2017_04
04
(Tue)22:45


もうすぐ、満開。
澄み渡る青空は魂を持っていかれそうになりますし、咲き誇る桜は心をのぞき込まれるようで怖いです。
どれだけ後ろ暗いのか、私。

訳の分からないSSですが、すべては桜が悪いんです。
怖いなぁ。
週末のお花見は、花より団子で過ごそうと思います。
いや、団子よりお酒か(笑)



≪桜≫


「――――ただいま、夕鈴。」

閉鎖された後宮の、一室。
かつてこの部屋に住まっていた妃を思い描き、黎翔は呟いた。

お帰りなさい、陛下。

弾むような声と心からの笑顔に心が緩む。
最も長く側に仕える李順ですら見たことのない笑みを浮かべた黎翔は、冷え切った長椅子に腰を下ろした。





陛下、お茶をどうぞ。

「ありがとう。」

愚かなことだと知りながら、幻想に酔う。

君が淹れてくれた茶は、甘くて。
でも、爽やかで。
肩の力が抜けていく。

「夕鈴。」

その名を口にのぼせるだけで、解れていく。
だが、どれほど繰り返してもどれほど触れてもどれほど感じても。

「――――夕鈴。」

癒えぬ、渇き。

「……なあ、陛下。こんなところで何してんの?」

察しの良い道具が、私を探しにやってくる。

「もう、良いんじゃねえの?」
「ああ……そうかも、な。」

来る春を寿ぎ今こそ咲かんと綻ぶ、桜花。
浮かれ酔い痴れる自分を戒める為、黎翔は毎年ここに足を運ぶのだ。

「幸せ、とは……怖いものだな。」
「そうなの?」

難儀な主を前に、花守は苦笑して。

「失うのが怖いだなんて、贅沢だね!」

朗らかに言い放つ。

「っ!」
「ほらほら、行きなよ。」

怖がらずに。
――――前へ、未来へ。

「……良いのだろうか。」
「当たり前じゃん!」

行け。

「それが、俺たちの願いだ。」
「そう、か。」

敬愛する我が王にまだ見たことのない本物の、春を。

「お帰りなさいませ、陛下!」
「ただいま、夕鈴。」

散ってもまた必ず咲く、この花のように。
凍てつく冬を超えてなお、美しい。

「ただいま――――私の、花よ。」

この、桜を。
桜が運ぶ、幸せを。

幾度でも。
永久に。

C.O.M.M.E.N.T

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