい夫。
今朝も嬉しげに自分を覗き込む彼に、頬が緩む。

まだ半分眠った頭で、夕鈴は夫の抱擁を受け入れ、うとうとまどろんでいたのだが。


首筋に柔らかい感触を感じ、覚醒する。

「________っ!陛下!ちょ、ちょっとやめて下さい!!」

頬を朱に染めて全力で抵抗するも、黎翔に敵うはずもなく。

「昼も夜も子ども達に邪魔されて・・・足りん。」

にやり、と見下ろす夫を睨みつけるしか、術はなく。

閉じた膝を割られ、深く抱きこまれ、抗うことも出来ず。

朝から翻弄される自分に情けなさを感じつつも、視界が霞みだした時・・・

微かに聞こえた侍女たちの会話から、皇子達が起き出したのを察し、夕鈴は慌てた。


夕鈴は、自分の唇を塞ぐ生温かいものから必死に逃れ、懇願する。

「・・・も、おねがいです・・・・おきな、きゃ・・・」

痺れる舌を必死に動かし、甘く疼く身体を起こすが、逃がしては、もらえず。

「___________ダメだ。足りない。」

我儘に自分を求める夫に、夕鈴の中で何かが弾けた。


「もう、知りませんっ!!」

ボロボロと涙が零れ、頭が真っ白になる。

「もう、いやっ!!!一人に、して!!!!」

頭の中がキーンとして、自分が何を叫んでいるのかも、わからず。


「っ!待て!夕鈴!!」


追いすがる声から逃れるように、夕鈴は走り出した。



___________どこか、一人になれる場所。


そこだけを、目指して。










「__________陛下、皇子様方。」

「「「_________はい。」」」

「だから、申し上げたでしょう?!やりすぎだ、と!!!」

「「「はい・・・」」」

「正妃様の御身は、お一つです!それを三人がかりで取り合って!!」

「「「・・・・・だって」」」

「だって、じゃありません!!特に、陛下!」

「はい・・・」

「大人でしょう?!」

「夕鈴は、僕のだ・・・」

「まだ言いますか?!」



ふぅ、とこめかみを押さえ、李順は宙を見上げ。

「正妃様にも、少し休息が必要でしょうから・・・・少しの間、離宮へ静養にでも・・・」

「「「僕もついて」」」

「だまらっしゃい!!!!」

李順がキレかけた、その時。


「_________陛下っ!まずい!!!」

浩大の声が、一瞬で空気を変えた。


「なんだ。」

黎翔の声が低く放たれ、清翔と明翔、李順の視線が浩大に注がれる。

「・・・お妃ちゃん、まじで怒ってて・・・『ついてくるな!』って・・・・逃げられちゃった。」

__________青ざめる浩大を、六つの紅玉が睨み付けた。








遡ること、一刻前。

下町では、兎と隠密の鬼ごっこが繰り広げられていた。



「おじさん!ちょっと『道』借りるわよ!」

「おお、夕鈴ちゃん!久しぶり!」

「おばさん、通るわね!」

「久しぶりだね!夕鈴ちゃんならいつでも歓迎だよ!」

「ありがと!」


するすると『道』を通り抜け、夕鈴は向う。

一人になれる場所__________あそこに行けば、きっと。



「待ってくれよー!」


背後から浩大の声がするが、夕鈴は止まらない。


「おい!あんた!なんだよ人の店の中を!」

「悪いっ!通してくれ!」

「何言ってんだ、知らん者を通せるわけないだろ!」

「何すんだい、あんたに貸す『道』なんてないよ!出ておいき!」

「ああ、もう・・・なんでもいいから、通してくれよ!」


するりするりと、下町商店街の『道』を抜けていく兎と、それを追う隠密の鬼ごっこ。

圧倒的に、隠密に分があると思われたそれは・・・意外な伏兵によって戦況を覆された。


兎の『道』は、道ではなく。

商店から商店へ通り抜ける、いわば『裏道』。

それぞれの商店は複雑に繫がり合い、行く先は分かたれ、他所者に『道』は使えない。


______________くそっ、こんな『道』があるなんて、知らなかった!


浩大は、歯噛みした。




夕鈴は、向う。

さわさわと風が吹く、あの場所へ。

一人きりになれる場所へ。

『一人』でも、『独り』じゃない・・・・あの場所へ。











夕鈴失踪の報告を受けた、王宮では______狼同士の見苦しい争いが起こっていた。


「________父上がしつこいから。」

「いや、清翔がいつも一緒に寝たがるから・・・・」

「父上が無理に膝に乗せるから!」

「・・・明翔がいつも夕鈴と湯殿に入りたがるから・・・」

「「・・・・父上、が!!」」

「「お前たち、が!!」

「「「悪い!!!」」」



終わらない争いに終止符を打ったのは、李順。

ダンッ!!!

怒りも露な李順により、黒檀の机が派手な音を立て、狼達は押し黙った。

「・・・いつまで不毛な言い争いをなさってるんですか。お早く探しに行かれないと、政務が滞るのですが・・・」

額に青筋を浮かべ、書簡を指差し、李順は眼鏡を光らせる。

「・・・それとも。正妃さまを放って、ご政務に臨まれますか・・・?」

ぴくぴくと震える指先が・・・・李順の怒りの程を表していた。




「「「_______すぐ、探しに行きます」」」

「良い返事です」

にっこりと李順は微笑み、思い出したように付け足した。


「ああ、そうですね・・・・お早くお戻りいただけるよう、一つ『賞品』をお付けしましょう。」

「「「賞品?」」」

「ええ・・・・『今日中』、かつ、『最初』に正妃様を見つけた方には、五日間の『正妃様と一緒の離宮旅行!』をプレゼントいたします。」


・・・狼達の紅い瞳が光り出し。


「________私が見つけ出すから、お前たちはここで待て。」

「いいえ。父上こそ、ご政務を。」

「私が見つけますから、ご心配なく。」

________________睨み合いながら、『兎狩り』を始める。




足早に去っていく狼達の後姿を眺めながら、李順は。

「_________さて、きっと見つけ出すのはあのお方でしょうから・・・こちらも準備をしなくては。」

遠くの青空を見つめ、今頃は一人で風に吹かれているであろう、正妃に話しかける。

「・・・申し訳ございません、正妃様。少々ご無理をさせすぎましたね・・・」

________己の配慮のなさを、責めるように。










「_________清翔、明翔。」


王宮門外で立ち止まった黎翔は、二人の息子に向き合った。


「お前たちに、浩大をつける。」

「・・・父上、手加減は無用です。」

頬を膨らませる清翔に、黎翔は優しく微笑み。

「・・・・護衛だ。」

朗らかに告げ、走り出した。

___________彼と側近しか知らぬ、夕鈴の秘密の場所へ。




さわさわと、気持ちのよい風が吹きぬける小高い丘に、それはある。

大樹の陰にひっそりと佇む・・・夕鈴の母の墓。

風に吹かれて流れる草原。

供えられた優しい色合いの花々を眺め、黎翔は困惑した表情で呟いた。

「__________どこだ、夕鈴・・・」


狼は、兎の痕跡を見失い、戸惑い。

・・・その瞳は、まるで迷子の子どものようで。

愛しい兎の足跡を探すように下を向き、とぼとぼと歩き出した黎翔に、遠くから声が聞こえた。


「あれ?!」


「_________青慎くん・・・夕鈴を、知らない?」


「え?!さっき、急に帰ってきたと思ったら、またすぐ王宮に戻るって・・・・。って、え?あの、陛下?!」


ものすごい勢いで走り出した黎翔の耳には、もう何も届かなかった。





__________ごめん。

風に吹かれて、花を供え。

心静かに、亡き母に語りかける・・・・強がりな君。

_________ごめん、ね。

求めてばかりで。

子どもじみた独占欲で、君を貪るばかりで。

_________許してくれ。

与えることを忘れていた、私を。

包むことを忘れていた、僕を。

甘えてばかりいた・・・・・僕たちを。




後悔に苛まれつつ、王宮に戻った黎翔が見たものは。

・・・・・のんびりと、後宮で老師相手にお茶を飲む、夕鈴。


「あ、陛下!お帰りなさい!」

いつも通りの、花の笑顔。

________でも、その目尻は少しだけ、赤くて。

ぎゅっと、黎翔は抱擁を贈る。

「__________ごめんね。」

心からの、謝罪とともに。


「・・・・私こそ、勝手に飛び出しちゃって・・・ごめんなさい。」

胸の中で囁く夕鈴の温もりを確かめながら、黎翔は思う。


____________でも、やっぱり。



賞品は、貰わないとね。



くすりと笑う夫を、夕鈴は不思議そうに見上げた・・・・
夏至   
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カッコいい(≧∀≦)

懸賞品を付けて、六つの紅玉を操る李順さん、カッコいい(≧∀≦)
(浩大、六つの紅玉に睨まれてメンタル大丈夫なのかしら。)
いえ、それもカッコいいのですが、パパ陛下の「護衛だ。」
ずきゅーん(≧∀≦)
普段は張り合っていても、ちゃんと父親してる深い愛っ!!
愛ですわねっ!?
夕鈴を一番に見つけて、李順さんが用意してくれた5日間のお休み使って、三人目は、桜の木の下だから、四人目でも作ればいい。あれ?順番合わないなぁ。
まあ、夕鈴が休めるなら・・・。
休めるの???
至る所に萌えポイントがあって、もうサービスたっぷり('-^*)
羽梨

2013/05/23 (Thu) 17:53 | 羽梨 #- | URL | 編集 | 返信

Re

今回は、李順さん掌の上で狼が踊らされております。
夕鈴、実は、桜花を身ごもっていたりして。
・・・そうでないと、計算が合わず(考えてSS書くように。私。)
陛下は、一応父親しております。
頑張ってるでしょ?!笑
陛下、残念。
せっかく五日間も籠りっきりになれたのに・・・ねぇ。(なにがですか)
くすくす(おに)

2013/05/23 (Thu) 19:20 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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2016/03/30 (Wed) 22:02 | # | | 編集 | 返信

うさき様へ

あ。
そんなお話しを拝読したことがあります。
いえ、正確には今も拝読し続けております。

嫉妬する陛下はいいですね。

2016/03/30 (Wed) 22:34 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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