2016_04
24
(Sun)15:45

噛み痕 7

こんにちは。
あさ、です。

今回の「噛み痕」。
ご不快な思いをなさった方がお出ででしたらお詫び申し上げます、ごめんなさい。
さっさと終わらせますのでもう少しお付き合いください。

では、続きです。
次で最終です。


【設定 本誌沿い 夫婦】
《噛み痕7》


体中の血が熱くなり血管が煮え滾る。
それが怒りなのかすらも分からない感情が自分を支配するのを感じていた。

「―――呼べよ。」

頼む、言ってくれ。
たった一言でいい、俺を頼れ。

「い、や。」

固く目を瞑り全てを拒絶するお妃ちゃん。
いったい、なぜ。
どうしてこんな事になった?

「……。」

円やかな肩。
片手で縊れてしまうほど細い首。
柔肌に浮き上がる鎖骨と、息づく乳房。
そこに散るいくつもの華は、まるで。

「噛み痕、か。」

嫉妬深い狼が施した刻印そのもの。

犯せるはずがない。
いや。
力づくで奪うことはできても、自分の物にはならない。
そういうことだ。

「…分かった、言わなくていい。」
「こ、だい、」

陛下を連れ戻せと言われればそうするつもりだった。
いや。
お妃ちゃんが言わなくても、そうするつもりでここに来た。

「はっ、バカじゃねえの?」
「え?」
「なんでもないよ、独り言。」

狼の噛み痕をもう一度ちらりと見て、夕鈴を押さえつけるのをやめる。
己に許された唯一の場所を探り、するりと持ち上げた。

「やっ、」
「大丈夫、どうなったか確認するだけだから。」

足首に残る小さな傷。
ほとんど痕も残らず消え失せるであろうそこに、ひたっと唇を押し付ける。

「ごめんな、お妃ちゃん。俺がもっと早く蛇に気付いてればよかったんだ。」

絶え間なく襲い来る刺客は、お妃ちゃんだけでなく陛下の心をも消耗させて。
『このままではいけない』という焦燥感を植え付けた。
それこそが、奴らの狙い。
何かをきっかけにして焦燥感が限界を越えれば、愛する妃を守るために狼陛下は後宮を開く。

「やられたな。」

連れてきてやるよ、あの人を。
俺もどうかしてたんだ。
もっと早く止めるべきだった。
いや。
もっと早く、やつらを仕留めるべきだった。






音もなく窓から姿を消した浩大。
その背を見送って少ししてから、ようやく体が動くようになった。

怖かった。
見たこともない『男の人』の顔をした浩大は、山猫みたいで。
陛下じゃない人に触れられる嫌悪感に、身体が凍り付いた。

「…へい、か。」

浩大が『噛み痕』と言った、紅い花弁。
お守りだと言って陛下がつけてくれるそれの意味をようやく悟る。

ゆっくりと起き上り、鏡台に座って。
乱れた髪と衣装を直してから、外に出た。

「綺麗な、月。」

大丈夫、大丈夫。
陛下が誰と夜を過ごそうと、私は陛下を愛している。
陛下は私だけの物じゃないけど、私は陛下だけの物。

イカナイデ

月を見上げて、想いを噛み殺す。

そばに、いて。
行かないで。

「違う、そうじゃないわ夕鈴。」

自分を叱る。
じわりと潤む視界を振り払うように、夕鈴は外へ出た。

「頭、冷やさなきゃ…。」

足が自然と向かう先は、あの四阿。
広い水面を眺めて夜を過ごそう。
そう思った。






「……。」

カツン。
廊下の床が、冷たい。
夕鈴がいる後宮は温かくて、寒いなんて感じたことはなかった。
でも、今は。
身が凍えるようだ。

「――――。」

釣り灯籠が渡り廊下を照らす。
品の良い設えの宮殿は氾家のもので溢れかえり、焚き染められた異国渡りの珍香が鼻につく。
先へ進めば、氾紅珠がいて。
この、嗅ぎ慣れぬ匂いを纏う女を抱かねばならない。

「ダメだ。」

やっぱりダメだ。
私は彼女しか抱きたくない。
夕鈴の香しか要らないんだ、ここには。
――――私、には。

「くそっ!」

あの毒蛇事件以来ずっと上擦っていた心と体がようやく一つになる。

「夕鈴!」

バカか、私は。
『冷酷非情の狼陛下』が聞いて呆れる。
父は母に執着するあまり、母の寿命を縮め。
私は彼女を愛するあまりに、ほかの女を抱くのか。
似なくていいところばかり似るとはどういう事かと頭を抱えたくなるが、今はそんなことをしている場合ではない。

踵を返し、黎翔は走った。
温かな場所へ。
心安らぐ香に満ちた場所。
ただ一人の愛しい人が待つ場所へ。


「へ、陛下、お妃様はお休みに―――」
「よい、構うなっ。」

息せき切って扉を開けた黎翔の視界に映ったのは、がらんとした部屋。
開け放たれた窓から入る風が帳を揺らし誰もいない寝台を露わにする。

「っ!」

どこに行った。

「浩だ」
「陛下っ!お妃ちゃんは?!」

隠密にあるまじき音を立てて飛び込んできた浩大を咎めるよりも夕鈴の側に彼がいないことが問題だった。

「夕鈴はどこだ。」
「ちょ、剣は止めて!」

切っ先を突き付けられて浩大から血の気が引く。

「知らないのか。」
「はいっ!申し訳ありませんっ!」
「…探すぞ。」

夜風を裂くように走り出す狼陛下と隠密。
彼らがあの四阿で横たわる夕鈴を見つけるのに、そう時間はかからなかった。


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C.O.M.M.E.N.T

あささんこんにちは‼︎


続きはどこなのですかぁ!
どこまで行けば今すぐ見られますかぁぁぁ!(◎_◎;)
車検中だからチャリンコですけど(T . T)


2016/04/24 (Sun) 15:54 | タイフーンです(≧∇≦) #- | URL | 編集 | 返信

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2016/04/24 (Sun) 16:56 | # | | 編集 | 返信

夕鈴は無事???

こんにちは、あささん。

陛下、やっと心のままに行動を~。

それに引き換え夕鈴は相変わらず自分の心に蓋をして…。意外と頑固者(泣)。

“蛇絡み”といえば アノ人ですが(汗)。
陛下に『懸想』していたという実行犯の侍女はその気持ちを利用されたのか騙されたのか。
どちらにしても その背後で操っていた黒幕も捕らえられるのか…ですね。
(-_-#)

次回が最終回とか…。
またまたドキドキハラハラしながらお待ちする次第です。(A^_^;)
 
 

2016/04/24 (Sun) 17:48 | みかんママ #- | URL | 編集 | 返信

タイフーンです(≧∇≦) 様へ

おお、チャリンコ!
かっ飛ばしすぎて色々取りこぼしまくりなSSですが、最後まで漕ぎましたよ!←
車検お疲れ様です~。

2016/04/25 (Mon) 21:16 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

あい様へ

気付いて下さってありがとうございました。
大ちゃん書きたさのSSでございまして、ええ。(笑)
普段とは違うフェロモン大ちゃんが脳内に居たのですが、どこいった。

2016/04/25 (Mon) 21:18 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

みかんママ様へ

蛇と言えば彼。
ああ、彼がどうなったかも書くはずが。
消え失せてしまいました…。

かなり駆け足なSSで、お粗末様でございました!

2016/04/25 (Mon) 21:20 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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