2016_04
23
(Sat)22:09

噛み痕 6

こんばんは。
あさ、です。

本誌ネタバレではなくてごめんなさい。
ネタバレっぽいSSは、ただいま企画中です。
ええ、陛下目線なら山ほど書けますよ?←わがまま

さて。
「噛み痕」ですが。
これを書きたくて作ったのがこのSSです。
今回だけ妙に長いのがそれを如実に表しております。
浩大ファンの皆様、投げるのは石までにしてください。
光物は!刃物は!ちょっと痛いから許してください!

私が楽しむために書いておりますが、お付き合い頂ければ幸いに存じます。


【設定 本誌沿い 夫婦】
《噛み痕6》


目につくもの全てを噛み殺しそうな勢いの狼陛下が「後宮の開放」を宣旨してから、数日。
「彼ら」の行動は、早かった。
入宮前から運び込まれる調度品はガランとしていた後宮をあっという間に埋め尽くし。
所狭しと積み上げられる葛籠はまるで山のよう。
誰もが競うように後宮を飾り立て、己が娘を盛り立てる。
着実に、「狼陛下の御代を寿ぐ」雰囲気が形作られていく中で。
夕鈴はただひたすらにいつもと変わらぬ暮らしを営んでいた。

「良いですか、夕鈴殿。」
「はい。」

いつもと変わらぬ―――否。
数段に厳しさを増したお妃教育の中で、李順が夕鈴に伝えたのは。

「陛下は、後宮の開放と引き換えに貴女を正妃に就けるとおっしゃいました。」
「え。」

黎翔のせめてもの、心。
ぎゅうっ、と心臓を鷲掴みにされるような痛みが夕鈴を襲い、この決断が正しかったのかともう何度目になるのか分からない自問を繰り返した。

「わたし…。」
「ええ、貴女が正妃ですよ。」

陛下の決定には従うのみと割り切っている側近は事もなげに笑う。

「狼と交渉をなさったそうですね、夕鈴殿。まだまだ詰めが甘いようですよ?」
「詰め…。」
「おっとこれは失礼をいたしました『お妃様』…お許しを。」

他人行儀に頭を垂れつつ、にっと笑う『元上司』。
彼にしては珍しいその態度に、夕鈴の身体から力が抜けた。

「李順、さん。」
「泣いている場合ではございませんよ、正妃様。」
「はいっ!」
「よいお返事です、ではこちらの白陽国正史と同時代に書かれた私的な日記および雑記、各家の記録書等を引き合わせた結果の貴女なりの真実を、正史巻の三から。」
「うあ、」
「さあ、どうぞ。思う存分述べてください時間はたっぷりとございますので。」
「ひっ、」
「反論反証に手加減は致しませんさあどうぞ。」
「ひいいっ!」

スパルタ正妃教育が、夕鈴の心から余裕を消していく。
それは、つまり。
他の『妃』達へ目を向ける時間を与えないという、李順なりの思いやりだった。







だが、その日はやってくる。

「――――夕鈴、君が『否』と言えば、」
「いいえ、陛下。」

麗しい月が上り始めた、夜。
夕鈴は自分が持ちうる理性をすべて使い、笑顔を作り上げた。

「お願いです、陛下。最初のお渡りは…紅珠、へ。」
「いやだ。」
「ダメですよ、王様がそんなこと言っちゃ。」

陛下の涙に気付かないふりをしろ。
叶わぬ望みに蓋を。
欲する心を殺し、この人の幸せだけを想え。

「さ、刻限です。」
「夕鈴、」

完璧な笑顔を構築し、送り出せ。
それが、この国の。
正妃、の役目。

「明日は、私のところに戻ってきてくださいね。」
「っ、」

蘭瑶さまから教わった妃の嗜みを口にして。
陛下が自分だけのものではないと分かっている振りを、演じ切った。

「また、明日。」
「…また、明日。」

先を信じぬ陛下に明日を約束させて、送り出す。
陛下がの背が消えゆく先は、紅珠の部屋がある宮殿。
明々と灯された灯篭は氾家が献じたものだった。
これで、陛下は。
新しい日々を迎えることができる。

「いって、らっしゃい、ま――――」

イカナイデ

「お妃ちゃん。」

ふっ、と部屋が暗くなる。
口を押えられ声が出ない。

「黙って。」

こくこくと頷くと、ゆっくりと解放された。

「いいか、お妃ちゃん。『建前』はここまでだ。」
「建前?」」
「そう。陛下の許可は下りてる。」

驚き立ち尽くす私の足元に跪く、浩大。
見たことのない顔をして、私を見上げる。

「ひと言でいい、『行くな』と言え。」
「こうだ」
「言えば、俺が全部引き受ける。」

私の肩を、浩大の手が掴んで。
怖いくらいの力で揺さぶる。

「言えよ!」
「言えない。」

私は、そう答えた。
迷いなど、なかった。





「言えない。」

お妃ちゃんの、答え。
ぷつん、と理性が切れる音が聞こえた。

「…ふうん、そう。」

笑いがこみ上げ、身体が熱を持つ。

「じゃあ、教えてやるよ。」

お妃ちゃんの足元を払い、体を浮かせ。
両腕で受け止めるや否や、寝台へ運ぶ。

「っ!」
「黙れよ。」

これから何が起こるのかを察知したお妃ちゃんが叫び声をあげる前に、布を噛ませる。
薬を取り出し軽く嗅がせ、動きを封じた。

「…いいか、よく聞け。」
「こ、う、」

布を取り去り唇に指先を這わせる。
ぷっくりとして、美味そうだ。

「今頃あの人は、あんた以外の女にこんなことをしてるんだ。」

息づく胸元に手を入れて、暴いた。

「や、やだ、」
「呼べよ、あの人を。」
「っ!」

はあっ、と。
熱い吐息が夕鈴の頬を撫で、首筋を舐める。
豊かに息づく胸元を満足げに見下ろした浩大の顔が、ゆっくりと夕鈴に降りてくる。

「――――呼べよ。」
「い、や。」

ぎゅっ、と目を瞑り。
夕鈴はこの後に来るものを覚悟した。


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C.O.M.M.E.N.T

よっしゃ~一番拍手久々確保(笑)←

うふふ~投げませんよ~…クナイなんて(笑)←

はよう!続き!!(*・ω・)ノバンバン

2016/04/23 (Sat) 22:20 | 行 #jxT87rSU | URL | 編集 | 返信

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2016/04/24 (Sun) 11:47 | # | | 編集 | 返信

行さまへ

やだ、痛いじゃないですか。
えいっ。
投げ返してやる。←

2016/04/25 (Mon) 21:12 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

みえぶた様へ

まあ、なんとか。
なりましたかね?(笑)

私の書くSSはハッピーエンドばかりですので、途中が酷くてもご安心ください。

2016/04/25 (Mon) 21:15 | あさ #- | URL | 編集 | 返信

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