2017_05
25
(Thu)18:26

あの日1

お久しぶりです。
昨日は本誌発売日でしたね!
近頃は毎夜早々に寝落ちてしまい…。
PCからも書くことからも離れ気味の日々を送っておりましたが、ようやく書けました。
本誌から妄想した陛下の過去話です。

自分のペースで楽しく書いております。
我が儘な管理人でごめんなさい。
でも、お付き合いいただけましたら幸いです。




【設定 陛下の過去捏造】
≪あの日1≫


それは、もう。
戻らぬ日々。





「黎翔殿下!黎翔殿下――――!」

ここは白陽国の北辺。
王都からはるかに隔たった『辺境』と呼ばれるこの地に吹く風は、夏でも涼やかだ。
冬季は白一色だった世界が様変わりするこの季節。
どこまでも広がる緑の平原のなか、李順は懸命に馬を走らせていた。

「殿下――――!どこです?!」

ようやく青年と呼ぶにふさわしい年頃になった彼の体つきはまだ華奢で。
几帳面にまとめ上げた髪をくすぐるように風が吹き抜ける。

「はぁぁぁぁ……。」

がっくりと肩を落として深々とため息をつき、李順はちっとも人の話を聞かない主を呪った。

「今日は外に出るなと言ったのに……。」

さわり。
俯いた彼を労わるように、草が鳴る。
生命力そのものである新緑の香を胸いっぱいに吸い込み、李順は精一杯声を張り上げた。

「黎、翔、様―――――!」

年若い側近を気の毒に思ったのだろう。
彼の声は風に乗せられてようやく目的の人物に届いた。

「あ、李順だ。おーい、ここだぞ!」
「黎翔様!」

全く悪びれもせぬ主に胸の内で悪態をついてから、李順は馬首を巡らせた。

「またこちらでしたか。殿下、今日は王都からの使者が来るから外出なさらないようにと、あれほど――――」
「そうだったか?」

ぜえぜえと肩で息をする彼を面白そうに見やる主――――王弟殿下・珀黎翔は、まだ少年。
傾城の美妃と謳われた母に良く似た彼は、後ろで結った長い髪をさらりと靡かせて白を切った。

「お前、そんなこと言っていたか?」
「言いましたっ!!」

顔を真っ赤にして怒る李順。
黎翔を取り巻いていた屈強な軍人たちが年若い側近に気の毒そうな顔を向ける。

「いやー、あんたも大変だな!」
「……面白そうに言わないでください。」
「まあ、なんだ。殿下も見つかったことだし、早く邸に戻らないとまずいんじゃないのか?」
「ええ、そうですね、帰りましょう黎しょ」
「やだ。」

――――そして彼らは確かに聞いた。

ぷちん。

「わがまま言わないっ!!!」

側近の堪忍袋の緒が切れる音を。






こめかみに青筋を立てた李順に引きずられるように邸に帰った黎翔は、まず湯殿へぶち込まれた。

「ああもう、こんなに泥だらけになって。髪もすっかり汚れてるじゃないですか!」
「痛いよ李順、もう少し優しくして。」
「……はいはい。」

香油を混ぜた湯をざぶりと黎翔に浴びせ、無理やり湯船に浸からせる。

「お湯に入るの、いやだな。」
「だめです、湯の中で擦らなきゃ落ちないほど汚したのはご自分なんですからしっかり洗ってください。」
「僕、暑がりなんだけど。」
「――――なんでしたら私が隅から隅まで洗って差し上げ」
「いい、自分でやる!」

仁王立ちでニッコリと微笑む李順の目が笑っていないことを確認した黎翔は、諦めて身体をこすり始めた。

「……僕、使者に会うよりもあいつらと一緒にいたかったな。」

少年らしい正直な、少し寂しそうな呟き。

「――――殿下。」

李順の胸がちくりと痛んだ。

黎翔は、見捨てられた皇子だ。
母である『舞姫様』もろとも北の辺境へ遣られた、王位には程遠い皇子。
それなのに現国王である兄王は、飽きもせず彼に刺客を送り続けている。
その理由は、太后が舞姫を忌み嫌っているから。
自分に向けられるはずだった寵愛のすべてを奪った舞姫が成した皇子など、目障りでしかないから。
舞姫が鬼籍に入った今となっても、呪いじみた彼女の憎しみが薄らぐことはなかった。

「なあ、李順。王都からの使者なんて刺客と同じだ。そうだろう?」

先ほどとは打って変わった冷たい表情でそう言ってのけた黎翔を、李順は複雑な思いで見つめた。


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C.O.M.M.E.N.T

子どもと大人の狭間の 心描写 ステキです。
気長に待ってますので、心体共に 落ち着いたら
また 書いて下さいね。

2017/05/25 (Thu) 18:59 | ゆん #- | URL | 編集 | 返信

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2017/05/25 (Thu) 19:14 | # | | 編集 | 返信

あささま。
大変長い間ご無沙汰しておりました。

娘も一歳7ヶ月になり、先月末から職場復帰しバタバタしておりましたが、通勤電車いいですね!
育休時は拝読したくてもできなかったあささまの記事読み放題です( 〃▽〃)

久しぶりに本誌を買いました。
そしてあささまの描く在りし日の陛下と李順さん、いいですね!
ふたりともかわいいーー!

なんと先月号はドラマCDがついていたとは。
しくじりました(T-T)
悲しすぎますが、あささまのお話で心を癒すことにします。

日々お忙しいと思いますが、楽しめる範囲で続けていただけると嬉しいです(*^^*)


2017/05/26 (Fri) 08:14 | saara #- | URL | 編集 | 返信

お久しぶりです^^

こんばんは、あささん。

陛下の幼少時代。
北の辺境での陛下の謎の部分って すごく気になりますよね。
今の“狼陛下”を形成した その時代…。

続き、楽しみにしています。^^
 
 

2017/05/26 (Fri) 20:59 | みかんママ #- | URL | 編集 | 返信

ゆん様へ

そう仰っていただけると助かります、ありがとうございます。
のんびりと書いておりますので、ゆん様ものんびりとお楽しみ下さいませ。

2017/05/26 (Fri) 21:46 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

くみ様へ

お気持ち、よーく分かります。
今回、妄想で補完するまでに至りましたのでようやく書けております。
見えない部分が見たい。
そんな不純な動機でいっぱいなSSです!

2017/05/26 (Fri) 21:48 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

saara様へ

職場復帰おめでとうございます~!
お忙しい中お越しくださってほんとにありがとうございます。

先月号、逃してしまわれたとは。
イケボ!イケボですよ!(おちつけコミックスもあるだろう私)
通勤電車は萌え電車ですよね!(違

少年陛下と李順さんを可愛いと仰っていただけて嬉しいです。
きっとこんな感じだったのかなー、と妄想を逞しくして書いております。

のんびり更新になるかもですが、またお越しくださいませ。

2017/05/26 (Fri) 21:52 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

みかんママ様へ

お久しぶりでございます~。

陛下の幼少期、ほんと謎が多くて滾りますよね。←言い方
楽しんで書いておりますので、みかんママ様にも楽しんでいただけたら嬉しいです。

2017/05/26 (Fri) 21:54 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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