--_--
--
(--)--:--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2013_05
12
(Sun)00:22

絆の日

SNSにて18000を踏んで下った、K様よりのリクです。

Kさま!ありがとうございます!



【設定・原作沿い】
【ご注意!夕鈴のお父さんをかなり捏造しております】




《絆の日》





絹のような、優しい雨。

しっとりと衣を濡らし、髪を濡らす。

まるで霧のような、優しい、優しい・・・・雨。








「_______これを、君に。」

昨夜訪れた陛下が、そっと私に手渡した、小さな絹の袋。

「・・・ねえ、中を、見て?」

耳元で囁くその声に、思わず首をすくめながら、そっと口紐を緩め、覗き込むと。

・・・そこにあったのは、小さな耳飾り。

桃色の石がころんと付いた、とても小さな可愛らしいそれを、陛下は手ずから私に付けてくれた。

_________陛下の指が耳に触れるたびに、頬が赤くなる。

「やはり、よく似合うな・・・」

「あ、ありがとうございます・・・」

侍女さんたちがいないのに、狼陛下の声音は・・・反則だと思う。

さらに朱に染まった私の頬を、陛下の指がそっと撫で。

「今度、下町に行くときには、それ、付けてね?」

くすっと悪戯っぽく笑いながら、陛下は「約束」と言い、小指を絡めてきた。





下町に行く機会。それは案外早く訪れた。

『姉さん・・・父さんがどうしても姉さんに頼みがあるって・・・』

困った様子が目に浮かぶような、青慎の筆跡。

ふぅ、とため息をつき、私は李順さんに休暇を申請すべく、立ち上がった。


「__________よろしいですよ、二日間だけなら。」

下町行きの許可は、案外あっさりと下りた。

「陛下には念を押しておきますが・・・もし、下町についていったら。」

「わかってます、すぐにお戻り頂く様、説得すればいいんですね?」

「そうです、よろしくお願いしますよ?」

半ば諦め顔の夕鈴と、はは、と、力なく笑う李順。

「・・・まあ、今の時期でしたら、二日間くらいは陛下にお休み頂いても大丈夫ですので・・・」



_________もはや黎翔が下町に行く事は、決定事項であった。











「・・・・父さん・・・なんでまた、見合いなんて・・・・」

実家に帰るや否や、夕鈴は父親に泣きつかれ、連れ出された。

・・・・見合い会場、に。

「すまん、夕鈴!本当に、会うだけでいいんだ!頼む!」

「何で私がお見合いなんてしなきゃいけないのよ?!」

「う・・・それは、その・・・」

「まさか、賭けで負けた、とか?!」

「・・・・負けた、わけじゃないんだが・・・・」

はぁー、と深くため息をつき、がっくりと肩を落とす夕鈴に、岩圭は心底すまなそうに事情を説明した。


曰く。

賭け仲間の顔見知りに、下級役人がおり。

その上司が見合い相手を探している。

ちょうどよい娘が、自分の親族には居らず。

ちょうど良い娘の親が、目の前にいた・・・・と。

『会うだけでいいんだ!頼む!岩圭!』

友人の頼みを、結局岩圭は断れず。




「_________親子して、人がいいんだねー・・・・」


天井裏の隠密が、笑いをかみ殺しながら、ぼそっと呟いた。








「そういや、夕鈴。」

「何?父さん」

「おまえ、もうすぐ誕生日だな。」

「あ・・・・そうね。」

見合い相手を待つ間、父と娘は当たり障りのない話題を探す。

「・・・そろそろ、嫁に行かないとな・・・」

少し寂しそうに、岩圭は夕鈴を見やり。

娘の耳で控えめに揺れる、桃色の石を見つめる。

_________薔薇色の、玉。

そう容易く手に入るものではない。

そんな高価な品がなぜ娘の耳を飾っているのか。

父として、知らねばならない。

岩圭は、口を開いた。

「・・・夕鈴、その耳飾り・・・」

ちょうどその時、見合い相手の到着が知らされた。









「___________なんで、お見合い・・・」


夕鈴が見合いをしている部屋のすぐ隣には、がっくりと肩を落としながらも、目だけを紅く光らせた、黎翔の姿。

「___________浩、大・・・」

「・・・・ハイ。」

「状況を説明しろ。」

「・・・・ハイ、タダイマ。」

ギクシャクとした動きで、冷や汗を流しながら、浩大は状況を説明し。

黎翔の機嫌は、果てしなく落ち込んでいくのだった。

「・・・・潰しちゃおうかなー、お見合い。」

_____物騒なことを、呟きながら。







「夕鈴さんは、確か十七歳でいらっしゃいますね?」

「はい、もうすぐ十八歳の嫁き遅れです。」

「ご趣味は?」

「・・・掃除、でしょうか・・・」

「今は・・・」

「王宮で掃除婦の住み込みバイトをしております。」

淡々と見合いは進む。


夕鈴の耳元でかすかに揺れる、耳飾。

それを意識するたびに、つきん、と胸が痛む。

________陛下。

叶うはずもなく、想うことすら、罪。



下町娘の身の丈に合った、お似合いの、縁談。

叶うはずもなく、辛いだけの、口に出すことも許されない、恋。



__________でも。それでも・・・・私は。

そっと、耳元に触れ、少しだけ目を瞑り。

夕鈴は、まっすぐに見合い相手を見つめた。


「_________申し訳ございません。私は・・・」

言いかけた言葉を、以外にも岩圭が引き取る。

「_________娘は、まだ王宮での勤めを終えるまでに少し時間がかかります。もし宜しければ、お勤めのお暇を頂いた後に、再度この様な場を設けていただければ・・・・」

おっとりと話す岩圭に、夕鈴は驚きの目を向けた。







見合いから帰る、道すがら。

父と娘は微妙な空気に包まれながらも、何とか話しを切り出した。

「・・・なあ、夕鈴。」

「なに?」

「おまえ、その耳飾り・・・その、職場の上司・・・が、か?」

「______大丈夫よ、父さん。」

「夕鈴・・・」

「心配しないで?ね?」

にっこりと笑う娘に、岩圭は何も言えず。

___________そのまま、夕鈴は王宮へと戻って行った。






真っ直ぐに王宮を目指す夕鈴の少し後ろを、黎翔はとぼとぼと歩く。

________夕鈴、お見合い、したんだ・・・

________僕なんて、眼中にないのかなぁ・・・

どんよりと暗い黎翔の気分を表したような重たい空から、絹のような雨が降り出した。

________ねえ、夕鈴、濡れちゃうよ?

そんな黎翔の心配をよそに、夕鈴は迷いのない足取りで王宮を目指す。

一度も振り返らずに。



急な雨に、人通りも途絶え。

それでも夕鈴は、真っ直ぐに歩く。

静まり返った路を、ただひたすらに、王宮へ、王宮へ。

手を口に当て、泣きながら。


_________陛下。

想っては、いけない。
望んでは、いけない。
夢に見ても、いけない。

・・・気付いては、いけなかったのに。

優しい、大きな手。
温かくて広い胸。
さらりとした黒髪。
少し骨ばった指。

そっと耳飾に触れ、夕鈴はとうとう立ち止まった。

「・・・・っく・・・・ひっ・・・く・・・・」


静まり返った路上に、微かに響く、泣き声。

「へい・・・かぁ・・・」

しゃくりあげた、その時。

ふわり、と背後から身に馴染んだ温もりが夕鈴を包み。

「・・・・帰ろう?夕鈴。」

小犬とも狼ともつかぬ、黎翔の声が降ってきて、夕鈴の涙が一気に溢れた。

「へい、か・・・・陛下!」

黎翔の胸に顔を埋め、夕鈴は泣き続け。

黎翔は何も問わずに、夕鈴を抱き続ける。




________ありがとう、夕鈴。

君の耳で揺れる、小さな薔薇色の玉。

本来の居場所で、いつでも幸せになれる君を繋ぎとめる、小さな小さな、枷。

でも、それがいつか君との絆になれたなら。

まだ、僕はそれを口に出せないけれど。

君が、僕の名を呼んでくれるのなら。

繋ごう。君と。

今はまだ小さな絆だけど。

__________少しずつ、少しずつ。確かに。

C.O.M.M.E.N.T

コメントの投稿

非公開コメント

トラックバック

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。