2016_12
21
(Wed)23:04

白梅


お久しぶりですこんばんは。
あさ、です。
まだ油断はなりませんが、とりあえずSSを書く余裕が心に生まれました。

書くの、楽しい。
楽しいことができるのって嬉しい。

もー、なんていうか、とりあえず。
書いていて楽しかったのでそれだけで満足です。

ああ、楽しかった。

もし宜しければ!





【設定 未来捏造】
《白梅》


それは本当に小さな兆しだった。
いや、兆しなどという大仰なものでは無かったのかもしれない。
言うなれば齢を重ねた老人の第六感。
待ち望んだそれの匂いを人知を超えた何かが張元に運んだのかもしれなかった。

「――――陛下、じいちゃんが呼んでる。」

いつになく重い声と顔の隠密を無表情に見下ろして。
黎翔はすぐに隠し扉を抜け後宮立ち入り禁止区域へ向かった。

「……梅、か。」

彼を待っていたのは、白梅。
その花弁に似合わぬ艶と甘さが狼の鼻先をくすぐる。

「陛下、お呼び立てして申し訳ございませぬ……。」
「何事か。」

殊勝に辞儀をする張元の気配がふいに鎮まるのと同時に、黎翔の耳に低い声が届いた。

「お妃様、ご懐妊。」

世界が止まり、音が消える。
血が湧きたち身体をめぐり、歓喜が溢れ出す。
我知らず溢れる涙を拭うこともせず、だが。
狼陛下は。

「――――夕鈴に、暇を与える。」

奥歯を軋ませながら、そう言って。
愛しい妻とまだ見ぬ我が子をその腕に抱くために、走り去った。





『夕鈴、夕鈴……。』
『大丈夫ですよ、陛下。私ちゃんと待ってますから。』

ようやく繋いだ手を再び離してから二度目の冬が終わろうとする頃。
夕鈴はこの世で一番大切な温もりを包み込み、王都の片隅で眠りに就こうとしていた。
母子の寝床から聞こえてくるのは、いつものお伽噺。

「……ウサギはいっぺんでオオカミが大好きになりました。」
「それから、どーしたの?」
「それから――――って、清翔、今日はおねむじゃないの?」

いつもはこの行までに寝てしまう息子が懸命に目を擦っている様が可愛らしく、夕鈴は柔らかな黒髪を撫でた。

「うんっ、お話の続きをお兄ちゃんに聞かせてあげるお約束したからおねむじゃないの。」
「っ、」

――――その手が、止まる。

「……っ、お兄ちゃん、って、どんな?」
「んっとね、お庭の梅の樹みたいにおおきいの。」
「なにか、言ってた?」

震える語尾を隠し微笑む夕鈴を不思議そうに見つめる幼い目。

「ううん。でも、お母さんみたいに僕の頭を撫でてくれたよ。」
「―――――っ!」

堪らず、夕鈴は勢いよく起き上がった。

「お母さん?」
「ごめんね、清翔。なんでもないの。」

早鐘を打つ心臓を押さえつける。
まさか、そんなはずはない。
まだ二年しか経ってないのに、陛下が迎えに来るはず、ない。
最低五年はかかるって、李順さんもそう言って―――――

「っ、」

ぱたん。
ごく自然な調子で開いた扉から流れ込んできたのは。

「……っ、」

白梅。

懐かしい香。
愛しくて愛しくて愛しい、私のあなた。

言葉が口をついた。

「――――お帰りなさい、陛下。」
「――――ただいま、夕鈴。」
「あ、お兄ちゃんだ。」

綺麗な顔をくしゃりと歪めて泣き笑い。
狼は愛しい兎と大切な我が子を腕に抱く。

「やっと……っ、やっと、だっ。」
「黎翔、さま……っ!」

抱き合う両親をそれとは知らずに見上げる清翔の横に、ひらりと影が舞い降りた。

「こーだい。」
「こんばんは、皇子様。」
「ぼく、清翔だよ?」
「だから、だよ。」
「どうして?いつもみたいに『清翔』って呼んでよ。」

無邪気に傾いだ黒髪から覗く澄んだ紅瞳に映った白い花弁が。
くすりと小さく笑った気がした。

C.O.M.M.E.N.T

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2016/12/22 (Thu) 09:39 | # | | 編集 | 返信

くみ様へ

待っていて下さってありがとうございます。
少し時間がかかりそうなんですが、こんな風に時々は書けるといいな、と。
身体が辛いだけならまだしも精神的な負担が大きくて頭を抱えてしまいます(笑)

こちらこそ読んで下さってありがとうございました!

2016/12/22 (Thu) 15:47 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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2016/12/22 (Thu) 20:02 | # | | 編集 | 返信

ゆん様へ

ありがとうございます。
リアが一進一退な状況で、なかなか二次小説に浸る精神的肉体的余裕が確保できない…。
気長にお待ちくださるとのこと、助かります。
宜しくお願い致します。

2016/12/26 (Mon) 18:53 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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