2016_06
22
(Wed)22:23

恐れ


少し暗いお話かもしれませんが、原稿の息抜きに(嘘だそれほど原稿書いてないだろ私)書いてみました。

原稿をしろ、私。
夏休みはすぐそこだ!分かってるだろう!

……頑張ろう、うん。明日から。←



【設定 本物夫婦 陛下の過去捏造】
《恐れ》


失うことが嫌なら、始めから何も持たなければいい。
そう理解したのは、物心ついた頃。

「―――お前も、なんだな。」

紫苑宮の木犀が綻び始める季節。
いつも世話をしてくれていた年若い女官が毒の香りがする茶を淹れてくれた時、だった。

「何が狙いだ、私の命か。」
「……違い、ます。」

そうか。

「では、母上だな。」
「―――。」

僕に遅効性の毒を飲ませ、解毒剤と引き換えに母の命を奪う。
そんなところだったのだろう。

「ひとつ、教えてくれ。」

かちゃん、と。茶杯を床に落としてその破片を踏みつける。

「母上に執着しているのは父上だ……母上がいなくなったところで、父上の心は手に入らない。それなのになぜ、母上を狙うんだ?」

陶器の欠片と石床が擦れる感触を楽しみながら、答えを待った。

「―――心など、不要ですのよ、皇子様。」
「?」

いつも通りの笑顔を浮かべて、あの女はそう言ったんだ。

「欲しいのは、王の心ではなく、身体のみ。もっと言えばその精だけが欲しいのですわ。」
「なんだ、それは。」
「皇子様にはまだ少しお早い知識ですわ。」

少しむっとした僕が言葉を継ぐ、その前に。

「またいつか、どこかで。」

そう言って。
あの女は、薄い刃を自らの喉に突き立てた。

まっすぐに飲み込まれていく白銀の刃と、いつもと変わらぬ優しい笑顔。
崩れ落ちた彼女に歩み寄って。
黎翔は少し震える指先で、白い頬に触れた。

「―――嘘つき。」

僕にも分かるように刺激臭のある毒を選んだくせに。
人間は死んだら終い、次に会うことなんてないって言ってたくせに。

『皇子様、男の子は独りで泣くものですよ。私が隠して差し上げますから……。』

あたたかい袖の中に、僕を、隠してくれたくせに。

「嘘つき。」

『泣き止むまで、こうしております。』

言った、くせに。

「……っ、嘘、つ、き…っ!」





「陛下、大丈夫ですか?」
「っ、夕鈴……。」

夢。
疲れると見る、いつもの夢。
ぐっしょりと濡れた衣が気持ち悪い。

「こんなに汗をかいて……お着替えお持ちしますね。」
そう言って寝台から滑り降りようとした夕鈴を、抱きしめた。

「大丈夫、私はいなくなりませんよ?陛下が嫌だって言ってもずっとそばにいますから。」

ふわりと笑う彼女。
今は、秋。辺りに漂う木犀の香が胸をかき乱す。

「ごめん、もう少し、このままで。」
「少し、だなんて。」

きゅっと腕を抓られた。

「言ったでしょう?嫌がられても側にいる、って。覚悟しといてくださいね!」

柔らかく重ねられた唇から、伝わるのは。
確かな温度と強い意志。

「陛下。」
「夕鈴。」

運命を変える、力。


C.O.M.M.E.N.T

はじめまして

あさ様
はじめまして。
いつも素敵なお話にふわーっと癒されています
これからも作品、楽しみにしています
(拍手1番ゲットで嬉しくてコメント入れてしまいました!)

2016/06/22 (Wed) 22:30 | ゆき #- | URL | 編集 | 返信

ゆき様へ

初めまして、コメントありがとうございます!
一番拍手もありがとうございますー!

これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたしますね。

2016/06/23 (Thu) 21:08 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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