2017_04
07
(Fri)21:31

怖れ

【設定 原作沿い】
≪怖れ≫


腕の中にある温もりが、安らかな寝息を立て始めるころ。
黎翔は閉じていた目を開ける。

「――――。」

鼻先が触れるほどの距離にいる、彼女。
ただ、愛しくて。
彼女がどこかで笑っていてくれれば、それだけで良かったはずなのに。

「もう……逃がせない。」

彼女が自分を求めてくれていると知った途端に、箍が外れた。

「ごめん。」

過ぎた愛情が彼女を壊すかもしれないと知っていながら、彼女のすべてを求める。
身体も心も、未来も過去も――――現在も。
彼女を造るものすべてを喰らいたくてたまらない。

「……。」

微かに開いた唇の隙間からちらりと見える真珠のような歯列と桃色の舌。
甘い吐息で鼻腔を満たした黎翔は、己の劣情に自嘲した。

「――――僕は、いつか、」

いつか君を壊すかもしれない。
失いたくないあまりに、自ら、君を――――。

「っ、」

再び、手離すかもしれない。

「夕鈴。」

なぜだろう。
幸せが怖いだなんて。
失うことなど慣れているはずなのに、恐ろしいだなんて。

「……夕鈴。」

いなくならないで。
僕から離れていかないで。

「お願いだ。」

たとえ僕が君に背を向けても。

「……いなくならないで。」

僕を。

「嫌わないで――――。」


C.O.M.M.E.N.T

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