2013_05
08
(Wed)19:57

脳内の陛下が、ヤキモチを妬きました。

うちの真っ黒陛下が焼きもちを妬いたら、手に負えず。

必死に止めました。

おかしなお話し(いつも)ですが、どうぞよろしくお願いいたします♪





【設定・臨時花嫁・原作沿い】

*花恵宴が終わった辺りです




《手》




___________近い。


李順と。浩大と。方淵と。水月と。

近い。近すぎる。

やつらばかりが、夕鈴と近い。近すぎる。






「陛下!」

謁見を終え政務室に戻ると、花のような笑顔の夕鈴が出迎えてくれた。

その後ろに控えていたのは、方淵と、水月。

今の今まで、楽しくしゃべっていたのだろう。

少し頬を染め、浮き立つような雰囲気をそのまま残し、君は僕に向って歩き出す。



_______君は、僕の妃なのに。


おもしろくない。

僕に接するときとは違う、君の笑顔。

ごく自然に笑い、自然に振舞う、愛らしい夕鈴。

僕が少し君に近づくと、すぐに逃げ出すのに。

どうして?

どうしてだ?

私の妃だろう?君は。





鬱々とした気分のまま、夜を迎えた。

夕鈴のお茶を飲み、碁を打ち、部屋に戻ったのは、もう二刻も前のこと。

・・・眠れない。

少し距離を詰めるだけで、夕鈴は私から飛び退く。

笑いかければ、隠れるように袖で顔を覆い。

髪に触れれば、衝立の陰に逃げ込む。


________政務室で見た、可憐な笑顔。

私以外に見せる、あの笑顔。


なぜだ?

なぜ、私には見せない?

寝台に横たわり、目を瞑る。

落ち着かぬ思考を無視して、無理やりに、眠った。







『・・・・・ふふふ、方淵ったら!』

『水月さん!水月さんってば!』

『李順さん!ちょっと待ってください!』

『浩大!つまみ食いしないでね?』


夕鈴の笑顔が振りまかれ、皆も笑う。

春の陽だまりのように温かい空間がそこにある。




__________ゆう、りん。

そこに行きたくて、君を呼んでも、私の声は届かず。

どんどん、君が遠ざかる。



・・・まって。

手を差し伸べ、君に触れようとしたとき、気付いた。


____________血。

僕の両手にべっとりと、どす黒い血がこびりついている事に。


ああ、そうか。

君に触れる資格を持たない自分に気付く。

そうか。

そうだな。

真白い穢れを知らぬ花に触れるには・・・この手は穢れすぎている。



『・・・・やっと気付いたか』 

ぽん、と肩を叩かれ、振り返ると。

血色の瞳の自分が、薄笑いを浮かべて立っていた__________









「くっ・・・・・!!」

がばっ、と起き上がり、呼吸を整える。

まったく、ろくな夢を見ないな。

ふっ、と自嘲気味に笑い、夢を反芻する。


「・・・・穢れたこの手では、触れられぬ、か。」

自分の手を見つめ、ため息をつき。

「もう、眠れないな。」

剣を取り、庭に出た。







ひゅんっ、と空を切り裂く鋭い音に、夕鈴は歩みを止めた。

昨夜元気がなかった陛下の為に、と、今朝咲いたばかりの花を摘み。

一緒に朝餉を、と、侍女さんに頼んで仕度をしてもらったのだ。

陛下の部屋から程近い場所から聞こえるそれに、夕鈴は青ざめ、走り出す。


「お妃様っ!」

追いすがる侍女達の声も、夕鈴には届かず。

「陛下っ!!!!」

回廊を走りぬけ、角を曲がり・・・・・夕鈴は、黎翔の剣舞を見た。



朝日を浴びながら、衣を翻し、宙を舞い、軽々と剣を操る。

すらりと高い背。優雅な手足。艶やかな黒髪。美しい面立ち。

それは、美しいとしか形容することが出来ず。


「へい、か・・・・」

夕鈴は息をすることも忘れ、見入った。




どれほどそうしていたろうか。



「夕鈴?どうした?」

舞い終えた黎翔が夕鈴に声を掛け。

「・・・・・・・は。」

呆然としていた夕鈴は、間の抜けた返事をしてしまった。

「・・・ぷっ。夕鈴、どうしたの?」

くすくす笑う黎翔に、ようやく正気に戻った夕鈴は。

「陛下・・・・すっごく、素敵でした・・・・!」

心から黎翔を賞賛し、目を輝かせた。

興奮冷めやらぬ、と言った態で、夕鈴は黎翔の手をとり。

「陛下がお強いのは存じ上げてましたけど、剣舞は初めてで・・・!なんて綺麗!本当に素晴らしかったです!」

ぎゅうっと黎翔の手を握り締め、頬を染め。

無我夢中で、感動を伝えようとする。




「・・・夕鈴、手、が。」

__________だめだよ、こんな穢れた手に触れちゃ。

「すすすみません!!あまりにも綺麗だったから、つい!!」

「え?」

__________綺麗、って?


「申し訳ありません!バイトの分際で陛下の手を握るなんて!」

__________いや、そうじゃなくて。


「綺麗、って?・・・・僕の手、汚れてるよ?」



自分の手に目を落とした黎翔の瞳の暗さに、夕鈴は息を呑む。

「・・・陛下。私、陛下ほど綺麗な方に、会ったことありませんよ?」

そうっと黎翔の手をとり、夕鈴は自分の頬にあてる。

「強くて、綺麗で、優しくて・・・・・素敵な手、です。」

ふふ、と笑い、夕鈴は黎翔の瞳を覗き込む。

「・・・・少し、恥ずかしいですけど、ね。」

頬を桃色に染め、満開の笑顔を黎翔に向けた。



その笑顔は、黎翔が今まで見た中で一番、眩しくて。



_________やっぱり、誰にも見せたくない。


黎翔は腕の中にその笑顔を囲った・・・・
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