2016_06
16
(Thu)22:59

危機


秋の原稿から絶賛逃避中。
ブログ再録本とか、何ページの本作る気だよ私。
無茶をせず、長編2本と短編3本くらいにとどめようと思います。
誰が選ぶのかしらSS。私だよ。
過去の作品を読み返していると全消ししたくなるのはナイショです。
ブログ再録本って、需要ありますかね。(今聞くな)

さて。
今回のSSは、陛下がケガをします。
色々「これありなの?」な内容かもしれませんが、書いている私は楽しかったので大目に見てください。(笑)

何でも来い!な、皆様。
もし宜しければ!



【設定 本物夫婦 お子様なし】
《危機》


もしも僕が刺客なら、こうする。
そんな方法を取られた。



「夕鈴っ!」

報せを受け、奔る。
背筋がぞわりとして、血が凍る。
隠密が使う符牒を咥えて飛んできたのは、浩大の鳥。
血の色をした糸は、夕鈴の危機を示していた。

「妃はどこだ!」
「お妃様はお庭の散策に…」

腰を抜かして答える女官には目もくれずに、走り抜ける。
夕鈴は今朝、紫苑宮の辺りに行くと言っていた。
知り尽くした近道を抜け桂花の樹を目指す。
物音ひとつしない、庭。
今思えばこの時に気付くべきだったんだ。

「っ!」

ひゅっ!
短い音がして背に衝撃が走る。
どすん、と重いそれが何なのか、よく知っている。

狙いは、私か。

「…なるほどな。」

一気に血が下がって。
笑いが込み上げた。

「狼を一矢で仕留めようとは、舐められたものだな。」

右手を背に回し矢を折る。
喰い込んだ鏃から広がるじくじくとした痛みが何かを呼び起こした。

「陛下っ!」
「夕鈴に怪我はないか。」
 
漸く現れた道具に声を投げる。
自分でも驚くほどの優しい声が出て、どれほど彼女が大切なのかを思い知る。

「お妃ちゃんはもう大丈夫だっ。それより、」
「―――お前は夕鈴の護衛に戻れ。」
「って、陛下は?!」
「道具に心配されるほど落ちぶれたつもりはない。」
「っ。」

そう。
刺客の狙いは、『狼陛下』。
彼女では、ない。

「さあ、遊んでくれ。」

ざわり、と木々が気配が動き出す。

「この程度の毒では、私は死なんぞ?」

くくっ、と。
鋭く美しい牙を剥き出しにして笑う、狼を。
数人の刺客が取り囲む。

「―――死なせない程度の毒を仕込んだのだ。我が主の無念、思い知らせてやる…狼。」

死を覚悟した彼らの鋭く重い刃が、黎翔に襲いかかった。



「…っ、はっ、」

身体が、言うことをきかない。
少しでも気を抜くと座り込んでしまいそうになる。
骸と化した刺客たちを乗り越えようと、一歩踏み出した。

「痛っ、」

ずきん、と悲鳴を上げる背。
奴らの言った通り、命を奪うほどの毒ではない、が。
自由を奪うには十分なそれ。

「―――ったく、」

全く、情けない。
この程度で動けなくなるとは狼陛下の名が泣くぞ、黎翔。

夕鈴に意識を集中させて、背後から襲う。

私が刺客ならそうするであろう手段を取られたとはいえ、不覚だった。

「……。」

少し、休めば。
少しだけ、目を閉じれば、きっと。
動けるように、なる。

ダメだ、寝るな。

そう叫ぶ理性を抑えるほどの余力がもう、なかった。

「ゆう」

夕鈴。






「どうして、どうして行っちゃダメなのよ!」
「落ち着いてお妃ちゃん。」
「お主が行ってもどうにもならん!」

懐かしい地下牢に近い隠し部屋。
唯一人で刺客に立ち向かっている黎翔を案じ外に出ようとする夕鈴を、張元と浩大が全力で押しとどめていた。

「行かせて!」
「無理だって。」

一つしかない部屋の扉を背で封じる浩大。

「お妃ちゃんが安全なところにいる方が、陛下も動きやすいんだ。」
「っ!」

至極もっともな意見を述べ、鉄砲玉のように飛び出しかねない妃を諫める。

「いくら陛下でも、背に矢を受けつつお妃ちゃんを守るとか、キツい…っ、やべ。」
「―――背に…なに?」

ぴたり、と。
夕鈴の動きが止まった。


『夕鈴』

呼ばれた気がして頭を巡らす。
陛下なの?
背に矢、って、なに?

『夕、鈴。』

また、呼ばれる。

「そこを、おどきなさい。」

自分でも驚くほど、冷ややかな声が出た。

「陛下のそばに参ります。案内を。」
「…っ。」

凛然と命じた夕鈴をじっと見つめて。
浩大は、素直に扉を開けた。

「こちらへ、お妃様。」





「陛下!!」

血濡れた骸の向こうには、桂花の樹。
それに背をあずけ座り込んでいるのは、黎翔だ。

「陛下、陛下!」

だらりと下がった腕と、開いたままの掌。
影のように蟠った黒いものは、血。

「いやっ、ダメ、陛下起きて!」

僅かに開いた薄くて形の良い唇からは、何の音も気配もなかった。

「…へいかっ!!」

脚を縺れさせて駆け寄る夕鈴を風が追い抜き黒い髪を揺らす。

「陛下、陛下…いやあああ!」

胸が裂かれるような悲鳴と同時に。
ふわり、と。
咲いてもいない桂花の香が辺りを包み、ありもしないはずの花が舞う。

『大丈夫、私が守るわ。』

頭の中に響くのは、知らないのに知っている不思議な声と鈴の音。

『起きろ、黎翔。彼女を置いてこちらに来る気か?。』

黎翔とよく似た声と姿の誰かが、夕鈴の隣に立った。

「え。」

驚いた夕鈴が声を発すると同時に、今あった光景は掻き消えて。

「う…、ゆう、り、ん、」
「陛下!」

閉じていた瞼がゆっくりと開き、紅の瞳がこの世で一番愛しい者を見つけ、笑む。

「きみが、無事で、よかっ、」
「う、わあああんっ!」
「ちょ、お妃ちゃん?!」

声を上げて泣く夕鈴。
それを見つめる黎翔の髪には、黄金色の花。

はらりと落ち来るそれに、黎翔は。

「…ありがとう。」

小さく、囁いた。

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C.O.M.M.E.N.T

良かった。

今晩は。みえぶたと申します。
いつも楽しく拝見させていただいております。
説明文で陛下が怪我をすると記載がありましたが、
まさか死の一歩手前まで行く程とは思いませんでしたので
ハラハラしましたが亡きご両親が守って下さり無事で本当に良かったです。
素敵な作品を公開更新していただきありがとうございました。

2016/06/16 (Thu) 23:26 | みえぶた #- | URL | 編集 | 返信

はい。再録欲しいッス!
がんばろー!読み返し。最近、その苦行の意味を知りましたww

秋、直接狩りに行きますよー!!←マタイクノカ

今度は鋭器にしましょうかねぇwwwwww鈍器に鋭器に……人様に差し上げる単語じゃあ無いだろう(笑)

2016/06/16 (Thu) 23:40 | 行 #jxT87rSU | URL | 編集 | 返信

ブログ再録本、私は嬉しいです(^w^)
ネットで見れますが紙媒体すきなんです。
いいですよね(o≧▽゜)o

2016/06/17 (Fri) 00:15 | なおかざ #- | URL | 編集 | 返信

パパンとママンが陛下を留まらせてくれたのですね。
(*´ω`*)
しかも夕鈴がかっこいい←

秋ですと!?Σ ∪◎ω◎;∪ナンテコッタ
部所異動で残業減る予定だから、いまから資金確保しとかなくちゃ!
∪ノシ´>ω<∪ノシ アセアセ

2016/06/17 (Fri) 00:32 | 桃月 #- | URL | 編集 | 返信

きやー!素敵です。
朝から、ムフムフとなりましたよっ!
あさ様のお話は大好きです。
画面でみるのと紙面でよむのとは又違いますもん。
買わせて頂きまーす。
どのお話かしら?(≧∇≦)

2016/06/17 (Fri) 08:37 | くみ #17ClnxRY | URL | 編集 | 返信

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2016/06/17 (Fri) 12:24 | # | | 編集 | 返信

みえぶた様

こちらこそ、読んで下さった上にコメントまで入れて下さいましてありがとうございます。
陛下のケガが思ったよりひどくなってしまって、読み手様に怒られたらどうしようかとドキドキしておりました。
受け入れて頂けてよかった!(笑)

ありがとうございます。

2016/06/17 (Fri) 17:12 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

行さまへ

苦行でしょう?ね?ね?ね?!

再録本の編集が終わるころには魂抜けてるかも!
鋭利なもの大好き。
でも重たいから身一つでお越しください私も身一つで伺います。
カボチャさん、とっても気に入っているので会社で使うことにしました♪

2016/06/17 (Fri) 17:15 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

なおかざ様へ

やはり、紙とネットは違いますよね。
やっぱり作りたいなぁ、再録本。
どのSS入れたらいいと思いますか…。←本気で聞いてます

2016/06/17 (Fri) 17:17 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

桃月様へ

夕鈴褒めて下さってありがとうですー。
ちょっと気に入ってる部分です。

資金。
資金だいじ。
貯めねば!

2016/06/17 (Fri) 17:18 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

くみ様へ

気に入っていただけて嬉しいです~。よかった!

くみ様。
どのSSを再録本に入れたらいいと思いますか。
「蝶」は入れるつもりなんですが、他が全く決まらないのです。
たすけてー。

2016/06/17 (Fri) 17:20 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

ますたぬ様へ

無茶が過ぎた陛下でございましたが、なんとか無事でした。
ほんとよかった。←

再録本。
どのSS入れたらいいですか、ますたぬ様。
「蝶」は入ります。
他が全く決まりません。
ご意見お待ちしております。←他力本願

2016/06/17 (Fri) 17:23 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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2016/06/18 (Sat) 01:23 | # | | 編集 | 返信

葵@ゆぇ様へ

初めまして!
あさ、と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
SNSでよくお名前をお見かけするので初対面の気が全くいたしません(笑)

当ブログの読めるものは全部読まれた、と…?
じゃ、じゃあ!
ブログ再録本作るんですけど、どのSSがいいと思われますかご意見お聞かせください!←落ち着け私

そして、コメントはどうぞお気軽にお願いしますー。
何てことない普通の主婦が趣味でやってるだけのブログですので!

SSを褒めて下さってありがとうございます、とっても嬉しいです。
どうぞまたお越しくださいませ~。



2016/06/18 (Sat) 09:38 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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2016/06/20 (Mon) 22:59 | # | | 編集 | 返信

ふじ兎さまへ

お久しぶりです~。
お元気そうで何より!

再録。
なんじゃこりゃな記事数に己を殴りましたよ、ええ。
あほかこいつ、と、記事を消しかける日々。

秋、楽しみですね。
頑張ってくださいませ。
私は逃避を…←おい

2016/06/21 (Tue) 22:57 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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