2016_10
26
(Wed)23:57

白陽5


こんばんは。
書けたところまでUP致します。

ああ、リアが落ち着かない。
くそう。


【設定 童話パロ?親指姫&かぐや姫&色々混ざっております。元ネタはお友達に見せていただいた花の写真です】

《白陽5》



「誰も部屋に近づけるな。」

そう言って妃の部屋に入った黎翔を、夕鈴は穏やかな笑顔で出迎えた。

「こんな時間にどうなさったんですか?お仕事は?」
「仕事どころじゃないよ。」
「?」

ことんと首をかしげる夕鈴。
黎翔はそんな彼女をじっと見つめ、柔らかな頬に手を添える。

「ごめんね、気づかなくて。毒を盛られたんだって?」
「っ、えっと……バレちゃいましたか。」

えへへ、と。
悪戯がばれた子どものように笑った夕鈴の肩が強い力で掴まれた。

「笑い事じゃないっ!」
「だ、大丈夫です、私には自浄能力が、」
「だからって!」

ぎりっ。
華奢な肩に黎翔の指が食い込んでいく。

「痛っ、」
「すまないっ。」

狼狽え手を離した黎翔は軽く息を吐いて。
今度は優しい力で、彼女をかき抱いた。

「自浄能力があっても、君の体に負担がかからない訳じゃないだろう。」
「っ、」
「ここ最近、花弁が開いていかない。」
「……黙っていて、ごめんなさい。心配かけたく、なくて。」
「夕鈴。」

大人しく抱きしめられたまま逞しい胸に頬を寄せ、夕鈴は精一杯の明るい声を出す。

「でも大丈夫!陛下の願いを叶える体力はいつでも確保してありますから!」
「いや、心配なのはそこじゃない。」
「え、じゃあどこですか?」

きょとんとした茶色の瞳に見上げられ、黎翔は深々と息を吐いた。

「……どうすれば伝わるんだろうなぁ……。」
「お困りごとですか?それなら私に願いを、」
「いや、自分で何とかするから。」
「もうっ、いつもそればっかり!」

ぷうっ、と膨らんだ頬に指を押し当て、黎翔は思う。

――――願い花。

国の平安を願うあまり柄にもなく神殿に籠り授かった花。
彼女―――夕鈴を得てから自分は変わった。
必要のない者は切り捨て邪魔者は排除し腐りかけているこの国の土台を立て直すための武王・狼陛下。
あの時の自分が神に願ったのは『白陽国の平安』。
おそらく長くは続かない狼陛下の治世を継ぐものが欲しかった。
早くこの重荷を誰かに譲りたかった。
もう、疲れた。
そう思っていた。
だが今は、そうじゃない――――。

「っ、」

ふいに、柔らかいものが唇に触れ我に返る。
これは、どうしたことか。

「ん、」
「……ふ、ぁ、」

甘やかな吐息を継いだ夕鈴が黎翔の唇を己のそれで塞ぐ。

「ゆ、」
「も、すこし、」

絡まる舌から染み渡る甘露が脳髄を痺れさせ思考を奪った。

「……誘ってるの?」

最後の理性を絞り出す。

「え、どこにも誘ってませんよ?」

こちらの思惑などどこ吹く風。
ぱっと体を離した夕鈴は、さきほどまでの妖艶さなど忘れ切ったような顔でにっこりと黎翔を見つめた。

「今は夏ですから、大地の生気が漲っているんです。陛下、お疲れのご様子でしたから…私を通してお分けできたらいいな、って。」
「分け……そうだよね、夕鈴だもんね。うん、そうだそうだよね……。」

力なく笑った黎翔は己を励まし夕鈴の肩に頭を預け温もりを味わう。

「あのさ。夕鈴は僕の願いを叶えたら消えちゃうの?」
「消えませんよ、元いたところに戻るだけです。」

もう何度目になるかわからないほど繰り返した問い。
律儀に同じ答えを返してくれる彼女に、やはりもう何度目か分からぬほどの言の葉を紡ぐ。

「夕鈴、大好き。」
「私も黎翔様が大好きです。」


朧月が彩る夏の夜は、溶けるように更けていく。






そして。
時間ばかりがもどかしく過ぎていき、とうとうその日がやって来た。

「この度はお招きありがとうございます、国王陛下。」
「よく参られた、朱音姫。少しの間だが白陽国を楽しまれよ。」
「はい。私はいずれこの国の正妃となる身。このような機会を作っていただいて感謝いたします。」

炎波国。
絢爛豪華な行列を仕立てやって来た彼の国の姫。
黎翔の許嫁である炎波国第二王女朱音姫は、夕鈴をちらりとも見ずに優雅に辞儀をし下がっていく。
今回姫が持参したのは希少価値に優れた宝石と岩塩。
その見事さに感心する貴族たちの騒めきよりも気にかかることが夕鈴にはあった。

「……なんて強い、願い。」
「夕鈴?」
「いえ、なんでもありません。」

強い瞳の気高い王女。
彼女から発せられる切実な『願い』はかなり強く、大きなもので。
半ば花も開き度重なる解毒で力を失いつつある自分がそれを叶えてしまったらどうなるのか――――。
『願い花』たる自分がそんな不安を抱いてしまったことに驚きながらも夕鈴は黎翔が喜ぶ笑顔を作った。

「朱音姫はお美しくて聡明な御方ですね。陛下の『願い』は彼女と共にこの国を栄えさせることですか?」

早く、この人の願いを知りたい。
そして早く、一刻も早く叶えてあげなければ私は―――――

「夕、鈴、」

くしゃりと歪んだ黎翔の顔に何がいけなかったのかと慌てつつ。
夕鈴は必死に彼の袖に縋り言い募る。

「お願い、あなたの『願い』を――――叶えさせて。」

早く、早く。
お願い。
私があの姫君の『願い』を叶えてしまう前に。

――――父王の病を治したい。

その切なる願いを叶えてしまったら、きっと。

「お願い、早く……!」
「夕鈴?」

私は。

「夕鈴?!」

すべての花弁を使い切って―――――

「夕鈴っ!しっかりしろ!誰か侍医を、早く!」

――――父様の病を治し姉様を支え炎波国を守りたい。

ああ。
なんて強くて真っ直ぐな『願い』なんだろう。

「へい、か。早く、あなたの願い、を―――――」

大丈夫。
陛下の願いを叶える体力はいつでも確保してあるんだから。

私は黎翔様の、願い花。
あなたの願いを叶えるために咲く、花――――

「早く、願って……、」
「っ、」

儚く微笑む夕鈴を腕に抱き、黎翔は反射的に走り出した。

「陛下、どこに!」
「うるさいっ!」

李順を振り払い、ひた走る先には。
王しか足を踏み入れることの叶わぬ、神殿。

「出て来い、『神』!夕鈴を生かせ!!」

しんと静まった神殿に吸い込まれていく黎翔の叫びは虚しくて。
己の腕の中で薄れていく彼女を引き留めることなど出来はしない。

「イヤだ、だめだ、行かせないっ!!」

淡く形を失っていく夕鈴。
黎翔がそれを必死にかき集めようとした時。
どこかで聞いたことのある――――そして、よく知っている気がする声が響き渡った。。

――――ならば、願え!!!

背を押すような、大音声。
両手に集めた彼女の白い花弁を天に掲げ、黎翔は叫んだ。

「夕鈴が、欲しいっ!!!」

――――それでいい。

ふっ、と。
黎翔の意識はそこで途切れた。
白陽6   
«  HOME  »
  白陽4

C.O.M.M.E.N.T

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/10/27 (Thu) 02:38 | # | | 編集 | 返信

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/10/27 (Thu) 04:04 | # | | 編集 | 返信

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/10/27 (Thu) 14:15 | # | | 編集 | 返信

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/10/27 (Thu) 17:39 | # | | 編集 | 返信

宇佐美さまへ

大丈夫ですよー。
この程度ならまだいけます。
大丈夫。

勢いで最終話まで書きました。
相変わらずの端折り癖ですが、薄めで読んで下さい(笑)

2016/10/27 (Thu) 23:02 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

なおかざ様へ

お久しぶりです!

私のSSで息抜きになるなら本望です。
疲れますよね、毎日毎日毎日毎日。
脳を休める場になっていれば嬉しいです。

2016/10/27 (Thu) 23:04 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

くみ様へ

ありがとうございますー。
身体が五つ欲しい(笑)
でも、五つあればあったで全員好きなことしたがるから結局ダメなんでしょうね!

明日がない今日はないと知っているので大丈夫。
頑張ります。

2016/10/27 (Thu) 23:07 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

ゆん様へ

分かります(笑)
苦しむ二人も愛しい…!←

とことん二次元な脳みそです!

2016/10/27 (Thu) 23:08 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

コメントの投稿

非公開コメント