2013_04
25
(Thu)21:14

きっかけ

【設定・臨時花嫁・原作沿い】
【ご注意!ほんの少しだけ、大人っぽい・・・かな?】


《きっかけ》



_____________遅い。


ふぅ、とため息をつき、夕鈴はぼんやりと窓の外に目を向けた。

「今日はもうお越しにならないかもしれないわね。」

よしっ、と気持ちを切り替え、夕鈴は夜着に着替えることにした。






「___________りじゅん~・・・・・・」

パタリと机に倒れこみ、黎翔はもうダメだと駄々をこねる。

「・・・・こちらの書簡で最後ですよ。」

李順が差し出した書簡を、黎翔はにやりと笑って受け取り。

「これで最後、だな?」

瞬く間に目を通し、朱筆を入れ・・・・颯爽と後宮へ去っていった。

「・・・ほんと、いつも最初から今のペースでお願いしますよ。」

まったくもう、と、李順はくるくると書簡を丸めながら、遠くを見つめるのだった。







「よい。下がれ。」

宿直の女官を下がらせ、甘い香りがする妃の部屋への扉を開く。

「夕鈴、遅くなってごめんね・・・・」

だが、居間からの返事は無く。

黎翔はぐるりと室内を見渡す。

「・・・寝所かな?」

夕鈴を起こさぬよう、足音を忍ばせて、寝所へ続く帳をかき分けた。




「・・・・・あれ?あれれ?・・・おかしいな、どこに引っかかっちゃたのかしら?」

_____夕鈴起きてたんだ。これは・・・独り言?

「うーん・・・おかしいわ・・・この耳飾り、初めて付けるから・・・あれれ?髪飾りと絡まっちゃった?!」

______ぷっ。夕鈴、可愛い。

「・・・・っと・・・ええと、こっちの丸い石が髪飾りので・・・この小さな石が、耳飾で・・・っ!もう!!!」

______だめだよ、夕鈴。無理やり外すと耳に傷がついちゃう。

「ああ、もうっ!取れない~!!」

「______ああ、だいぶ絡まっているな。」

くすりと笑いながら寝所へ足を踏み入れた黎翔の動きが、ぴたりと止まった。


着替えようとして髪飾りを外しかけ、その際に崩れてしまったのだろう。

艶やかな髪が、柔らかく、しどけなく、夕鈴を飾り、少し染まった頬が、黎翔を煽る。

_________まずい。

黎翔の頬に、朱がさした。



一方、急に現れた黎翔に驚いた夕鈴は、ビクッと飛び上がり。

「痛っ!!」

小さな悲鳴が上がった。




「大丈夫?!ごめん、夕鈴!!」

黎翔は慌てながら、耳を押さえる夕鈴の手をどかした。

「・・・少し、血が出てる。」

耳飾と髪飾りの相性が悪かったのか、かなり複雑に絡まったそれが、夕鈴の耳に小さな傷を作っていた。

そっと絡まりを解き、黎翔が懐から傷薬を取り出し、真っ赤になった耳にそうっと塗っていく。

「ありがとうございます。」

恥ずかしさに染まる夕鈴を苦笑して見ていた黎翔は、真っ当な疑問を口にした。

「どうして侍女に頼まなかったの?」

「あっ!」

一瞬、きょとんとした夕鈴は、ようやくそこに思い至った。

「侍女さんにお願いすればよかったんだわ・・・・」

がっくりとうなだれ、どんよりと落ち込む。

「申し訳ありません、陛下・・・・お手を煩わせてしまって・・・・」

「気にしないで?」


先ほど感じた、自制心の限界。

あれを雲散霧消してくれた夕鈴に、複雑な気持ちが湧く。



「_____あ、こちらの耳飾を外すのを忘れてました。」

片耳に残ったままだった髪飾りに、夕鈴は慌てて手を伸ばし、今度は絡めないようにと、首を傾けて外し始めた。


さらり、と流れる光沢のある髪。
その髪から漂う、夕鈴の香り。
思い切り首を傾けたせいで少しだけ覗く、白い鎖骨。

_________それと、赤い耳。


吸い寄せられるように、黎翔の手が動き、夕鈴の肩に乗せられ。

「_________いい?」

思わぬ言葉が口をつく。

びくっと震えた夕鈴の肩を、黎翔の手が優しく押さえ、狼は優しく笑む。


_________きっかけを作ったのは、君だから。


少しだけ耳飾に感謝したのは、秘密。
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