2016_04
19
(Tue)22:34

噛み痕1


こんばんは。
あさ、です。

先日来の自家通販でも、ブログのアクセス解析でも。
大変な災難に見舞われておられる地域にお住まいの方々が、いらっしゃいます。
祈るしかできない身ではありますが、どうか。
少しでもお休みになれますように。
皆様が落ち着かれ、「この世の春」にご訪問下さるまでになられた時のために。
拙いながらも書いていこうと思います。
少しでも、息抜きになれば。
これ以上の喜びはございません。


続き物になります。
もし宜しければお付き合いくださいませ。
誤字脱字は見逃してくださいお願いします。←


【設定 本誌沿い 夫婦】
《噛み痕1》



ほどよく乾いた心地よい風が髪を揺らす。
さらりと靡く茶色の髪が頬をくすぐる感触に、黎翔はうっとりと目を閉じた。
柔らかな下草から立ち昇る独特なそれは、初夏の香。
抜けるような青空から注ぐ陽射しが体も心も健やかにしてくれる。
誰にとっても清々しい。
そんな、ある日。

「へ、陛下。」
「んー?」

湖畔の四阿で黎翔は妻の膝を枕に休息を貪っていた。
夕鈴お気に入りのその場所は、見晴らしがよく四季折々の景観が楽しめて『お得』であり。
冬場は少々寒いのが玉に瑕だが、息が詰まるような後宮の暮らしにおいては広々とした水面を眺めるのは良い息抜きだった。

「あ、あの、陛下っ。」
「ん~、なに?」

初夏の風に吹かれ、狼陛下は夢見心地に柔らかな感触に顔を埋める。
少々薄手の衣装越しに伝わる兎の体温はほっこりと温かく。
弾力があるくせに柔らかく包み込んでくれる柔肉の食感は極上としか言いようがなかった。

「噛まないで下さいっ。侍女さんたちもいるんですよ?!」

真っ赤になって声を潜め夫を咎める兎。
黎翔はその太腿に牙を立てながら満足そうに微笑んだ。

「別に見られて困るものでもないだろう?」
「困ります!」

かぷっ。
黎翔は新たな場所に齧りつき、顔を埋めたまま声を発する。
ただでさえ狼陛下で囁かれると腰に来るというのに、『そこ』を狙って直に囁かれてはたまったものではなく。

「…っ、ぁ。」

ジンジンと痺れるように広がっていく快感に、夕鈴は思わず声を漏らした。

「っ、んっ、」
「――――。」

視線を落として確認するまでもなく、分かる。
きっと今、陛下は。

「もうひと口。」
「ふぁ。」

ものすごく楽しそうで、ものすごく意地悪な顔をしている。

「美味い。」
「んぅ、」

涙で滲む視界には、爽やかな初夏の景色。
そんな中、ふるふると震えながら必死に快楽を堪える自分がひどく淫らに思える。

「…夜まで待ちきれないな。」
「だ、め。」

するり。
裾に入り込んでくる冷たい何か。

「!」

まさかこんな所で続きをしようと言うのか。
侍女たちもすぐ側にいるというのにいったい何を、と。
慌てた夕鈴は、反射的に足でそれを振り払う――――

「痛っ!」
「夕鈴?!」

ズキンと鋭い痛みが足首を襲った。

「どうした!」
「あ、あし…足に、なにか、」

がばっと起き上がり夕鈴の裾をまくった黎翔が見たものは。

「っ!」

尖った頭。
茶色の縄のような――――

「毒蛇か…動くな夕鈴。浩大、来い!!」

カツン!と石床が割れる音がして苦無が毒蛇の頭を貫く。
同時に飛び降りてきた浩大の手には薬瓶があった。

「陛下…、いま、の…、」
「大丈夫だ、落ち着いて。」

蛇が好きだという兎はいるまいが、夕鈴もそうで。
大抵のものでは驚かない彼女も、蛇だけは苦手だった。
みるみる蒼白になり、唇がわなわなと震え出す。

「誰か、医師を呼べ!」

叫ぶや否や黎翔は夕鈴の足元に屈み込んだ。
白く柔らかな脹脛に、ぷつりぷつりと牙の痕が見て取れる。
小刀を取り出し噛痕を少し切り裂いて唇を当て、毒を吸い出した。

「これを飲んで。」

浩大が薬を差し出す。
夕鈴は瓶を口に運ぼうとするのだが、恐怖と毒のせいで悪寒に襲われ歯の根が合わない。
それに気付いた黎翔が彼女の手から薬を奪い、口移しで飲み込ませていく。
黎翔に変わって浩大が毒を吸い出す役に就いた。
ややあって。

「…大丈夫、落ち着きました…ごめんなさい。」
「何を謝る。まだ動くな。」

ようやく震えが止まった夕鈴よりも青い顔で。
黎翔はそうっと彼女を抱き上げ後宮へ向かう。

「―――浩大。」
「はいよ。」

じろりと睨まれた浩大は首を竦め。

「さて、ただの事故かそれとも故意か。」

蛇を縫い付けていた苦無を引き抜き、呟く。

「…思ったよりずっと、柔らかかったな。」

まだ唇に残る肌の感触をぺろりと舐め、姿を消した。



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