2016_04
24
(Sun)17:12

噛み痕 8

「噛み痕」最終話です。

6話の浩大を書きたくて始めたこのSS。
なんかすいませんでした。
お好みに合った皆様も、そうでない皆様も。
私の個人的かつ身勝手な妄想にお付き合い頂き、ありがとうございました。

さてさて。
本誌読もうっと。←
【設定 本誌沿い 夫婦】
《噛み痕8》


「うーん、いい気持ち。」

夏の夜。
水面を渡る風はよどんだ心を洗い流してくれるように心地よかった。

こんな日が来ることは、ずっと前から覚悟していたから、泣かない。
そう決めていたけれど、やっぱり悲しくて。

「私ってほんと、お妃様に向いてないわよね。」

情けなさと同時に笑いがこみ上げ、夕鈴は石造りの長椅子にころんと横になった。

「もう、嫌になっちゃう。」

もし私が貴族のお姫様だったら、こんな気持ちにならなかった?
どこかの国のお姫様だったら?
どうなのかな。

考えても答えは出ない。
考えて考えて、考えて。
疲れ果てた身体と頭は夜風に誘われるがまま、眠りに落ちていった。





「夕鈴?」

安らかに眠る彼女にそっと近づく。
無防備すぎるその寝姿に、全身から力が抜けた。

「夕鈴…。」
「はは、お妃ちゃんらしい…かな?」
「全くだ。」

渡る夜風が運ぶのは、彼女の香。
夏だというのに冷え切った体と心が温度を取り戻していくのが分かった。

「妃の一番大事な仕事は、ね…夕鈴。」

柔らかな体を抱えゆっくりと歩き出す。

「王の孤独を癒す事、だよ。」

それは、君にしかできない事。
それにね、夕鈴。
夕鈴、君には責任がある。
長く王座に居座るつもりなどなかった僕を今もここに繋ぎ止めている、責任。

「さて、閉じるか。」

狼陛下の後宮は、この腕の中にある温もり。
眼前に広がる煌びやかな後宮の灯からは、何の温度も色も感じない。

「うん、こんなものは――――必要ない。」

白々と。
気の早い朝日が東の空を照らし始めた。





久しぶりに良い夢を見たような気がして、夕鈴は夢の余韻を楽しむように手足を丸めた。

「う~…」
「おはよう、夕鈴。」

ぎゅっ、と後ろから抱きしめられて覚醒する。

「おはよう、ございます。」
「うん、おはよう。」

心地よさにうっとりと眼を瞑…っている場合では、なかった。

「なんでここに?!」
「ん?夕鈴の部屋だからだよ?」

何を当たり前のことをと言わんばかりの黎翔に、夕鈴はあわてて身を起こした。

「紅珠のところに行ったんじゃ…!」
「んー、行こうとしたんだけどね、やっぱりダメだった。」

あはは、と笑う黎翔はすっかり小犬の風情。
夕鈴は一人蒼褪め狼狽える。

「ど、どうしよう、」
「どうもこうもないよ?ここには君一人しかいないし、君しか要らない。」
「は?」

ぽかんと口を開けた夕鈴の頬を黎翔はぺろりと舐めて。
耳朶に齧りつく。

「きゃっ、」
「君が寝ている間に、後宮閉じちゃった!」
「はあっ?!」
「あ、でも夕鈴は正妃のままだからね。」
「え、ちょ、陛下、それって…陛下の敵が、減らないんじゃ。」
「敵なんか増えてもいいよ、僕は君がいれば――――」

誰よりも強くなれるから。

「大変だとは思うけど、夕鈴。」
「陛下――――」

貴方がいれば、私は大丈夫。

抱き合う二人を包むのは、眩い陽射し。

「ああ、幸せ。」
「私も、です。」

狼陛下と唯一の妃。
敵は多いけれど、でも。
幸せな日々は、続いていく。

C.O.M.M.E.N.T

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/04/24 (Sun) 19:53 | # | | 編集 | 返信

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/04/24 (Sun) 23:09 | # | | 編集 | 返信

ありがとうございました。

おはようございます。
友鈴と陛下を幸せにしていただき
ありがとうございました。
良かったです。

2016/04/25 (Mon) 05:22 | みえぶた #- | URL | 編集 | 返信

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/04/25 (Mon) 10:26 | # | | 編集 | 返信

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/04/25 (Mon) 20:09 | # | | 編集 | 返信

タイフーンです(≧∇≦) 様へ

もう、浩大だけのために←しつこい

自転車。
坂道はございませんでしたか?
私の住まう地域は山坂が多くて…。←聞いてない

2016/04/25 (Mon) 21:22 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

えぐち様へ

お久しぶりでございます~。
オモチャ。いい響きですよね!
大人から子供まで←黙れ

こちらこそ、次も楽しみにしております!

2016/04/25 (Mon) 21:23 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

みえぶた様へ

いつまでも幸せな二人であって欲しいと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。

2016/04/25 (Mon) 21:25 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

行さまへ

浮いたり沈んだりは世の常ですよねぇ。
私も日々ぷかぷかしたりずぶずぶしたりで忙しいです。

家事の溜まらない休暇を三日ほど頂ければきっと落ち着くと思うんです。
どこに行けば売ってますかね…。

2016/04/25 (Mon) 21:27 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

まるねこ様へ

幸せになった状態で書き終わらないと、どうにも落ち着かなくて。
妙に長いSSになってしまいましたが、最後まで待って下さって感謝です。
ありがとうございます。

2016/04/25 (Mon) 21:29 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

コメントの投稿

非公開コメント